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喚く三人組の先頭の奴に向けて低い位置に金貨を投げてやる。前のめり気味に拾おうと頭を下げたところを横から左頬へ一蹴…

そのまま右足を踏み込んで左後ろの奴の顎に後ろ回し蹴りをめり込ませる。

とりあえず2人沈めてっと。

俺の大事な金貨を拾って、自分のズボンで磨いてしまう。


『まだやる。今なら有り金で許してやってもいいよ』

そういいながら、倒れた2人の服を脱がして、金目の物を一通り漁る。

残った1人はそんな2人を見ながら恐怖からか動けないようだ。

銃から弾を抜き取って懐へ、すっぽんぽんにして脇や尻の間も落ちてた棒で突いて隠してないか調べる。


野次馬はどん引き…小さな声で「ひでぇ」「あそこまでやるか普通」とか聞こえてくるが俺には関係ない。


動けない残りの奴の前に空の銃を2丁放り投げる。

にやりと笑って、そいつの目の前で鉄パイプを2回振り下ろす。

『こんな目に遭いたい、それとも有り金置いて行く。おにいさん』

凄い勢いで体中をまさぐり俺の前にチャリンチャリンと金が置かれる…


『その場で飛べ………よし行っていいよ』

3人分で1500ジル、しけてるな…

顔を上げて店の看板を見る。そして小太りのアフロを見つけて手招きしながら呼ぶ。


『ボブ、ここにいる皆さんに俺から一杯奢らせてもらう。あと、この暴漢を保安官に突き出しといてくれ』

『毎度ありがとうございます』

『騒がして悪かったな、みんなも楽しく飲んでくれ』


ビビッて固まってたくせにちゃっかり手を出すところが商売人だな、ボブ恐るべし…

500ジル握らせて俺も店の入り口に戻る。



エルさんとラドさんが笑いながら近づいてくる。

俺は黙って2人にそれぞれ500ジルを渡す…


2人とも戸惑っている様子なので声をかける。

『騒がせちゃってごめんね。それは迷惑料代わりに取っておいて』

『助けてもらったのは私なのに…』


顔を見合わせる2人にちょっとおどけた口調で言う。


『あんだけ派手にやったら俺の女だと思って声かけてくる奴が減っちゃうだろ。チップも減るかもよ』


『うーん、それは困るの』

『でもエス君が贔屓にしてくれれば、あんな変な客に絡まれなくてむしろ助かるわ』

『でも、迷惑料としては貰えないの』


『じゃあ、2人のお勧めの料理とジュースをお願いしよう。残りはチップで』


『『はい』』

注文を待つ間に店内をゆっくり見渡してると目が合った客が「ご馳走さん」と声をかけてきたり、ジョッキを上げてあいさつしてきたりする。

今居る客はまあまあ気のいい奴らかなって思う。



『お待たせしました』

エルさんとラドさんが俺の両サイドに座ってくる。

『今日はエス君の専属許可が出てるから、食べさせてあげる』

『はい、あーんなの』


『俺は子どもじゃないっての』って言いながらもしっかり食べさせてもらう。


カウンターの中からボブが親指上げてウインクしてきた。気持ち悪い。暑苦しい。

ボブに指を向けてバンとジェスチャーする。

胸の辺りを押さえて倒れるノリのいいボブ…メンドクサイ…


『2人とも俺はもういいから稼いでおいでよ』


『私たちのこと嫌い』

『きらいなの』

『そんなこと無いよ、俺に用がある奴がきたみたいだからさ』

『『はーい』』


2人はフロアーに戻っていった。

なるだけ目立たないように静かにジュースを飲む。


『あ、親分』大きな声でまっしぐらに俺の方に駆けてくる。

何も言わずに俺の隣の席に座ってくる。ボブがスッと近づいてきて注文を聞く。

『俺はウイスキーロックで。親分は何か飲んでくださいよ、是非奢らせてくださいよ』

『俺はお前を子分にした覚えもないし、奢られる理由もない。俺のことを勝手に親分と呼ばないで貰おう』

『親分に助けてもらった命です。奢る理由はありやすぜ』

『俺の名前はエス、今度俺のことを親分と呼んだら、次は俺がお前を殺す。じゃあな』


俺はボブに片づけを頼み、エルさんとラドさんに投げキッスをして店をあとにした。



明日も稼ぎますか…




私は走っている、できるだけ人通りのある大きな道を選んで。


今できることだから、私は走っている。家の手伝いも今まで通り、でもお爺ちゃんに頼んで薪割りとかの力仕事も少しやらせてもらっている、先生に言われたことだから…違う、私に今できることだから…



あれからまだ3日、少し身体がだるい。銃は初めての日から撃っていない。先生はどうするか毎日聞いてくれるけど私が断ってる…理由は恥ずかしいから…だから、今はできることをする。




『エス、順調そうだな』

『そう思うかい、ボレロ』



『ニヤニヤしながら、数日間そこで毎日の稼ぎを数える姿を見てればわからない方がどうかしてると思うが』


コインを積み上げる手を止めて、ボレロの方を向く。


『そりゃそうか』

『そうだろう、そして君が私の思うような腕前であったと実感しているところだよ』

『宿代取りたくなったか』

『まさか、私は都合よく約束を違えるのが嫌いでね』

『だろうな…嬢ちゃん頑張っているみたいだな。ちょっと力入りすぎか』

『変わろうと必死なのだよ。私が口を挟むことではない』


『不器用と言うか、なんと言うか』


『私のことだ』


『だな』



俺は積み上げた今日の稼ぎを懐に一枚一枚仕舞って行く…


『お爺ちゃんただいま、あ、先生今日は早いですね』

『だいぶ慣れてきたからな狩りのペースが上がってるんでね』

『エ~スく~ん。あれから一度も来てくれないなんてひどいの』

『本当よ、今日は来て欲しいな』


嬢ちゃんは2人にぎゅっとされてから奥へ入っていく…

『わかったよ、しょうがないなこの間みたいにはチップ弾めないよ』

『それでもいいの』

『そういえば、この間エス君と話してたお客さん毎日尋ねてくるわよ』

『エス君のこと色々きいてくるの』


『へー、そうか…』



俺が難しい顔でもしていたからかラドさんがすぐフォローしてきた。

『でも、何も話してないからね。エルもそうでしょ』

『そ、そうなの』

微妙に視線を逸らすエルさん…

『あんたまさか』

『ううぅ、私達を助けてくれた時のことをちょっと…』

『信じられない、エス君とどんな関係かもわからないのに』

『まあまあ、ラドさん。大丈夫だから、そいつはワンダーで偶然助けた形になった奴で。まだ俺の敵じゃない。味方でもないけどね』

『ごめんなの』


『2人に迷惑かけてないならほっておくさ。でも、エルさんには罰として今日の注文はラドさんだけにしよう』

『そんな、ひどいの』

『そうと決まれば、早く行きましょう』


ラドさんに腕を組まれて宿を出る。

『まってほしいの』

口をへの字にしてエルさんが後を追ってくる。やれやれ。




『おお、エス様。開店前ですがどうぞどうぞ、外は暑いですから、ささ、どうぞどうぞ』

暑苦しいのはお前のアフロとその営業スマイルだ。とは言わないで勧められるままに中に入る。

以前座ったカウンターに座る。2人は着替えかな。


『エス様、一杯サービスさせて頂きたいのですが、何がよいでしょう』

『そのサービスは本当にサービスか。ボブ』



『はははは、そうです、そうですよ。タダのサービスですからしてはい』

『それなら、ジンのロックでももらおうか』

『はいはい、ただいま』


小太りの身体で踊るように飲みものを用意するボブ…やっぱり暑苦しい、見方を変えれば愛嬌があるとも言えるか…


『ささ、どうぞどうぞ』

『冗談はさておき、俺にお願いでもあるのか』

『実はですね、エス様に2日、いや3日に一度でいいのでうちの店に顔を出していただけないかと、はい、そう思う次第でして』

『回りくどいのは嫌いだぞ、俺は』

『エス様は稼げるカネホリでいらっしゃる。この数日だけでも駆け出しの方々の間ではうわさに…それにこの間の一件で皆様上品にご利用いただけておりまして、はい、その』

『駆け出しの抑止力として俺を利用したいと』

『察しがよろしくて助かります、はい』


首から提げたタオルで顔をゴシゴシ拭くボブ…笑顔がキモイ。


『俺にどんな得がある』

『顔を出していただけるだけで200ジル。いかがでしょう』

『ボブ、俺は稼げるカネホリだろう…』

『300ジル。いかがでしょう』


顔出すだけで晩飯代におつりが付いてくる…悪くない。


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