第96章 ― ミトラスとソル対ザルモクシスとシャウシュカ
「この作品は純粋なフィクションであり、いかなる論争を引き起こしたり、人々の考えを変えたりすることを意図したものではありません。作品に描かれている出来事は、著者の見解を反映するものではありません。物語の一貫性を高めるために、一部の歴史的および神話的な出来事は改変または変更されています。この作品は、古代の出来事に関する歴史的または宗教的な言及を意図したものではありません。」
ソルとミトラスは一歩前に出て、ケレスたちの進路をさらに塞いだ。
「どうやら、我らを見くびっているようだな。そう思わぬか、ソル」
ミトラスは敵から目を離さずに言った。
「彼らは、我らの真の力を知らぬだけだ」
ソルもまた、視線を敵に固定したまま答えた。
「もういい。ザルモクシス、あれを排除しなさい」
シャウシュカが冷たく命じた。
「俺が? なぜお前の命令に従わねばならん」
ザルモクシスは苛立たしげに吐き捨てた。
「私は八位、あなたは九位。力の序列は明らかよ」
フルリ人の女神は怒りを込めて言い返した。
「好きに嘲るがいい。しかし、君たちは極めて重要なことを見落としている」
ミトラスは短剣を抜いた。
刃は光に満ち、やがて輝く剣へと変わる。
「我は誓約の神。生きて帰ると誓った――そして、その誓いは必ず果たす」
ミトラスの瞳は、燃えるような決意に満ちていた。
「戯言だ。その誓いに価値などない」
ザルモクシスは巨大な斧を振り上げ、二神をまとめて叩き斬ろうとした。
ミトラスは目を閉じ、静かに呟く。
「ラシュヌ……」
次の瞬間、ザルモクシスの一撃が放たれ、
――斬り裂かれたのは、ミトラスではなかった。
腰から真っ二つになったのは、ザルモクシス自身だった。
「な……何が起きた!?」
シャウシュカが信じられないという叫びを上げる。
「正義――すなわちラシュヌとは、実に奇妙なものだと思わぬか、ザルモクシス」
ミトラスは静かに宙に浮かびながら言った。
ネフィリムは苦悶に身を折る。
「正義の定義は文明ごとに異なる。
だが、自らを最も正しいと信じる者こそが、それを体現する」
「今この瞬間、我が正義は貴様を上回っている。
ゆえに、貴様の攻撃は我に届かぬ――
貴様自身が、この戦いを正義と思っておらぬからだ」
「確かに……弱き者と戦うことを、正義とは思っておらぬ」
ザルモクシスは唸った。
「だが、我が主アレスへの信仰を疑うな!」
蒼白き鬼火が彼の周囲に集い、斧へと吸い込まれる。
ザルモクシスは、青白い炎に包まれた斧を掲げ、咆哮した。
「バラス・ロムファイア(Balas Rhomphaia)(偉大で強力な剣)!」
その瞬間――
炎の馬に引かれた戦車が激突し、ザルモクシスを遥か彼方へと吹き飛ばした。
「ソル・インウィクトゥス(Sol Invictus)(無敵の太陽)!」
ソルは人差し指を掲げ、消えゆく戦車の軌道を指し示した。
同時に、ミトラスは剣を掲げて突進する。
ザルモクシスは斧で防ごうとしたが、
ミトラスは叫んだ。
「スラオシャ!」
剣撃を受けた斧は、生き物のように捻じれ、主の手を離れ、
そのままザルモクシスの脇腹を貫いた。
「服従――スラオシャもまた、大いなる徳」
ミトラスは淡々と告げる。
「正当なる権威の前では、無機物すら従う」
「みっともないわね」
シャウシュカは鼻で笑った。
「助けが必要かしら、ザルモクシス?」
「口出しするな、魔女が」
ザルモクシスは斧を引き抜き、再び鬼火を燃え上がらせた。
「ソラリス・クレピトゥス(Solaris crepitus)(黒点)!」
ソルが叫ぶ。
火球の雨がザルモクシスに降り注ぐ。
斧で防ごうとしたその瞬間、ミトラスが背後に現れ、髪を掴んで頭を引き上げ、
輝く剣を腹部へと深々と突き立てた。
ミトラスは囁く。
「タウロクトノス(Tauroktonos)(雄牛殺し)……」
瞬時に、犬、蛇、烏、蠍が現れ、ザルモクシスに食らいついた。
傷口からは血と共に小麦の粒が溢れ出し、流れ続ける。
「この秘儀は、ローマ人より授かったものだ」
ミトラスは低く告げた。
「ゆっくりと、お前を殺す」
「この雄牛は間もなく死ぬ。火葬の準備をしろ」
ミトラスは叫んだ。
ソルが天へと両手を掲げる。
巨大な火の球が両掌の間に形成された。
「ソリス・サンクティス(Solis sanctis)(聖なる太陽)!」
――だが放たれる前に、
背後からの強烈なエネルギーがソルを直撃し、
彼は山脈へと叩きつけられ、意識を失った。
「ソル!?」
ミトラスは恐怖に振り向く。
そこに立っていたのは、
斧を構え、翼を広げたシャウシュカだった。
「私を無視するなんて、よくない癖ね」
彼女は微笑む。
「あなたたちがザルモクシスと遊んでいる間、
私はあの娘を追うこともできたのよ」
「アレス様は、以前はあの娘に興味を示さなかった」
「けれど、アル=カウムとの戦いを見て考えを改めたわ」
「一歩でも動けば、こいつを今すぐ殺す」
ミトラスはザルモクシスを掴み、唸った。
「それが、私に何の関係が?」
シャウシュカは嘲る。
彼女が斧を回すと、刃が鎖状に分離し、
ミトラスの背中へと突き刺さった。
ミトラスはよろめき、ザルモクシスを放す。
彼の腹には、なおもミトラスの刃が突き立ったままだった。
「恥さらしね、ザルモクシス」
シャウシュカは吐き捨てる。
「子供に負ける哀れなネフィリム」
ザルモクシスは刃を引き抜いた。
それは短剣へと戻り、山中へ投げ捨てられる。
「……二度と、侮らぬ」
彼は低く唸った。
ミトラスは恐怖を感じていた。
(ソル……生きていてくれ。
我は、誓いを果たさねばならぬ)
決意を固め、ミトラスは突進する。
「ラシュヌ!」
だがザルモクシスは吼えた。
「ズラス・スカルメ(Zuras Skalme)(明るいナイフ)!」
鬼火が爆発し、エネルギーの奔流がミトラスを飲み込む。
「自分で言っただろう、正義が勝つと」
ザルモクシスは嘲笑う。
「我がアレス様への信仰は、貴様の揺らぐ正義など遥かに凌ぐ!」
ミトラスは激しい攻撃に晒され、追い詰められていく。
「近づかねば技を使えぬのだろう?」
ザルモクシスは笑った。
「もう一歩も進めまい」
「我はミトラス――誓約の神!」
ミトラスは咆哮した。
「そして、ミトラスは誓いを破らぬ!」
黄金のエネルギーの蛇が彼を包み、
眩い光が爆発する。
光が消えた時、
そこにいたのは、裸形の怪物だった。
顔は歪んだ獅子。
背には四枚の翼。
両手には黄金の鍵。
闇の力が全身から溢れている。
彼は、もはや言葉を発さなかった。
「吐き気のする怪物ね」
シャウシュカは吐き捨てる。
「それがアリマニウスだ」
ザルモクシスは厳かに言った。
「ミトラ教の秘儀において、最上位は獅子。
これがミトラスの究極形態だ」
「面白くなってきたじゃない」
シャウシュカは斧を回した。
ミトラスは鍵で次元門を開く。
そこから巨大な石が現れ、
さらにその石より、光に包まれたもう一人のミトラスが立ち上がった。
空は黄金に染まり、
王冠を戴いた男たちが虚ろな眼で祈る幻影が満ちる。
獅子のミトラスが咆哮し、
闇と光が融合する。
「影と光の対極……不安定すぎる!」
ザルモクシスが叫ぶ。
――遅すぎた。
力は衝突し、
周囲すべてを消し飛ばす大爆発が起きた。
遥か彼方で、エポナはその衝撃を感じたが、
振り返らなかった。
(ミトラス……信じてる)
だが――
シャウシュカは無傷で立っていた。
右の掌から煙が立ち昇っている。
「危険な力ね。認めるわ」
彼女は冷静に言った。
一方、ミトラスの変身は解け、
マナは尽き果てていた。
彼は力なく宙に浮かび、
立ったままの二神を見つめる。
(怪物だ……
奇跡でも起きなければ、助からぬ)
ザルモクシスとシャウシュカは斧を掲げる。
「間違った側についたな、小僧」
ザルモクシスが言った。
――振り下ろされる。
だが、何も起こらなかった。
ミトラスは愕然として目を開く。
二人の影が、彼の前に立っていた。
一人は、歪んだコリント式兜を被る女。
茶色の髪をなびかせ、
胸には蛇で織られたゴルゴンの顔を持つ衣。
黄金の鎧と赤褐色の外套。
もう一人は、白き隼の頭を戴く男。
高き円錐冠、黄金のエジプト鎧、白い翼、黄金の杖。
ミトラスは即座に悟った。
「……アテナ……ホルス……」
「遅れてすまないわ、ミトラス」
アテナは静かに言った。
「先に片付けるべきことがあったの」
「我が弟子たちの気配が消えている」
ホルスは低く唸る。
「おやおや……アテナとホルス本人とは」
シャウシュカが言いかけた――が、
その言葉は続かなかった。
二柱の神は、すでにシャウシュカとザルモクシスを貫いていた。
巨大な穴を穿たれ、二人のケレスは意識を失い、
山々へと落下していく。
「よくやったわ、ミトラス」
アテナは穏やかに微笑んだ。
「もう休みなさい。後は私たちが引き受ける」
注記
「ミトラ教の秘儀は、西暦1世紀から4世紀にかけて主にローマ帝国で実践されていた秘密の宗教カルトでした。特に兵士、商人、役人の間で人気がありました。」
「このカルトの中心は、光、契約、忠誠、そして宇宙の秩序と結びついたミトラス神でした。ミトラスはインド・イランの神ミトラに触発され、ローマ世界で変容しました。」
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「ここまで読んでいただきありがとうございます!次回もぜひお楽しみに。」
「翻訳に間違いがありましたら、お知らせください。」
「とても感謝しています。」




