第14話 涙の理由
ゆらりとなんか物騒な気配を匂わせてグラッドさんが木剣を構える。
なに?ちょっと、目がマジなんだけど。怖いって!
ゆーっくりと剣を持ち上げていく。いや、走馬灯なくてもホントにゆっくり。でも、危険な感じがビンビンしてる。ホントに勘弁してほしい。
やるなら、脳内高速バトルからじゃないの?ほら、ピクピクしなさいよ。
振り被られた木剣。
弛緩してた筋肉が急激に張り詰めていく。
やっば!!
急いで木刀を持ち上げる。
間に合うかギリギリになっちゃった!
袈裟斬り。
空気を粉砕していくような鈍い音。
どうやったら、こんな音なるん?!
ていうか、腕の筋肉、張り詰めすぎて血管浮いとるし!手加減しなさいよ!6歳児だよ?!女の子だよ?!
みるみる近づいてくる木剣になんとか木刀の刀身が間に合う。
木刀だけじゃ止められない。
切っ先を右肩に当てて、受け流す。
ゴッ、と重い音とともに、衝撃で肩に木刀が食い込む。
痛ぁぁぁぁぁい!!
受け流してんのに!痛い!酷い!理不尽!
何このラオウ!
受け流した木剣に押されて、一歩、横に踏み出す。
再び、鈍い音。いや、雄叫び?
ラオウが吠えてる!
今度は横薙ぎがきた!
鳥肌ヤバっ!
これヤバい。受け流せない。でも受けたら、村の外まで飛んでいきそうだよ!
だったら逃げる!
逃げるのは恥だが役に立つ!!
思いっきり後ろに跳ぶ!
木剣がドンドン近づいてくる!!
ひぃぃぃぃ!怖いぃぃぃぃ!
ギリギリ避け…………る!!鼻先を掠めて、取り残されたポニーテールの先が木剣に触れて……
え?1センチくらい切り落とされたんだけどぉ!?何その木剣!カミソリでも仕込んでんの!?
毛先だったものが、切り落とされてばら撒かれる。
髪の毛を惜しむ間もなく、グラッドさんの剣が引かれている。
まてまてまてまて!あんたホントに殺しに来てるでしょ!私なんか悪いことしたかなぁ!
突き。
後ろに跳んで足が地面に着いてない私にはどうしょうもない。
宙に舞う髪の毛を弾きながら、木剣の先が近づいてくる。
もうこれは受け止めるしかない。
伸ばした右足が地面につく。
そこを支えにして、木刀を両手と右足で盾にする。私と木剣の間に。
衝撃
身体がすごい力で押される。
目を閉じて懸命に踏ん張る。
おもぃぃぃぃぃぃ!
その時、両手と右足に、何か粉砕するような感触があった。
はっとして目を開けると、徐々に粉砕していく木刀。繊維が弾け、その強度と形を失っていく。
私の喉元に木剣の剣先が突きつけられた。
遅れて私の顔に当たる、木刀の破片。
わ、わ、私の……、木刀……。
お気に入りの……。
鬼神丸国重(自称)がぁぁぁぁぁぁぁ!
目に涙が溢れてくる。
抑えきれない感情が、理性を押しのける。
「う、う、う、うわぁぁぁぁぁん!!」
産まれてから、本当の意味で初めて泣いた。
「ぬ?あ、あ、お、お嬢ちゃん、わ、悪かった!つい本気になってしまった!」
数時間くらい(走馬灯時間)泣いた。
周りですごい混乱を巻き起こしてたけど、少し落ち着いてベソベソしてたら。周りでグラッドさんを囲んでなんか話してるのに気づいた。
「グラッド、やりすぎだ……まったく……」
「いや〜隊長……。あれ、隊のメンバーでもヤバいっす」
「殺気、マシマシだし、正直引いたわー、隊長」
「泣きじゃくる美少女…。良きですねぇ……グッ、グフッ♪」
「いや、ほんと、大人でもトラウマもんですよ…あれ」
「いや……その、まさか一撃目が……、捌かれるって……はい、すんません…」
なんか一人変なのがいない?……いいけど。
「さようなら、きじんまるくにしげ……」
愛刀に別れを告げていると、側に誰かがきた。
パパかな、と思ったら意外と小さい影。
その影が、私の影の頭の部分を抱く。
柔らかく包まれる感触。
頭がポンポンと、撫でられた。
そんな事されると、わたし、泣いちゃうよ?少年……




