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『鮫は海にでも帰りやがれ』

まあ、アルコ種だけどな。って心の中で自分に突っ込みを入れながらダッシュ。近づくと大きな顎の迫力がかっこいい。

目元に一発、顔を横に向けた奴にジーザからの一発。

その大きな体がぐらっと揺らぐ、それでも浮いてる、不思議だ。

鮫の気がそれないように2発。


『こら、鮫。こっちだこっちだ。海へ帰れ、いやむしろ俺の金に変われ』

聞こえているか、解るのかはどうでもいい。とにかく野次を飛ばしながら目元にちまちま散弾を当てていく。


『エス君、弾補充するからちょっとよろしく』

『どれくらいで出来る』


懐から両手使いのショットガンを取り出しながら声をかける。

『20秒』


返事代わりに鮫にぶちかます。

この鮫、思ったより早くない。やはり水中で無いからか…噛みつきも結構大振り。加速させないようにうろちょろうろちょろ、周りを回りながら弾を装填、目元にドン。


そんなことをしているうちに反対の目元にジーザからの高額な一発が入る、なんとなく右側の鉱石に攻撃が多い気がするが特に変化は見られない。鮫と俺が小さな円、ジーザがその周りを大きな円を描くように移動しながら危なげなく当てていく…


鮫は空中で大きく顎を開き、淡い光を放ちながら、砂のように消えていく。鉱石は脳にあたる部分から左右に突き出ている形だったらしい。消えゆくこのときも浮いている、不思議だ。


『こんな綺麗な消え方をするアルコ種は始めてみたかもしれないよ』

『何発撃った』

『11発。この光景に関する感想は無いのかい』

『俺はこの光景の後の方に興味があるからな。前座にしてはいい程度か』


ジーザの銃で11発…後半は俺も威力の高いショットガンも使うようにしたから。あの豪華銃無しではだいぶ時間がかかるな、腕のいい奴が比較的いい装備で4人…いや、5人はいるか。時間を短くしたければ7人は欲しい。


人数増えると儲けが減る、やっぱり大物より手の内に入る相手を狩るのがいいな。


『エス君、この輝き。サイズは小さいけどかなりの純度だよ』

『ばかやろう。ジーザ、俺より先に拾いやがって』

『別に独り占めしようとしているわけじゃないのに…』


そう言うと、少し頬を膨らませて宝石のような純度の小さな鉱石を不満げに投げてよこす。

『さーらーに、ばかやろう。これが幾らになると思ってんだ。大事に扱え』

『エス君は僕と共闘できるぐらい腕があるのになぜそんなにお金に細かいのか解らないよ。僕らクラスなら働かなくても面白おかしく生きていけるでしょ』



『それなら、お前はここに居ないだろう』



ジーザは美しい人形のように感情を感じさせない姿でこちらを見ている。

『そうだね、毎晩美しい女を抱いて、高級な食べ物を飲み食いしているけど。面白おかしくは無いね。この身を危険にさらすことで生きてるって感じるよ。無駄死にしたいわけでもないけど、楽しいってわけでもない』


愛くるしい子どものような表情に戻り

『今日は楽しいけどね。エス君はどうなのさ』

『俺は金が貯まるのが楽しい』


『何か欲しい物でもあるの』

『無い。貯まるのが楽しい』


『使わないのに』

『貯まるのが楽しいから仕方がない』

『もうわかったよ。今日の稼ぎは8割あげるよ』

『駄目だ、半分にする。オレユズレナイ』

『なんで急にカタコトなのさ。お金を貯めたい、それが楽しいんでしょ』

『オレ、ヒトノホドコシウケナイ。ジブンデタメル、タノシイ』


『わかったよ。キッチリ半分これでどう』

『うむ、わかってもらえてよかった。換金するまでが狩りだ。俺は用事がある急いで帰るとしよう』


俺がそわそわし出したのが面白いのか銃に弾をこめながらニヤニヤしやがる。コイツキライ。


『急いでるなら、帰りの鉱石は拾わずに行こう』『断る』


『ペースは上げる、鉱石も拾う。無駄な戦闘は減らす。これだ』

『さっきの鮫との戦いの方が楽だよそれ』


異論は認めない俺は入り口に向けて走り出す。「もう、待ってよ」って嬉しそうにジーザがついてくる。こう見ると綺麗な毛の長いイヌのようでいいかもと考えてしまう。俺はネコ派だがな。俺が急いでいるのは決して嬢ちゃんの試験を忘れていたわけではない。そう、けっして…ちょうどいい、暇そうなジーザにも手伝わせよう…




そろそろ浅瀬って所まで来たところでジーザが突然話を振ってくる。腰の袋が鉱石で重いな、ズボンが下がる。


『エス君、最近浅瀬では人狩りが出るようだよ』

『ワンダーの中じゃ、殺しも珍しくないだろう』

『それでも、目立たずに積極的に人を狙うのは珍しいと思うけど』


人狩りか…


『そんな話より、この後暇か。暇ならちょっと付き合えよ』

『どういう風の吹き回しかな。てっきり僕の事嫌いかと思っていたよ。こう見えて男でも女でもいける口だからね』

『ちょっと待て、何さらっと両刀告白してんだよ。そういう意味じゃねーよ』

『なんだ、違うの。残念』


ズボンをあげなおし、ベルトを少しきつく締めなおす。

小声で奴に耳打ちする…


『へー、面白そう。是非手伝わせてもらうよ。失敗したらごめんだよ』

『まあ、お前がいなきゃ初めから失敗と同じ結果だから気にすんな』

『じゃあ、早く行こう、ほらほら』


浅瀬じゃ、特に障害になるようなアルコ種はいない、あっという間に外へ到着だ。

いつもより、だいぶ遅いな、太陽はとっくに頭を過ぎている。


『さあ、換金だ』

『待ってよ、鮫のがどうなるのか楽しみだね』


まったくだ、幾らつくのか…おっとよだれが…


『すみません、少しよろしいですか』


『おいこら、俺のよだれを啜ろうとするな、何でもありかお前』

『そう言ってるじゃないか、嘘はつかない主義だよ。僕はね』



『すみません、お2人とも話を聞いていただけないでしょうか』

『ん、俺たちのことか』

『そうみたいだね…僕達のじゃれあいを邪魔するなんて』

『そういうことじゃねーよ。おいジーザ俺はそういう趣味はない』


『あの…聞いていただけないでしょうか』

『ああ、悪い悪い。で、なんだ』


ハッカくらいの年の坊ちゃんとまあ隙のない感じの美人さん、どこかで見た気もするが…

荒野ではあまり見かけない東方風の服装、懐かしいな…


『お2人ともかなりの実力があるカネホリの方とお見受けしますが』

見た目の印象とはかけ離れた丁寧な口調、頭よさそうだな。

『いかにも、今この町で僕とエスを超えるカネホリは居ないだろうね。ねーエス』

『急激に心の距離を縮めるなよ、今回は一時的に組んだだけだからな』

ぶーっと頬を膨らませて抗議するジーザ、美形はなにやっても許されると確信している顔に殺意を覚える…


『お話を続けてもよろしいでしょうか。エス様、ジーザ様』

『堅苦しいのは嫌いだ、エスでいい。それに俺はジーザほど腕は良くない』

『僕は自分が認めた人間以外には気安く呼ばれたくない。様付けでいいよ』


様付けでいいよって、なんだよ。


『率直に申し上げます。高ランクのプルトロン鉱石を私達に譲っていただけないでしょうか。コルティック社評価額の1.2倍で買い取らせていただきたいのですが。いかがでしょう』



『高ランクとはどこからになる、Aランクかそれともそれ以上か…』

『こちらとしてはそれ以上があればお願いしたいのですが』

『そんな規格外がそう簡単に出るとでも、支払いも出来るのか』

『このワンダーが発見されて、そろそろトップ集団は下層を狩場にして安定してくる頃…そろそろ規格外が出始めてもいい頃合かと』



ふむ、ぽっと出の商人ではないか。見た目少年なのになかなか。

『支払いは、現金ですぐお支払いいたします』

『ほう、それほどの大金を持っていると俺達に明かして、奪われる心配は…無いか』


後ろで一言も発して居ない女性は全方位の警戒をしている、この女性がいれば大丈夫そうだな。


『僕は気に入らないね。エス君、今日の稼ぎはきっちり半分といったね。鮫の奴は間違いなく規格外になるだろう、君はこいつに売ったほうが儲けは増える、けど僕はこいつが気に入らない、売りたくない。あの鉱石の権利は半分僕にある…エス君はどうするつもりかな』


静かに目を合わせる2人を見ながら。俺は時間がねーんだよ、揉めんじゃねーよとか考えていた。


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