古いお地蔵様が静かに見守ったお話。
初めてという事で以前から書いてみたかった短編のお話を書いてみました。
どこかで感じた事があるような切なさを思い出していただければと思っています。
まだまだ未熟ですが最後までお付き合い願います。
「なんでだろうね。」
薄暗い森の中、道ばたの小さな黄色い花がボサボサと呟いた。
「ぼくは知らないなぁ。」
すかさず上の方からのっぽなりんごの木がガサゴロガサゴロと答えた。
「なんでなんだろうね。」
黄色い花は少しだけ上を向いた。
「どうしたんだい。でもぼくはきっと知らないだろうね。」
「ええきっとそうね。」
「あぁきっとそうだ。だけれども言ってごらん。知っているかもしれないよ。」
少し間を置いて、黄色い花はまたボサボサと消え入りそうに呟いた。
「なんで人間はここを通るのだろうね。そして上を見て、あなたのりんごを嬉しそうに、私を嬉しそうに踏みつけて、そして通り過ぎていく。」
「やっぱりぼくの知らないことだったねぇ。でも僕が小さい時からずっとそうだよ。」
黄色い花はボサッとため息をついてみせた。
「あらお花さん。今日はよく喋るのね。どれだけ頑張っても、あなたはりんごの木にはにはなれないんじゃないかしら?」
そよ風が薄ら笑いながら花びらをちぎって、りんごの木の足元に投げつけてみせた。
黄色い花は甘い蜜をひとしずく、もうひとしずくと溢れさせた。
「そよ風はいつも君を散らそうとやってくるね。」
りんごの木はきっと優しいのだろう。黄色い花がふわりふわりとやってきた時から、ずっと気にかけて下を向いている。
「なんで私は踏まれるんだろうね。一人ぼっち、だからなのかなぁ。」
どこからともなく小さなアリが集まってきて、黄色い花からかわりばんこに、嬉しそうに蜜を拭って、そして巣に帰っていく。
「君もきっと、地面からそう思われているよ。ぼくにはたった今それがわかったよ。」
りんごの木は一度大きく体を震わせて、未熟なあおいりんごを落として、きっと微笑んだのだろう。
「ここは暗いねぇ。まだお日様は高いところにいるというのに。」
旅人は一人でぶつくさと言いながらりんごの木の根元に腰を下ろした。そして荷物を降ろすと小刀を取り出し、りんごの木をガサガサとよじ登って「へへへ」と笑ってみせた。
気の優しいりんごの木は、大きな大きな深紅の実を葉をよけて揺らせて見せた。
「これは何とも親切なこったい。」
旅人は小刀を使う事をやめ、丁寧に手でちぎってりんごの木を労った。
嬉しそうにりんごをしゃぶる旅人の荷物の下にはきっと黄色い花があったのだろう。
旅人の荷物は甘い蜜の香りがしていた。
りんごの木は寂しそうに、寂しそうに上を向いた。
いかがでしたでしょうか。本当に短い短編でしたね(笑)
今回この小説を書くにあたって知った事、それは「りんごには雄雌がない」という事です。いやー知識の無さに呆れますねまったく...
それはさておき、作品と言えるのかも微妙なこの作品。最後まで読んでいただき本当にありがとうございます。
どうしても書きたくなった作品というか、私が日頃感じている切なさと孤独感を文字にしてみたいと思い書いたです。共感していただけたでしょうか?
最後まで読んでいただいて本当にありがとうございました!
また次回の作品もよろしくおねがいいたします!