第16話 走馬灯の旅は苦痛に満ち溢れている
私、ルナ。今、馬車の中にいるわ……
はじめは楽しかったお貴族様仕様の馬車も、少し乗ればもう飽きる。狭い窓に流れる景色は遅々として進まないし、何の娯楽もない。
本ぐらい用意してくれたらいいのに!
こっそりといろいろ漁ってみたけど、何もない。多分お酒とか積んでたんだろうな、っていう形跡はあったけど。
これはもうリアルに、精神と時の部屋だよ。
まあ感覚的にはいつも、時間は引き伸ばされてるんだけど。
虚無になって時間感覚を普通にしようにも、馬車の揺れが激しくて、そっちに意識もってかれちゃう。
サスペンション無いんだよね、苦行だよ苦行!
悟りひらいちゃうぞ!お尻にスティグマも刻まれそうだ。
そんなこんなで、馬車の中をうそうそしてたら、御者のナイスミドルから「退屈か?」って声かけられた。
話し相手がいたら違うかもと思って、無理言って御者台に座らせて貰った。馬車の中は空っぽ。
シュールだ。
ナイスミドルは話して見ると、とても子供好きであることがわかった。
行儀もいい、言葉の発音も綺麗、などと褒められる。
ムフフ、悪い気はしない。
日が高くなって、休憩となった。
食べれるなら食事もしておけとのこと。
渡された食べ物は、堅いパンと塩辛い干し肉。
これ、食べ物?
剣士さんを見ると、豪快に囓ってる。
同じ様に食べようとしたが、全然歯が立たない。
無理したら歯の方が折れる。
仕方なく、削るようにチマチマ食べてたら、剣士の一人が呟いた。
「小動物系美少女……、ありだねぇ……」
まともな方の剣士さんに、危ない剣士を指差して話しかける。
「ねぇねぇ、あの人、存在していい人なの?」
「え?うー、あー、その、だね。
……あいつは、子供が好きなんだよ!うん、そう!」
……それって好きの意味が違うくない?!
同じ子供好きカテゴリーのナイスミドル御者とはえらい違いだ。
休憩が終わり、再び御者台に収まろうとした私にナイスミドルは苦笑いしながら、隣を空けてくれた。
うん、こういうさり気ない優しさってモテるポイントだよね!愛妻家に違いない。
御者さんのおかげで、旅の苦痛がだいぶ和らいだ。もうすぐ今日止まる街に着くというところで、穏やかじゃない雰囲気が漂ってきた。
地面が何か荒れている。
もともと舗装されてるわけじゃないけど、一段と酷い。デコボコしてて、馬車で通るには車輪を取られて御者さんが大変そうだ。
変態剣士が馬を駆って先の様子を見に行く。
「何があったのかな?」
そのつぶやきを御者さんがひろう。
「獣の群れ……かもしれんな」
変態剣士が戻ってきて、言った。
「街が魔獣に襲われてる!先に進むのは危険だ」




