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第93章 ― 遠き国・大和より来たりし神

「この物語は歴史と普遍的な神話に基づいたファンタジーです。」

空は、見えざる炎に焼かれたかのように深紅に染まり、

大地は激しく震え、山々さえ今にも崩れ落ちそうであった。

ロドリゴと数名のマラクは、狭い山岳回廊を飛行していた。

惑星の反対側でタニアが解き放つ凄まじい力により、

周囲の断崖は次々と砕け、崩落していく。

「ここを離れろ! 今すぐだ!」

ロドリゴは叫び、落石と裂ける山肌を必死に避けながら飛んだ。

(タニア……あの力……タニアのものだ。

 一体、彼女に何が……)

そのとき、空が暗転し、豪雨が降り始めた。

焼けつく熱は徐々に薄れ、視界は雨で遮られる。

――そしてロドリゴは感じ取った。

巨大な存在が、こちらへ近づいてくる。

ロドリゴは腕を上げ、マラクたちに停止を示した。

雨の向こうに現れた影は、背の高い男だった。

男は男性的な着物を纏い、

長い髪は荒々しく束ねられている。

左腰には、鞘に納められた刀。

「先へ行け」

ロドリゴはマラクたちに言った。

「この男は、俺が引き受ける」

「その必要は無い」

男は雨の中から静かに姿を現した。

「マラクどもは退いてよい。

 我は、ただ一つの目的のみで参った。」

男はロドリゴを見据え、低く告げる。

「――汝と刃を交えるためだ、竜神殿」

「本気か? 逃がす気か? 罠じゃないんだな?」

ロドリゴは警戒を解かずに問う。

「然りにござる、竜神殿」

「……え?

 悪いけど、その妙な話し方、よく分からないんだけど。」

男の口元が、わずかに緩んだ。

「これぞ我が故郷・高天原の言葉。

 人の世・大和を治めし天の国の語にて候。

 追放の身となれど、我は誇りと共に語り続ける。」

(聞いたこともない地名だ……)

ロドリゴは内心で呟いた。

「要するにこうだ」

男は続ける。

「マラクどもは立ち去ってよい。

 我が望むは、汝との一騎打ちのみ。

 失われし名誉を取り戻すためな」

「ロドリゴ様……本当に、ここに残ってよろしいのですか?」

マラクの一人が不安げに問う。

「大丈夫だ。

 アレオパゴスを見つけたら、必ず皆に知らせてくれ」

マラクたちは一礼し、去っていった。

男は約束通り、一歩も動かなかった。

「ところで……

 俺の名前はロドリゴだ。

 その“竜神殿”って呼び方、やめてくれ」

「承知した、ロドリゴ殿」

男は軽く一礼する。

「拙者は、須佐之男命でござる。

 以後、スサノオと呼ばれよ」

「スサノオ……

 あんた、悪い人には見えない。

 それなのに、どうしてアレスのために戦う?」

スサノオの声は、重く、厳粛になった。

「我は高天原にて大いなる不義を犯し、追放された。

 姉君――その国を治めし主は、

 人の世にて大業を成すまで、帰還を許さぬと仰せられた」

雨が、二人の間に落ち続ける。

「されば、戦神アレスに身を預け、

 戦功をもって贖いとせんとした。

 ――だが今、汝を見て悟った」

スサノオの眼が鋭く光る。

「竜神の首こそ、

 我が大和への帰路を開く鍵にて候」

「……俺が、竜神?」

ロドリゴは戸惑った。

「蛇神のことよ」

スサノオは淡々と答える。

「汝が、コンスの一撃を

 鱗にて弾いたのを、この目で見た。

 故に――汝を宿敵と定めた。

 死をもって、な」

「待ってくれ!

 確かに俺はタンニンで、蛇神かもしれない。

 でも、あんたみたいな奴と戦いたくない!

 話し合えないのか?」

スサノオは、ゆっくりと首を横に振った。

「否、否――ロドリゴ殿。

 我は徳高き神に非ず。

 その事実こそが、追放の理由よ」

彼は鞘に手をかける。

「また、戦を避けるは恥。

 神々の世において、

 竜神を討つは最高の誉れの一つ」

「私怨にあらず。

 そう心得よ」

(……選択肢は、ないな)

ロドリゴは拳に力を集めた。

「護符……いや、トーテマは使わぬのか?」

スサノオが不思議そうに尋ねる。

「持ってない。……悪いな」

「それは叶わぬ!」

スサノオは珍しく声を荒げた。

「ならば、我も護符を用いぬ。

 素手の戦にて応じよう。

 それこそが武の礼儀」

そう言って、スサノオは右手で刀を抜いた。

蒼く冷たい光を放つ、見事な太刀。

両手で柄を握り、数歩進む。

その姿が、ようやく雨の中で鮮明になる。

夜のように黒い髪。

鋭く細められた眼。

瞼には紅の隈取。

白地に赤縁の道着、赤い帯。

高歯の下駄が、地を踏みしめる。

ロドリゴも構えた。

腕に緑がかった鱗が広がり、

瞳は黄緑へと変わる。

髪が逆立ち、力が覚醒する。

「……行くぞ」

瞬間――

雷光のごとく、スサノオが斬りかかった。

ロドリゴは左腕で辛うじて受け止める。

刀は鱗に弾かれ、貫けない。

だが、止まらない。

消え――背後に現れ、再び斬撃。

ロドリゴは空中で身を捻り、跳び退く。

さらに追撃。

頭部を狙う一閃。

防ぎ、右拳で反撃――

だが、かわされる。

次の瞬間、

刀がロドリゴの胸を貫いた。

激痛。

白い力を拳に集める――が、

スサノオはすでに数歩離れた位置にいた。

「見事なり、ロドリゴ殿」

スサノオは静かに言う。

「されど、我が太刀――

 十拳剣に及ばず」

傷は癒えた。

だが、この戦いが長引けば、不利なのは明白だった。

雨が視界を奪う。

そのとき、刀身が蒼く輝いた。

スサノオは空を斬り、叫ぶ。

「水斬!」

三日月状の斬撃が、凄まじい速度で大地を裂く。

ロドリゴは辛うじてかわす――

だが、上空から再び来る。

胸を裂かれ、背後の地面が真っ二つに割れた。

ロドリゴは裂け目へ落下する。

スサノオは縁に降り立ち、

一振りで刀の血を払った。

次の瞬間、

ロドリゴは裂け目から飛び出す。

傷は再生していた――だが、今回は深刻だった。

「今度は俺の番だ!」

身体が星のように輝く。

「ライオス・デ・ルス(Raios de luz)(光弾)」!

白い光弾の雨――

だが、スサノオはすべてを正確に斬り払った。

再び突進。

今度は上空から。

蒼き矢となって、一直線。

避けられない。

刀が、ロドリゴの胸を完全に貫通した。

スサノオは背後に現れ、

再び刃を払う――

――ロドリゴの胸が、血飛沫を上げて爆ぜた。

「ここまで読んでいただきありがとうございます!次回もぜひお楽しみに。」

「翻訳に間違いがありましたら、お知らせください。」

「とても感謝しています。」

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