20
『ただいま、ジーザはどこ行った』
『始めに私達を案内してくれた方と出て行きましたよ』
『ふーん、まあいいか話は終わったも同然だからな、細かい話はきっと興味は無いだろうしな』
こっちで話を詰めとけばいいか…
『武義、物資の準備だが。2泊分用意を頼む、武器弾薬関係は各個人で用意、それ以外を任せたい』
『なるべく早くリストアップして行きます。成果の分配はどのようにしましょうか』
表情が引き締まった。商人の顔…これを最初に見たかったな。
『頭割りだ。キッチリ5等分、費用も武義が用意した分のみを5等分だ』
『エス様、武器弾薬関係は個人でとのお話ですが、戦力にならない私の負担が少ないのですがよろしいのですか』
自分だけが得になるのは後で問題になるかも知れないとの配慮か。
『俺だって、本当はすべてをキッチリ分けたい、しかしそれはできない』
『なぜですか』
『ジーザの銃を見たことが無いだろう、あいつの銃はコルティック社製のオーダーメイドで、その上…弾薬も特注品だ…』
『弾薬も、特注品…』
『それを、バンバン撃つ、浅瀬でも、中層でも、今はシャルロット、ジーザの銃の名前な。それしか使いたくないそうだ…』
『では、リストアップは急ぎますね』『頼む』『はい』
『では、リストが出来たら宿に持ってきてくれ』
2人にそう言ってボブの店を後にする。
今日は色々ありすぎた。眠たい…部屋で今日の稼ぎを数え直して寝よう…
『遅かったな、エス。ふらふらしているところ悪いがまあ、座れ』
『ボレロ、なんとなく話したいことがわかるのでどうしようもなく眠たいが座るとしよう』
疲れている所悪いが確認はしておかないとな。
『ハッカにA-12のカスタムパーツや予備のマガジンを渡した。一応使い方も伝えておいた』
『ん、そんなもの持ってたのか。予備マガジンは俺もあったから譲ろうとは思っていたが。てっきりソニミオの方かと思ったぜ』
『ああ、ハッカから話は聞いたがどんな形であれハッカはただ押し付けられただけだから悪いところは無い。後はハッカの気持ちだけだな』
『そうだな、どんな様子だった』
『金額がどれほどだったかわからないが返す気でいるぞ。私からはエスについて稼げるようにならないとな、と言った』
『そうか、俺はハッカを下層に連れて行こうと思っている。中層で実戦訓練、その後さっき来ていた奴らと組んで5人体制で下層狩りだ』
『銃を教えるだけの依頼が大きくなったな。色々配慮してくれているようですまない』
『俺は依頼をキッチリしたいタイプでね。今日は眠い、金も数えなおさなければいけないからもういいか』
『悪かった、金はさっきも数えたのではないか』
『確認しないと落ち着かないのさ。おやすみボレロ』『おやすみ、エス』
ブレナイ男だな、私も出来ることをするとしよう…
『お帰りなさいませ、舞様、武義様』
『フェイ、来ていたのか』
『遅くなりまして申し訳ありません。到着のご連絡からそろそろ頃合かと思いまして』
そんな時期か、この町での成果はこれからだと言うのに…下手な誤魔化しは通用しないか。
『母上から何かあるのか』
『いえ、何も。いつもの定期連絡ですが、何か不都合でもおありですか』
『今日は色々あったので報告書はこれからだ、少し待ってもらう。大きな損失が出たからな』
『では、待たせていただきます。舞様よろしければお手合わせを』
『いいでしょう。私も腕が鈍っては困る、準備もしたいのでちょうどいいでしょう』
フェイの相手は姉さんに任せるとして、とにかく報告書を作らなければ、さっきの規格外の金額で手持ちの収支はマイナス。この町に来るまでに手に入れた鉱石は良質な物もある、それを差し引いても今回の規格外分の金額は大きい…この次の報告で挽回できなければ、いや。今回の報告でも母上の判断の前にフェイの判断で………
お2人に賭けると決めたのは私だ。なんとしてもフェイの審査を貫けなくては。
2人が戻ってきたようだ…
『さすが舞様、その腕前、輝きを増すことはあっても、鈍っているかもなどと冗談としか思えませんね』
『よく言う。形振り構わなければ私の命を奪うことなど造作もないくせに』
『いえいえ、そのようなことは』
『それでは…』
フェイの空気が変わる。
『報告書の内容を確認させて頂きましょう』
机に向かい合わせに座る、姉さんは僕の斜め後ろ…
『本日の件を除けば、武義様らしい堅実な取り引き。成果もまずまず』
『遠まわしな嫌味かな、フェイ』
『何をおっしゃる。商人が堅実な取り引きを行う。当たり前ではないですか』
『商人が飛躍する為には堅実だけでは難しいのではないか』
『ほう、いい表情をされるようになりましたな武義様。この損失は飛躍の為と』
『そうだ、母上の主義はわかっている。その上で行ったことだ』
『飛躍の準備と無謀は違いますよ…武義様』
気後れしては駄目だ、堂々としていなくては、その程度で欺ける相手ではないけど、突き通す。
『命燐様がどのように判断するかは私には計りかねますが…今回はあなたの飛躍を信じるとしましょう』
乗り切った、これで時間が出来た。
『武義様、気を抜かれるのは早いかと。まだまだお若いですな。飛躍できなかった時は…』
『この命を賭けて』
『人一人の命など、安いもの…ご成功をお祈りしていますよ。それでは失礼します』
膨大な金を置き、報告書と鉱石を持ってフェイは帰って行った。
『よく乗り切った。準備を急ぎましょう』
『そうですね』
すでに深夜だったが、このままリストの作成を行おう。
姉さんの淹れてくれるお茶を飲みながら作業は続いた。
ちょっと寝坊しちゃった。昨日はお爺ちゃんに色々聞いて、パーツの使い方や、昔のお母さんのことを聞いたり。あんなに沢山お爺ちゃんとお話したのは始めてかもしれない。
口調は怒ってたけど、お母さんのことを言ってるときの目は寂しそうだった…
今日から私もカネホリ。あの日の服装に着替えて、腰にはプレゼントのソニミオをつけて、緊張するけどエスさんの教え子として恥ずかしくないようにしなくちゃ。
『お爺ちゃん、おはよう。遅くなっちゃった』
『昨日は遅かったし、ハッカのことだあの後パーツを弄ったりしていたのだろう』
お爺ちゃんには全部ばれてるのね…いつもいつも私のことを気にかけてくれている、きっとお母さんのこともそうだったんだと思う。
でも、2人とも頑固そうだから…
キョロキョロする。
『エスならまだ起きてきてないぞ。ご飯でも食べて待ってなさい』
『ボレロ、俺の分も頼む、5ジルでいいか』
凄い、寝癖に目の下には隈。チラッと私を見る。
『ん、ハッカおはよう』
『エスさん、おはようございます』
机に座って、だらーっとするエスさん。その前に座りチラチラ視線を送る。
エスさんは慌てて立ち上がり、股間をいじくる。
『いきなりなにやってるんですか』
『なーんだ、ハッカが言い難そうにチラチラみるからチャックでも開いてるかと思ってさ』
『もう、知りません』
『エス、せっかく孫が気合を入れて、身支度したのに、金が絡まないと本当に駄目だな。よく見てみろ』
『そう言われれば、俺が贈った服か。ソニミオをしっかりつけて。こんなキュートなカネホリそうはいないな』
『いまさら、とってつけたように褒めても駄目ですからね』
嬉しい…凄く嬉しい…
『本当にそう思ってるのにな。ボレロ、はい5ジル』
『それにしても酷い顔だな。先に洗ってきたらどうだ』
『昨日は稼ぎが大きかったからな、結構時間がかかったぜ。顔洗ってくるわ』
嬉しいけど、複雑な気持ちのカネホリデビュー初日の朝でした…




