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エリオン ― 俺が神だと知った時、世界の終末が始まった  作者: エリオン


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第88章 ― 砂漠の中央に座する孤独な影

「この物語は歴史と普遍的な神話に基づいたファンタジーです。」

――火星、現在。

エポナ、ソル、ミトラス、そして生き残ったマラクたちの前に、広大な谷が広がっていた。

彼らはバジリスクを討ち果たしたが、石と化した仲間たちを救うことはできなかった。

ミトラスは、彼らを見捨てるという決断に深い苛立ちを覚えていた。

エポナもまた、胸を締めつけられる思いだった。

倒れた戦士たちは、アンピエルと同格のマラクだった。

たった一人を救うために、同じ仲間を置き去りにしたのだ。

――彼らにも、家族がいたのだろうか。

――友がいたのだろうか。

エポナの胸に渦巻いたのは、痛みと怒りだけだった。

谷は、果てしない赤砂の海のように広がっていた。

それはアフリカのサハラ砂漠を思わせたが、砂は赤く、空もまた赤に染まっていた。

活火山帯に近いため、熱気はさらに苛烈だった。

「谷に出たわね。

ということは、大きな山脈が近いはずよ」

エポナは景色を見渡しながら言った。

「この地形なら、奇襲は難しいだろう」

ミトラスが応じた。

「も、もし次元障壁がこんなに低くなければ……

せ、成層圏まで上がって、せ、正確に地形を把握できるのに……」

ソルは悔しそうに呟いた。

「それでも警戒を怠るな。

敵はいつ現れてもおかしくない」

ミトラスはそう命じ、前進を続けさせた。

「待って、ミトラス」

エポナが言った。

「強く感じるの。

アレオパゴス山は近い。

あの尾根を調べるべきよ」

彼女は地平線に連なる山々を指差した。

「……確かに。

アレオパゴスは、その方角だ」

落ち着いた男の声が答えた。

「誰だ!」

ミトラスが即座に問い詰める。

「名乗りが遅れて失礼した。

あまり喋るのは好きじゃなくてね」

一同が声の方を見ると、

砂漠の中央に、一人の男が座っていた。

全身を覆う暗色の衣。

顔は隠され、見えるのは目だけ。

黒い外套が砂嵐の風にはためいていた。

「貴様、何者だ」

ミトラスが問う。

「我はアル=カウム。

ナバテアの夜の神……

そしてアレス配下、ケレス第十位だ」

男は座ったまま答えた。

「……第十位?」

エポナが聞き返す。

「そうだ。

ケレスは序列で決まる。

数字が低いほど、強い」

そう言った瞬間――

男は、その場で眠りに落ちた。

「……なによ、この人」

エポナが呆然と呟く。

「か、か、からかわれてる……」

ソルが唸る。

アル=カウムは、びくりと目を覚ました。

「ああ……すまない。

よく眠ってしまう。

ナルコレプシーでね」

少し気まずそうに言う。

(……正直、強そうには見えない)

エポナはそう思った。

「エポナ、ソル。

マラクを連れて先へ行け。

こいつは俺が引き受ける」

ミトラスは湾曲した短剣を抜いた。

「いや。誰も行かせない」

アル=カウムは欠伸をしながら、ゆっくり立ち上がった。

「命令なんだ。

お前たちを止めろとね」

だがミトラスは待たなかった。

一気に踏み込み、刺突を放つ――

――その瞬間。

谷全体が、巨大な砂嵐に包まれた。

何も見えない。

「戦いは嫌いでね」

アル=カウムの声が嵐の中に響く。

「だから、全員塩の像にする。

恨みはない。

これも、この星の守護者としての仕事だ」

ミトラスは敵を探ったが、

姿も気配も掴めない。

手探りで斬りつけるが、空を切る。

――次の瞬間。

皮膚が硬化する感覚。

気づいた時には、

身体は一瞬で塩と化していた。

嵐が止む。

オルニスケムの全員が、

塩の彫像となって立っていた。

アル=カウムは再び欠伸をし、砂に座り込む。

「……さて。

これで終わりだ。

また眠れる」

――だが、その瞬間。

強烈な蹴りが彼を吹き飛ばした。

数メートル先の砂丘に叩きつけられ、

転がりながら立ち上がった彼の前にいたのは――

あの少女。

仲間たちが言っていたイギギ。

アレスが取るに足らぬと切り捨てた存在。

女神エポナ。

「あなたの手品、私には効かない」

エポナは強い意志を宿した笑みを浮かべた。

「トーテマを出しなさい。

本気で戦って。

仲間を元に戻さないなら――

その骨、全部蹴りで砕くわよ」

「……ほう。

イギギが我を脅すか」

アル=カウムはゆっくり立ち上がる。

「滑稽だ。

そして哀れだ」

「少なくとも、すぐ終わらせてやろう」

「トーテマを使わないの?」

エポナが問う。

「必要ない」

彼は両手を、催眠のように動かした。

するとエポナの足元の砂が変形し、

牙を持つ巨大な流砂の口となって彼女を呑み込んだ。

――だが。

エポナは容易く砂の怪物を粉砕し、

馬のエネルギーで形成された翼を広げて空へ舞い上がった。

「馬鹿な……

ただのイギギだろう!」

アル=カウムは苛立ちを露わにする。

エポナは空中で美しく回転し、

飛び蹴りを放った。

――顔面から砂丘へ叩き込む。

口と鼻から血が噴き出し、

ターバンを赤く染めた。

「ええ、私はイギギよ」

エポナは親指で自分を指した。

「でもね――

特別なの」

「私はエポナ。

馬の女神」

「その名、

しっかり覚えなさい」

注記


「ナバテア人はアラブ人の祖先である民族集団であり、アラビア北部とヨルダンに起源を持つ。」

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「ここまで読んでいただきありがとうございます!次回もぜひお楽しみに。」

「翻訳に間違いがありましたら、お知らせください。」

「とても感謝しています。」

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