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『参考までに、ジーザさんと組んだときはどんな感じだったんですか』
『うーん、参考にならないと思うけどな。あいつは俺から見ても規格外だから、あんま敵にはしたくない相手だな』
どう伝えたらわかりやすいかな…凄いって言うのは簡単だが、ハッカの参考になるような伝え方が出来ればベストだな。
『まず、外さない。高威力の銃でこれは凄いことだ。あいつはあの銃で30メートル先のアルコ種に当てる…』
『30メートル…』
『後は、移動が早い。的は動く、当てやすい位置を確保するには離れている分だけ大きく移動しなきゃいけない。接近している俺はなるべく、狙いやすいようにするのだけれど限界もある。未来が読めるように動く、いい位置にいつもいる』
考えれば考えるほど、やっぱりあいつは凄いということを再認識するな、打ち合わせなしの即席であれだからな…ハッカは考えこんでいる。
『ジーザはジーザ、ハッカはハッカだ。それに本番は武義、舞も含めたスタイルだからな。一度、打ち合わせが必要だから。今は狩りの感触を掴むことが優先だしね』
『はい…一生懸命頑張ります』
真面目なのはいいことだけど、考えすぎは危ない。今日はこんなところか…
『まだ初日だ、そろそろ引き上げよう。今日はボブのところでエルさんとラドさんが俺たちを待ってるからな』
『でも…稼ぎが…』
『ハッカ、換金するまでが狩りだ。欲張る奴は死ぬ機会を増やす』
真剣な俺の表情に少し表情が強ばるがわかってもらえたようだ。
いつもよりはだいぶ軽いが無事に帰る事が重要だ。
『よし帰ろう』
帰りは大きな問題なく、ハッカの提案で訓練も兼ねて小走りで周囲を見ながら移動する練習を行う。
ジーザのワンポイントアドバイスはかなり良かったようだ、安定感が行きとは全然違うな。
『よし、出口到着。換金だ』
ハッカの背中を軽く押しながら急かす。
『では、鉱石の買取方法を教える。あそこにある受付カウンターに持って行く。引き換えの番号札を持って後は呼ばれるのを待つだけ。ここで売らない場合は証明書を発行してもらうのを忘れるな、10ジルかかるけどな』
少し緊張した面持ちでハッカ1人カウンターへ向かう。
女性のしかも若いカネホリは珍しいのか受付嬢も好意的で丁寧に接してくれているようだ、何も問題なく戻ってきた。
『買い物を勧められましたけど』
『相手も商売だからな、ハッカの場合は弾薬の追加くらいか。掘り出し物があるかもしれないから見て回るのもいいけどな』
『一緒に回ってもらえますか…』
俺は辺りを見る、見知った顔もちらほらいるが、基本的におっさん、おっさん、おっさんだから不安なんだろう。
『じゃあ、ぐるっと見て回るか』
ハッカは値段や品物を見ながら驚いたり、ぶつぶつ呟いたり忙しい…結構、中古の銃が多いな、初めにここに来たときは気にもならなかったが…
『エスさん、私の番号呼ばれました』
『よし、張り切って行って来い』
不審だ、ただでさえ目立つのに、さらに不審な動き…まるで空き巣。
中腰で袋を大事に抱え込んだ若い女の子がキョロキョロしながらおっさんばかりの場所を通る…とりあえず、手招きをしてみる。
気づいた。素早い動き、カサカサという擬音を付けたくなるような速さで飛び込んでくる。
『エスさん、大変な金額ですよ』
『内訳見せて』
内訳を確認している間も俺の影に隠れてキョロキョロするハッカを机まで引きずっていく。
『とにかく落ち着け、金を机において、今から分けるからいいな。俺の話をちゃんと聞けよ』
コクコク頷くのを確認して続ける。
『8126ジルある、そこから今日貸した500ジルを引いて7626ジル、半分は3813ジルがハッカの取り分だ。心配ならとりあえずソニミオに仕舞っておけばいい、金だけ取られる心配はないから』
はっといいこと聞いたとばかりに仕舞おうとする手を握って止める。
『金額が間違っていないか数えてからだ。これは絶対必要なことだ』
一緒に金額を数える、そしてソニミオに仕舞ったときにやっとほっとしたようだ。
『こんなに稼げるなら、今日の辺りでもジーザさんにお金返せそうな気がするんですけど』
『ハッカ、普通の駆け出しはそう簡単にはいかない。まずは宿代、飯代、こういうときは足元見る宿も多いから1日250くらいは覚悟しとかないといけない、後は弾薬とかの狩り関係の物資、弾薬は結構かかる。ハッカ今日の朝買った弾薬そんなに残ってないだろう』
『確かに、あまりないですね』
『比較的ゆっくりやっても弾薬は消えていく、下手なら尚更。今日使った分で500ジル。残り3000くらいって思うだろう』
『実際そうじゃないんですか』
『中層に行くには、武器や弾薬の重さの関係でソニミオがいる、するとソニミオを維持する為に鉱石を喰わす必要がある。毎日は必要がないが儲けが減るのは間違いない』
『その上、毎日休まずに狩りを行うことが普通にできるのか…って事もですね』
『そうだ、無理をすれば死ぬ危険性が高まる、1人なら無理はできない。複数で組めば頭割りで儲けは減る。毎日獲物の状況も変わるから良いときばかりじゃないしな』
難しい顔して考えてるところに多分聞きたいであろう答えを投げてやる。
『なんで、カネホリをやるのか…そりゃ、当たれば大きいからだろう。実力だけじゃ難しいかもしれないが、順調に腕と装備をあげていければあるところから金は一気に貯まっていく。支出よりも収入がグンと上回るのさ、それを夢見る奴らが多い』
堅実な性格のハッカには理解できないかな…
『ソニミオがなければ。浅瀬でも1000位は稼げる、必要経費抜きでだ。まあ、腕があればな。そこそこ遊んで、そこそこ金も貯まる。なにがいいのかは人それぞれだな』
『私は借金状態なので頑張らないと、明日に備えて弾買ってきます』
なんか、落ち着いてやる気も出たようで何より。
『明日はもっと沢山稼ぐから、300くらいは買っておけよ』
『はーい』
元気良く買いに行ったが、戻ってきて…
『確かに弾代ってばかにならないですね。エスさんがワンダーで言ってた言葉が身に沁みます…』
今日はゆっくりしすぎたからそろそろ行こうって話をしている最中。
『2人とも、僕を待っててくれたんだね。嬉しいよ』
少し大きめのリュックを背負いながら涼しい顔して近づいてくる。
『違う、偶然だ。じゃあな』
『え、そんなひどいですよ。あんなに褒めてたのに…』
『本当かい、ハッカちゃん、エスが僕のことを好きだって。本当かい』
『ジーザさん、私そこまで言ってないですよ。狩りの腕が凄いって言ってただけです。それだけです』
ハッカにしてはハッキリと言い切ったな、ジーザとはすっかり仲良しだな。
『少し夢を見るくらいいいじゃないか、もう』
『寝てから見てください。私、頑張ってソニミオ代返しますから』
『別にいいのに…そういえばエス、後で報告したいことがあるんだけど、時間取れないかな』
改まるって事は必要なことか…
『今日も昨日の店にいく予定だからそこに来い』
『わかったよ、ハッカちゃんも来るの』
『行きますよ』『ふーん』『邪魔ですか』『いいや』『不満ですか』『全然』
駄目だ、2人に変なスイッチが入りそうだ…
『とにかく、後でなジーザ。ハッカ、ボレロが心配しているかもしれない、一旦帰ろう、ほらほら』
『じゃあ、後でねハッカちゃん』
『はい、ゆっくり来て下さいねジーザさん。行きましょうエスさん』
仲良かったり、険悪な雰囲気だったり、変な2人だな、とにかくハッカのデビューは問題なく、よかったよかった。




