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エリオン ― 俺が神だと知った時、世界の終末が始まった  作者: エリオン


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第99章 ― タニアの記憶

「この作品は純粋なフィクションであり、いかなる論争を引き起こしたり、人々の考えを変えたりすることを意図したものではありません。作品に描かれている出来事は、著者の見解を反映するものではありません。物語の一貫性を高めるために、一部の歴史的および神話的な出来事は改変または変更されています。この作品は、古代の出来事に関する歴史的または宗教的な言及を意図したものではありません。」

暗闇が、果てしなく広がっていた。

タニアは何も見ることができない。自分の手すら見えなかった。

「ここは……どこ?」

最後に覚えているのは、牛の皮をまとったあの男の姿。

そして――気づけば、この奈落に落ちていた。

手探りで歩き出す。

だが、どこまでも闇だけが続く。

やがて、はるか遠くに小さな光が見えた。

「あれが出口ね」

タニアは走った。

走って、走って、走り続けた。

だが光は近づかない。

「くそ……幻覚なの?」

焦りが胸を締めつける。

光は動かない。

ただそこに在るだけ。

タニアは立ち止まった。

「いい加減にしなさい! ここから出しなさい! さもないと後悔するわよ!」

闇の奥から笑い声が響く。

「姿を見せなさい、臆病者!」

「親愛なるタニトよ。

 僕はお前を閉じ込めてなどいない。

 今いるのは――お前自身の内側だ。

 これは、お前の記憶だ」

再び光が現れる。

それは――小さな少女だった。

赤い髪。

三角形の深紅のドレス。

小麦色の肌。

琥珀色の瞳。

額には赤い三日月。

タニアは理解した。

あれは――自分。

「なるほど……そういうつもりね」

闇が薄れ、部屋が浮かび上がる。

それは彼女が幼少期に過ごした部屋だった。


タニト――それがかつての名。

紀元前八世紀、レルに生まれた。

母はすでに亡く、彼女は最後の娘だった。

父――フェニキアの神々の王エルには会ったことがない。

彼女は宮殿で仕える女性マラキムに育てられた。

やがて思春期に差しかかった頃、

カルタゴの主ハモンとの婚姻が決まる。

北リビアの地に築かれた都市カルタゴ。

信仰を強めるための象徴的な結婚。

タニトは三角の衣をまとい、

頭上に月を掲げた女神として崇められた。

だがそれは形だけの婚姻だった。

彼女は夫と共に暮らすこともなく、

ただ異郷で孤独を抱えていた。

ハモン――すなわちバアル・ハモン。

それは力と数々の英雄的偉業によって与えられた称号であった。

彼はレル本国から隔絶された壮麗な宮殿、カルト・レル――「新しいレル」を意味する都――に住まっていた。そこはカルタゴの中枢であり、神と人の双方を見下ろす支配の象徴でもあった。

濃く整えられた髭を蓄えたその神は、赤みを帯びた橙色の冠を戴いていた。冠はまるで花開くチューリップのように広がり、その左右からは二本の雄羊の角が力強く突き出している。豊穣と威圧、そして古き神性を示す象徴であった。

衣は簡素な橙色のチュニック。飾りは少ないが、その威厳を損なうものではない。

彼はほとんど常に玉座に座していた。

玉座は高く据えられ、その両脇には二体の黄金のスフィンクスが鎮座している。鋭い眼差しを前方へ向けたその像は、まるで侵入者を拒む番人のごとく、沈黙の威圧を放っていた。

その光景は、力と孤絶を同時に象徴するものであった。


タニアはしばしば人間界へ降りた。

市場が好きだった。

食べ物が好きだった。

港で船を見るのが好きだった。

イベリアからの品。

メルカルトの柱の彼方からの錫。

南方の密林の噂。

特にイベリア。

そこには兎が多いという。

イシュパニム――兎の地。

タニアは兎が大好きだった。


ある日、自らの神殿を訪れた。

祭司に問われ、微笑んで答えた。

「その小さな像の女の子よ」

当然、信じられなかった。

彼女は神威を示さなかった。

恐れられたくなかったから。


疫病がカルタゴを襲う。

タニアは病人を看た。

触れた者は次々と回復した。

祭司たちは確信する。

この少女こそ女神タニトであると。


その頃、エジプトから使節が来る。

二柱の女神。

セクメトとハトホル。

黒髪。小麦色の肌。高身長。

だが瞳が違う。

セクメトは琥珀。

ハトホルは銀。

タニアはセクメトに強く惹かれた。

「あなたは伝説のラーの娘なの?」

「あなたこそエルの娘でしょう?」

明るく笑うセクメト。

「私はあなたみたいになりたいの」

月の女神が、

太陽の戦神に憧れた。

水ではなく、火を生み出そうとする。

不可能な願い。


セクメトは彼女をマヌの地へ招く。

黄金の戦車で巡る王国。

庭園。神殿。輝く空。

「父を失ったの」

「……ごめんなさい」

「あなたは太陽円盤を扱えると聞いたわ」

「もっと良い手本がいるはずよ」

セクメトは優しく笑った。

タニアは――

まだ、何も失っていなかった頃の顔で、

その笑顔を見つめていた。

注記


スペインという地名は、フェニキア語の「イシュパニム」(ウサギの国)に由来しています。そのため、タニアはスペインにはウサギがたくさんいると信じています。


メルカルトの柱は、現在スペインとモロッコの間の海域であるジブラルタル海峡にフェニキア人が付けた名前です。


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「ここまで読んでいただきありがとうございます!次回もぜひお楽しみに。」

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