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『先生、その前にそちらの方達は…』

『成り行きで連れてきただけだその辺の小石と思えばいい』


凄いきれいな女の人が2人に私と同じくらいの男の子、気にしないようにと言われても…


『やあ、君がエスの教え子ちゃんか。かわいい子だね』

えっ、男の人…私より綺麗な男の人…

『やめないかジーザ。うちの教え子は人見知りだと言っただろう。俺の許可なく話しかけるな』

『えー、エス君の教え子は僕の教え子も同然じゃないか』

『シャーラーップ、なんでそうなる。変に誤解されたら困るだろうが』

『一緒に深いところまで行った仲じゃないか』

『話がややこしくなる。ちょっと黙れ』


『先生、気になるので紹介してもらってもいいですか。私はハッカと言います』

『嬢ちゃんが言うなら仕方がない』


『この金髪がジーザ。危ないから近づかないように』

とても優雅に頭を下げてくれる。

『こっちは武義と舞。商人で姉弟だ』

男の子は頭を下げてくれる。女の人は軽くひざを曲げてあいさつしてくれた。

『紹介終了。さあ、真っ暗になる前に試験やるぞ』


私は少し身体に力が入ったのを感じた…




『試験内容は俺を銃で撃つことだ』

全身から汗が吹き出て膝の力が抜けそうになる。ジーザさんがそっと背中を支えてくれた…




おっと、説明が足りなかったか。驚かせてしまったらしい。

『嬢ちゃん、撃つのは手足だから、心臓と頭は狙うなよ』

どうだ、俺のガンマンギャグ。嬢ちゃんの緊張もこれでほぐれるはず…




『エス、君はもう少し女性に対する配慮を覚えた方がいいと思うよ。君の大事な教え子が泣いているじゃないか』

かわいらしいね、ハッカちゃんの好感度がさらに上がったよ。

彼女に耳打ちをする。


エス君が何かギャーギャー言っているけど今はほかっておこう。

『わかりました。あなたを信じてみます…』


彼女から離れながら声をかける。

『エス、彼女の試験は本当に君を撃つ以外に無いんだね』

『お前にも説明したとおりだが』


『先生、私やります』


僕は彼女の方を向きながらエス君の斜め後ろに陣取る。

『10メートル先の俺の両手両足を連続で撃って当てること。いいな』

『はい』

A-12…いい銃だね。僕のシャルロットじゃ連射に対応できないか…仕方がない、ちがう銃を使うしかないか。


こっそり腰のソニミオに手を忍ばせる…リトルマッハ、これ持つのも久しぶりだね。今日は久々なことが沢山すぎて勿体無く感じるよ。


『さあ俺がコインを投げる。それが地面に落ちたら始まりだ、俺はこの格好のまま動かない。いいな』


エスは両手を広げて大の字でハッカちゃんに話しかける、建物の方から渋い紳士もこちらを伺っている…場は薄暗く、静かで…


エスの左手がコインを 弾く



微妙に重なる射撃音




本当にいい腕だね、益々気に入っちゃうよ僕…




凄い…本当に、凄い…よかった…


今頃になって私の手は大きく震え、銃を落としそうになる。


『合格だ。よく撃ったな』

先生はゆっくり歩いて私の頭に手を置いた。

そして私の後ろを見ながら、


『ボレロ、卒業だ』

『ありがとうエス。しっかり見せてもらった。ハッカ、おめでとう』

『ありがとう、お爺ちゃん』




なにが起こった…エス様の手足には弾の当たった感じは無い。分からない、なぜ合格なのか。


『武義、ハッカさんの撃った弾は4発間違いなくエスさんの手足を打ち抜く軌道。ゆえに合格』

1人状況がつかめていない僕に姉さんが教えてくれる。

『エス様はそれを確認してから避けたのですか』

『それは違う。ハッカさんの弾を逸らしたのはジーザさん』


ジーザ様が…目の前でハッカさんの手を取りはしゃいでいるあの男が…

腑に落ちない顔をしていたのだろう僕は。姉さんは解説を続けてくれる。

『やはり只者ではない。ハッカさんが構えて撃つ、その弾道がエスさんに当たるかどうかを判断してから飛んでくる弾に自分の銃の弾を当て軌道を逸らした。武義、絶対に関係を絶ってはいけない』


そんなことが人にできるものなのか…しかし姉さんがそう言うのなら見えていたのだろう。

胃がキリキリ痛む、今から関係を修復することが出来るだろうか…商売は一期一会、さっきの一瞬を取り返すことは出来ない。出来るかではない、やらなければ…




『ボレロ、ちょっと商談したいからいつもの机借りてもいいか』

『エスの連れなら無料のお茶ぐらいは出すが』

『さすが俺というものを分かっているな』



机に座る、俺の右手側に武義、舞。俺の左手側に嬢ちゃん、ジーザ。俺はお誕生日席だ。なぜ嬢ちゃんが座っているか…

ジーザが嬢ちゃんをとても気に入って一緒に座って欲しいと嬢ちゃんに頼んだからだ。嬢ちゃんもなぜかジーザを気に入ったのか進んで席に着いた。喋らなければ姉妹のような印象だ。


外はすっかり日も落ち、ぼんやりとした月明かりが辺りを照らすのみ。


『では、商談を始める。いいな』

俺は規格外の鉱石を机の中央に証明書と一緒に置く。ジーザはこの鉱石を手に入れたときのことを嬢ちゃんに話して聞かせていた。


『これは美しい、こんな鉱石もあるのだな』

ボレロはいい物を見たといいながら俺達にお茶を出して奥へ下がっていった。


『ジーザ、話は後にしろ、商談が先だ』嬢ちゃんと2人で目を見合わせてやれやれといった感じを前面に押し出してくる。コノオンナオトコメ…


『エス君が話を進めてよ。僕は成り行きを見て決めるからさ』

『お前も当事者だろうが、もっと関心を持て』

『売ってもいい。それ以外に言うことは無いよ』


『では、売る方向で話を進めよう』

『ありがとうございます。ジーザ様』

『僕は、君の為に売るのではないよ。エスが言うからさ、君との縁はこの件で終りだよ』


まったく、気を強く持っているがガッカリ感が漏れているぞ武義。まあ、この年で完璧を求めるのが無理な話か…

久しぶりにいい取り引きが出来ると思ったが残念だ。


『もう分かった。武義、この鉱石はお前の言い値、評価額の1,2倍で売る。ジーザがこの姿勢では俺も交渉し甲斐がない』


『では、新しい交渉をさせて頂いてもよろしいですか』


ん、新しい交渉…何を持ってくる気だ、面白い。

舞は俺が喰いついたと見たのか、武義に耳打ちする。それを聞き一瞬目を見開くがすぐに小さく頷いた。



俺は武義と舞に気を惹かれすぎた…


『きゃ』嬢ちゃんの小さな悲鳴。



ジーザの奴、何しやがった…





早くチャンスが来ないかな、ハッカちゃんは僕とエスの間に座ってもらって、あいつらはどっち側に座ってもいいや。

ここに来る間にこそこそ話していたのは聞こえていたよ。僕は耳がいいからね、だからそれも利用させてもらうよ。


ああ楽しい、エス君に関ったおかげで本当にいい日になった。だから、エス君が大事にしているハッカちゃんを喜ばすことでエス君に喜んで貰おう。


ワクワクが止まらない。まずは僕からの振りだ。


『エス君が話を進めてよ。僕は成り行きを見て決めるからさ』

『お前も当事者だろうが、もっと関心を持て』

『売ってもいい。それ以外に言うことは無いよ』


『では、売る方向で話を進めよう』

『ありがとうございます。ジーザ様』

『僕は、君の為に売るのではないよ。エスが言うからさ、君との縁はこの件で終りだよ』


さあ、食い下がれ、乗って来い…


『もう分かった。武義、この鉱石はお前の言い値、評価額の1,2倍で売る。ジーザがこの姿勢では俺も交渉し甲斐がない』



『では、新しい交渉をさせて頂いてもよろしいですか』


エス君の気が2人に集中した。今だ、僕はハッカちゃんの指先に小さな傷をつける…





『合格おめでとうハッカちゃん。僕からのサプライズプレゼントだよ』


俺は無言でジーザの頭を叩き落とす。




『バーカーヤーローウ。デビュー前のカネホリにソニミオプレゼントするバカがどこにいる』

『嫌だな、エス君、ほれここだよここ』

『あーそうでしたね。って言うかバカ』


嬢ちゃんはかわいいデザインの腰から下げるタイプのソニミオに指を突っ込んだまま固まっている。


気を逸らした俺が悪いのかこれ…はぁ…


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