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契約書


サウザンドボブ支配人 ボブ様

書類作成 エス


内容

1、エスは3日に一度サウザンドボブに顔を出すこと。有事の際はボブにできる範囲での協力をする。その際に発生した費用はボブに支払いを求めることができる。

2、ボブはエスに対して1回300ジルを支払うこと。

3、この契約はお互いの事情を伝え不要となった際に破棄することができる。




『簡単な内容だがこれでどうだボブ』

『はい、こちらとしては申し分ありません。さすが稼げるエス様、抜け目が無い』

『それは褒め言葉として受け取っておく』


ジンを一口含む。ほう…見た目と違って繊細な味のチョイス、顔を上げると暑苦しい笑顔。

不思議な男だな。契約書を2部書き上げ互いに署名して一枚渡す。

『では、開店前の準備もありますので』と言って下がろうとするのを引き止める。


『ラドさんとエルさんはあの一件以来も稼げているか』

『あの2人は人気がありますのでご心配は無用かと』

『ならいい。引き止めて悪かったな』


『いえいえ、お優しいのですね』ニヤニヤしながらカウンターに沈んでいった。あの芸の幅はなんなのか…



1人、ジンの味を楽しみながら店内の様子をぼーっと見ている。少しずつ従業員の女の子が出勤してきているようだ。ラドさんとエルさんも店内の掃除を始めだした。

一生懸命掃除する姿は美しいな…


空になったグラスを置くと動時に俺の耳元で声がする。

『随分と熱心に見られていますね、はい。これは本日の分になります』

空のグラスと引き換えにコインをそっと差し出す。

それを黙って懐に入れる。


『従業員に紹介してもよろしいでしょうかエス様』

『かまわないぞ』



ボブが手を3回叩くと店の中央に5名の女性が並んだ。

『知っている人も多いと思うがこちらはエス様。暫くの間用心棒として来て下さることになった。失礼の無いように』

女の子達は「はい」と声をそろえて返事をする。


ゆっくり全員を見回してから、

『3日に一度だけど顔を出すことになった。トラブル等で困った時は遠慮なく言って欲しい。よろしく』


『では、店を開けますよ』

俺は元のカウンターに戻り席に着く。店は開店から1時間くらいで7割ほど埋まっている、なかなかの人気店のようだ、カネホリだけじゃなく町の人間の姿も見える、ワンダーが無くてもそこそこ儲かっていそうな感じだな。もうちょっと要求してもよかったかな…




『エス様、今後よろしくお願いしますね』

髪の長い女性が話しかけてくる。耳に髪をかけるしぐさが艶っぽい。


『ちょっと、メル。エス君は私達の大事なお客さんなんだけれど』

『そうよ、そうなの』



『あら、これからお世話になるかもしれない人にあいさつをって思っただけよ』

『まあまあ、2人とも。メルさんだっけ。よろしくね』

『2人が睨むから今日はこの辺にしますわね。失礼します』


2人が立ち去るメルさんの背中にベーって舌を出している。


『ちょっと目を放すとすぐなんだから』

『もーなの』

『そう言わずに、これでラドさんは飲み物、エルさんは食べ物をお願い。残りはチップで』


そう言ってそれぞれに100ジルを渡す。

『『はーい』』

現金なもんだ…


『でも、メルには気をつけてよ。あの子、人の客でも平気で取っちゃうから』

『わかったよ』


貪欲な姿勢は嫌いじゃないがね…

『メルさんはうちのナンバーワンですからして、ええ。気に入りましたか』

『急に出てくるなボブ。お前の存在は暑苦しい』


額に手を当てて立ちくらみのようなポーズを取るボブ…もういいや。

『エス様に熱い男と呼んでいただけるとは嬉しい限りです。おや、お客様のようですよ』


ふと、振り向くと見覚えのある男が立っている。

『エスさん、一杯奢らせてくださいよ』

あの子犬のおっさんか、随分身なりがよくなったな…

『いい加減にしてもらおうか。あと、俺はこの店の用心棒になった。他の客からの奢りは受けれないからな』

『お客様ご注文は』

『ウイスキーをロックで』


注文はさっきしたばかり、帰るに帰れないな。

『お前、随分と身なりがよくなったが』

『へい、必死に頑張って武器も新調できるくらいにはなりやした』

『そうか、次はソニミオか』

『まだまだ届きませんが、頑張ります』


『お待たせなの、エス君ボブさん特性炒めそばだよ』

『飲み物はボブさんのオリジナルカクテル「オアシスの夕日」だよ』


ん、美味い…カクテルも見た目だけじゃなく、味もスッキリとした甘さが絶妙…

底が見えないなボブ…



でも、そのどうです、なかなかの腕前でしょうと言わんばかりにわざとチラチラ見るのはいただけない。指を向けてバン。

撃たれてカウンターに沈んで行くボブ。浮かんでくるな。


食べ終り、隣のおっさんに、

『まあ、俺には付きまとうな。お前はカネホリとして頑張れ』

『エスさん。頑張ります』


『ボブ、今日は帰る。何かあれば2人を通して俺に伝言しろ。これはサービスだ』

『ありがとうございます』

ラドさん、エルさんに手を振って店を後にする。



『カネホリとしてか…』




この町での生活は一応安定をしたと言えるのかな。

ワンダーでの狩りは中層で無理なく行い。夕方前には引き上げる。これはワンダー内で泊まったり、儲けも多いが危険性も高くなる大物狩りをしないため。

3日に一度はボブの店で少し過ごす。店での小さな揉め事や、最近では駆け出しカネホリの相談(有料)なんかもやるようになった。保安官からの頼みがあったからだけど。

それ以外は嬢ちゃんの訓練を見たり、保安官詰め所で甘いコーヒー(無料)を飲んだりして無理なく無駄なくってところか。


この町に来てそろそろ30日が過ぎるな…




『嬢ちゃんそろそろ撃ってみてもいいんじゃないか』

今まで、嬢ちゃんは銃を撃ちたいとは一度も言わなかった、なぜかはわからない。バンバン撃ちたいとか言ったらそれはそれで止めたと思うが。


嬢ちゃんは身体の感覚を確かめるようにゆっくりと全身を伸ばしていく…

その動きだけでも気持ち引き締まった手足、そして柔軟性を感じる。

真剣な表情もいい、やはりいい素材。


弾を13発嬢ちゃんに手渡し、空き缶を嬢ちゃんの2メートルの地点から約1メートルずつ離して5つ置く…



『支えは…いらないか』

『はい』


『それでは、手前から順番に狙って当たれば次の距離を狙うように』

マガジンをセットしながら頷く。



『マガジン1つ分。13発で5つの缶全部を倒せば1段階合格』


返事も無く目の前に置かれた缶を見つめる嬢ちゃん…




結果は文句なし…


テンポ良く、カン、カン、カン、カン、カン、終了。


自分が始めて銃を持った時のことを思い出そうとして、やめた。

弾が余ったので、さらに距離を延ばしてみると最終的に10メートルのところで一度外した。2回目には当てたけど。


才能か、努力か、両方か…護身用なら俺が教えることはもう半分は終わったな。ボレロと相談が必要だな…宿代払うか…



これからどうするかと考えていると心配そうに覗き込んでくる。

『先生、私駄目でしたか』



つい大声で腹を抱えて笑ってしまった。

『何言っているんだ、その辺の駆け出しカネホリよりいい腕だ。俺が始めて銃を使ったときよりも随分と上だよ。あまりに上手いんで俺はボレロに宿代払う羽目になるよ。あ、契約が無くなったら追い出されるかもしれん、それは困るな』


『エス君、私はそこまで酷い人間ではないと自負しているがね』

『うわ、見てたなら見てると言ってくれよ。俺は気が小さいんだ』

『どの口がそれを言うのかね。それにその心配をするにはまだ気が早いのでは』

『まあな、肝心なことはまだだし。それでもお爺ちゃんとしてはこの段階でもいいんじゃないか』



『それを決めるのは私ではない…ハッカ、いつまでエスに教えを受けたいかはお前が決めなさい』

それだけ言うと、ボレロは宿の中へと1人帰っていった。



片手にA-12を持ったまま黙ってボレロの背中を見送る嬢ちゃん…



『嬢ちゃん、はい撃って』

缶を軽く投げる…



カン


カン



カン


徐々に距離を遠くしながら3つ。近い距離なら動く的もOKっと。基礎はほぼすっ飛ばしか。


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