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『さっぱりした。飯も旨い。ハッカ準備はいいか』

『はい、エスさん。バッチリです』

『本当かな。本当に大丈夫かな』


ニヤニヤしながらエスさんが聞いてくる。そんなにしつこく聞かれるとちょっと不安になるけど、大丈夫だと思うけど…


『よし、表に出るんだ。ついてこい』

ちょっとテンションが高めなのは寝不足のせいかな。ついてこいか…なんか嬉しい。



『実際に感じてみるのが早いだろうな。早抜きで勝負だ、この空き缶が地面に落ちたら銃を構える』


『わかりました…』

『構えるまでだからな。撃っちゃダメだぞ』

好きだけど、ちょっとしつこい感じ…好きだけど。


私は無言で返事を返す。エスさんの顔がキリッと引き締まる。カッコイイ…でも、集中…



『2人ともなにやってんの』『その格好、この間のやっぱりかわいいの』

エルさんとラドさんが帰ってきた、空き缶が放り投げられる…


あれ、え、あっ…

『わかったかいハッカ』

目の前には両手で銃を構えているエスさん…私はソニミオに手を入れたまま…


『ボレロから昨日聞いたよ、パーツの説明したって。ハッカのことだから実際に色々組み立ててみたんだろう』

『はい、お爺ちゃんから教えてもらったことを何度も繰り返しました』


『もう、言わなくてもわかるな』

『ソニミオの扱いですね…』


『これに関しては、それぞれに容量や入り口の形状が違うから何度も試して自分流を見つけるしかない』


確かに、とりあえず中に仕舞ってみたけど今も手探りで探している感じだった。自分の物になっていない感じ…


『とはいえ、今は実戦の時間を確保する方が重要だ。ソニミオは自主練だな。ほらよ』


小さな袋を投げてくれる。中身は、予備のマガジンとホルスター。

『とりあえずは、これで代用だな』


きょとんしているエルさんとラドさんにエスさんが声をかける。


『今日の夜、ハッカが稼いだ金で飯食いに行くから楽しみにしてくれよ』

『了解』『わかったの』


2人は頑張ってねーといいながら朝ごはんを食べに中に入っていった。



『とりあえずの目標はソニミオ持ちじゃない奴と互角の速さで構えるようになることだな。じゃあ実戦行くか』


私の周りはソニミオ持ちの人ばかりだし…どれくらいの速さなんだろう…


『ん、どうした。行くぞ』

『はい』



エスさんの後ろをついて行く、マントがゆれる、私のケープもゆれる。

コルティック社のキャラバン、はじめてきた。

『まずは、買い物だ。弾薬を買ってみよう。そのソニミオにどれくらい入るかわからないが気持ち多め位でいいだろうA-12なら一発5ジル前後のスタンダードでいいかな』


とりあえず貸しなっていってエスさんは500ジル渡してくれる。言われたとおりに5ジルの弾を100発購入する。


『マガジンはいくつ持ってる』

『7つあります。全部に弾を込めてもいいんでしょうか』

『とりあえずは今の銃に入っている分と予備は2つ分入れておいてくれ。予備はソニミオには入れないように』

『とっさに入れ替えられないからですか』

『そうだ、ソニミオの使い方になれないうちは慌てて空のマガジン取り出すと危ないからな』



『エス君、ハッカちゃん。おはようだよ』

『ジーザさん、おはようございます』


エスさんが露骨に嫌そうな顔をする、それを見てもジーザさんはニコニコだ。


『ジーザ、昨日の話だけどな、武器弾薬以外の準備を武義が用意する。その分はキッチリ頭割り、稼ぎもキッチリ頭割りで行く、いいな』

『いいよ、僕は僕で準備をしておけばいいんでしょ』

『そうだ、頼んだぞ』

『ハッカちゃんには話したのかい』





『話には…タイミングとか…あるだろう…』

『素直に忘れてたと言えばいいじゃないか、エス君』

『何の話でしょう、ジーザさん』

『2週間後にハッカちゃんも連れて下層の先に行こうって話さ』



『ええっ、下層の先』


『大丈夫、大丈夫。僕とエスがいるからね。どーんと行こうね』


そんな、どーんって言われても…大丈夫かな私…


『僕も中層まで一緒に行ってもいいだろう、エス』

『お、てっきり1日付き纏う気かと思ったぜ』

『ハッカちゃんの初日だよ。それを邪魔するような無粋な真似はしないよ。でも、せっかくだから片道くらい付き合せてほしいな。ねーいいでしょハッカちゃん』

『私はいいですけど…』

『俺はハッカがいいならいいぞ』


ジーザさんは私の手を取り踊りだす

『早かれ遅かれ、連携の練習もするつもりだったからな』

『大事だよね。連携、連携。基本一人ぼっちの僕とエスには必要だよ。れ、ん、け、い』


繋がりをこれでもかと前面に押し出してくる、あのエスさんがおされ気味…積極性って大事だな。私も見習わなくちゃ。


『おーい、ハッカなにやってんだ、行くぞ』

『は、はい』

『置いて行っちゃうぞぉ』

『待ってください』



2人についてワンダーの入り口へ向かう…


大きな口を開けている入り口の前に立つ…手を伸ばせば中に入れる距離、でも空気が違う…見えない壁があるみたいな感じ。私は立ち止まる…


それに合わせて、見えない壁の先にいる2人が止まって振り返る、その手には銃…


『いい判断だ、俺とハッカの間が境目、こちらに来るなら銃を抜け』



私はホルスターから銃を抜き見えない境界に一歩踏み出す。


『何でもありのワンダーへようこそ、ハッカちゃん』

2人の手にあった銃はすでになかった。




『終わった…姉さん、終わりました』

『ん…お疲れ武義。一度確認するから寝た方がいい』

『そうします。昼になっても起きなければ起こしてください』

『わかった』


武義は寝た、リストはかなり考えて作ったのだろう、細かなメモや消したり加えたりの跡がそれを伝える。


内容に関してはかなりギリギリ絞った様子、エスさんを考慮してだろう。それでも、ハッカさんのことも考えて保清や休息を取る関係の物は余裕を持たせてある、いい内容ではないかと思う、私にはだが…



母上はフェイの報告をどう判断されるだろうか…武義の事を溺愛している母上ではあるが、仕事となれば話は変わる。




結果の出せぬ者は組織に必要ない。それが溺愛する息子であっても例外はない。

完全なる成果主義、それも現状での話。過去の貢献度も関係ない、今がすべて、それは母上も同じ。今はトップとして采配を振るってはいるが能力が衰えればすぐに入れ替わるだろう。

私も他人事ではないが…


商才に乏しい私には武力しかない、武義が成長してもこうしていられるか…私も若くはない…



今は、目の前の成功を引き寄せる努力をしなければ、もうコインは投げられた、後には戻れない…


時間は有限、迷いは無用。




『ハッカちゃんついにデビューかい』

『エスさん俺も連れてってくださいよ』


うーん、和やか…私はさっきの気合はなんだったのかと思っている最中…


『こら、ワンダー内で和やかに声をかけるな。ほら、蛇型がそこの隙間にいるぞ。いけ』

『ほんとだ。ありがとうございます兄貴』


なぜこんなことになっているか、原因はエスさん。ボブさんのお店で顔なじみの人が増えたおかげで入り口の殺伐とした雰囲気はだいぶ和んだらしいってエスさんが教えてくれる。


『殺伐も嫌だが、こんなに和やかなのもどうかと思うぜ』

『エス君が原因じゃないか。それにこの状態でも帰らない者がいる、その方が気味が悪いよ』

『そうなんですか、ジーザさん』


『ハッカちゃん、この和んだ空気は異常なことだよ。初めてだからわかんないと思うけど。普通のワンダーでは自分以外の姿を見たらまず銃を向ける、話はそれから』

『話にもならないことの方が多いかもしれないな』

『そうだね。このワンダーの駆け出したちはエス君に飼いならされた感じかな』


仲良く出来るならそのほうがいいと思うけどな私は。


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