表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

67/86

第66話 悪役貴族、再び村長を訪ねる ①

 マルス達は早速に村長の家へ向かった。

 村で唯一の二階建て家屋。近づくにつれ、どこか沈んだ気が滲み出ているのを感じる。どんよりとした空気に交じり、きつい薬草の匂いが漂っていた。


「ここだな」


 家の前に到着すると、マルスが呟く。


「御免。村長殿はいらっしゃるか」


 ブリジットが扉を叩くと、奥からすぐに足音が近づいてきた。

 出迎えに現れた村長は巨躯ゆえの威圧感を備えていたが、初対面の時より一段と老け込んで見えた。厳めしい皺に、深い疲労と不安が刻まれている。


「おぉ……鈴音の騎士様。よくぞおいでくださいました」


 ブリジットの姿を認めると、村長は慌てて背筋を伸ばし、深々と頭を下げた。


「先日は無理な相談をしてしまい、大変失礼いたしました」

「お気に病まれるな。御令孫の具合は?」


 ブリジットの問いに、村長は言葉を詰まらせた。


「……良くありません」

「彼女に会わせて頂くことはできるか」

「もちろんです。あの子も喜びます」


 村長は笑みを浮かべ、一行を家に招き入れようとしたが、マルスとエリシアの存在に気付いてふと動きを止めた。


「そちらの二人は……」

「わたしの連れだ。紹介が必要か?」

「いえ、存じております」


 村長の鋭い視線を浴びて、マルスは「どーもー」と手を振った。


「何故その者達がこちらに?」


 低くなった声色には、マルスに対する嫌悪や警戒が露わになっていた。

 家に上げたくない。孫に会わせたくない。そんな思いはありありと見て取れる。

 訝しむ村長に、ブリジットがきっぱりと告げた。


「昨夜の依頼だが、受けてもよいと考えている」


 村長の目に光が宿る。


「まことですか?」

「うむ。ただし、条件がある」

「それは……?」

「依頼は、我らグロワール騎士団と、ここにいるマルス・ヴィルの連名で受けさせてもらいたい」

「理由をお聞かせください」

「彼は優れた探索者だ。ダンジョン攻略に関して、右に出る者はおらぬ」


 ブリジットがそう説明しても、村長の表情は硬いままだ。


「お言葉ですが……孫の命がかかっている話です。依頼を受けて下さることには感謝いたしますが、戯れで関わられるのは愉快ではありません」


 その言葉はブリジットへ発されたが、矛先はマルスに向いていた。

 マルスは苦笑いを浮かべるが、なにも言い返さない。


「決してそのようなつもりはない。ダンジョン探索には大きなリスクが伴う。専門家の助力は不可欠なのだ。彼が同行できないのであればこの依頼は受けられない」

「しかし……」

「御令孫のためにも、まず話を聞いてみてはいかがか」


 ブリジットの落ち着いた声を受け、村長は俯いて考え込む。

 それから、何度か小さく頷いた。


「鈴音の騎士様が、そう仰るのであれば……」


 村長は大きく息を吸って、家の奥へと一行を促した。


「どうぞ、お入りください」

「失礼する」

「お邪魔しまーす」


 ブリジット、マルス、エリシア、フードの騎士。四人が村長の家に入ると、薬草を煮詰めた匂いがより濃く鼻を刺す。

 居間には小さな暖炉があり、その前にある揺り椅子の上で、一人の少女がプレートに目を落としていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ