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そろそろ浅瀬は終わる頃合、ここからがスタートだな。足も慣れた頃か…


『ハッカ、少し走ってみようか』

『どれくらいで行くのさ、エス』

『この間の3割程度で様子見るかジーザ』

『大丈夫かな、3割で…』

『頑張ってついていきますから』

ジーザはそれを聞いても心配そうだ。とりあえず前のように俺先行、ジーザとハッカが後追いのスタイルで行こう。実際もそうなるからな。


『では、俺が先行。ハッカはジーザと一緒に少し間を空けてついて来るんだ。俺が獲物を見つけて戦闘に入ったら距離を空けて援護するように』

『わかりました、頑張ります』

『いきなりやることが多すぎないかい。時間がないのも理解してるけど、うーん』


どうも、ジーザが煮え切らない…ハッカはそれを聞いてもやる気はみなぎったまま…



『わかった、最初は様子見。ハッカは銃を構えたままジーザの動きを見る。一体狩ったら検討でどうだ』

『ハッカちゃんのやる気はわかるけど、その方がいいと思うよ。怪我したら元も子もないし』


ちょっとしゅんとするハッカに申し訳なさそうな顔のジーザ、本気で心配しているのがわかるからジーザの提案を聞こうと思った。


『ジーザ、ハッカを頼む。行くぞ』

『了解だよ、エス君』

ハッカもきりっとした顔で答える。


前に集中、速度は落とし気味で、駆け出す…


後ろはちゃんとついてきているようだ、右前方に牛型、この辺で出るには大きい気がするな。

ジーザの言っていたことが頭をよぎる。氾濫か…


鉱石の位置は、右角の根本…速度を上げすれ違い様に左眼の辺りにデリンジャーを打ち込む。こちらを向くより早く後ろから回り込む。

その間に軽めの発砲音で2発…ん、音が…

回り込んだ右側、至近距離でリボルバーを数発打ち込む。


ひざを折り、消えて行く…鉱石は中層で考えれば大きい部類だな。さてと…どうしたものか。




これで3割…早足で進んでいる時も歩き難いとは思ったけど、銃を持って走る…

バランスが取り難い、ついては行けるけど…

『ハッカちゃん、前を見て。下を気にしては危ないよ』

ジーザさんが言うように目線を前へ、数歩前の状況を見ながら走ってみる、さっきよりマシになった。

『慣れないうちは、銃を体の真ん中に抱くように持って。腰をあまり上下させないように意識してみて』

あ、体がぶれ難い…ひとつひとつのアドバイスが的確だから少し余裕が出てくる。

『ジーザさん、ありがとうございます』

『飲み込みが早くて助かるよ。エス君が褒めるわけだ。止まって』

2歩進んで止まる。私の横を銃声が追い抜いて行く、それを追った目線の先には牛に纏わり着いているエスさんの姿…

そして、ひざを折って倒れる牛型…

振り向くと小さな銃をおろすジーザさんの姿…エスさんが鉱石を拾って戻ってくる。


『ジーザ、シャルロットはどうした』

『彼女を使ったら、ハッカちゃんの参考にならないだろう、だからこいつ使ったのさ』

『リトルマッハか、暗殺者御用達じゃねーか。この間の試験もこれか』

『A-12と連射で張り合うには手持ちではこいつくらいしかなくてね』


『すいませんでした…私、何も出来なくて』

センスがいいと言われ、基礎体力も徐々について、ちょっと自信があった…でも、この2人は一流なんだ、そう簡単になれないから一流なんだ…急にエスさんが遠く感じる、寂しいなこんな気持ち…


『ハッカちゃん、当たり前だよ。僕らは規格外の腕前だよ、気にすることはないよ。エスの指導が無茶なんだよ、僕でもわかる』

『ハッカ、悪かった。耳が痛いがジーザの言う通りだ。すまなかった』


嫌…このまま離れてしまうような気がして…それは嫌…


『エス、ハッカちゃんのスタイルはどう考えても、遠距離サポート型でしょ。僕と似たスタイルじゃない。なんで、遠距離射撃から教えないのさー、ねー、ねー』


苦い顔のエスさんをニヤニヤしながら追い詰めるジーザさん、顔が近い、近いから…

『ジーザさん、私が悪いんです。だから、そんなにエスさんに顔を近づけないでください』

『嫌だよ。ここは譲れない。絶対に。ねーねーどうしてさ』

2人の間に割って入る、ジーザさんを両手で押して下がってもらう…え、ジーザさんはスッと後ろに下がる。


『やっぱり、お前は気に食わない野郎だな…』

『そりゃどうも』


私を挟んで会話は続く…


『僕はハッカちゃんも気に入ったんだ、せっかくなら成長してほしいと願うよ』

『わかった、お前はもうわかっているんだろう』

『まあね』


何のことだろう、私は1人わからない…私の両肩に手が置かれる…




『俺は…射撃が、下手なんだ…』

きょとんとする私…え、私に銃を教えてくれたのに、苦手なの…思い返してみればエスさんが遠くの的を狙った姿を見たことない…

『あぁっはっはっはっはっは、苦しい、僕はお腹が苦しいよ。死ぬ、笑い死んでしまうよ。神よ、笑い狂う僕を救いたまえ』

『神は信じないんだろうが、死ね、そのまま笑い死ね』

『そうだね、ははっ、それもいいかもしれない。でも生きてればまだまだ楽しめそうだから、迷うね。ははははははっ』


どうしよう、私はどうしたらいいの…何か言わなきゃ、何か…

『射撃が苦手でも、エスさんは私の先生ですから』

両膝をつくエスさん。

『ハッカちゃん、それ逆効果だよ。もうだめ、笑いすぎて吐きそう』




今は、早目のお昼ご飯を食べている…気まずい、無表情のエスさんにニコニコのジーザさん…その間の私…何か切り出さないと。

『これから、どうしましょう…』

なんとなく語尾が弱くなる。


『ジーザ、いつから気づいていた…』


『あの出会いの時だよ。5メートルの距離に狙撃銃を使っていたからね。そのときは何となく。その後、組んだときに確信に変わったね』

『なぜ、言わなかった』

『それは愚問だよ。射撃が不得意、そんなことは些細なことだよ。エス君は自分でわかって今のスタイルにしている。それも飛びっきりハイレベルに…僕が組みたいと思うほどにね』



『ハッカちゃんが居なければ、僕はずっと何も言わなかっただろうね。何も支障がないからさ』


『私がいるせいで…』

『違うよ、あくまで方向性の話さ』

『そうだ、ハッカは悪くない。俺の型にはめようとしたのが原因だ』

『どうせ、2週間後はエス君のスタイルは無理だしね。僕は奥に行くからまたね』


問題は解決したとばかりに颯爽と去って行く、その手に大きな銃を持って…




『ハッカ、すまなかった。幻滅したか』

そんなことない、ジーザさんの言うとおりだ、エスさんの素晴しさが無くなる訳じゃない。それに…私にも役に立つチャンスがあるってことだ。

『私にも出来ることがあるのが嬉しいです』


照れたように頬を掻く、その姿をかわいいって思ってしまう。

『もう中層だ、ゆっくり獲物を探そうか』

『はい』



それから、獲物を見つけたらまず、動きの確認、エスさんが接近、注意を惹きつける、私は周囲の危険を確認しながら攻撃する。

数匹相手狩った所でエスさんから休憩が告げられる。


『感触はどうだ』

『始めはエスさんに当ててしまうんじゃないかって怖かったですけど、エスさんの動きのリズムが何となく掴めてきたら攻撃の機会が増やせるようになりました』

『ほぼ外すこともないし、動きが制限されるようなこともない。気になったのはハッカ自身の周囲への注意が弱い気がするけど、もうちょっと余裕が出てこれば大丈夫かな』


『弾代かからないから俺は丸儲けだな』

笑顔でそんなこと言うけど、いつもの方が何倍も稼げているはず…


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