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第77章 ― 戦い前の晩餐

「この物語は歴史と普遍的な神話に基づいたファンタジーです。やがて神道の神話も登場します」

ロドリゴとアンナとエポナは、すぐに部屋へ戻った。

馬の女神はソファにどさっと座り、にんまり笑いながら大きく伸びをした。

「ま、少なくとも戦いの前の残り時間は休めるよね。あたし、寝て過ごす。いい?」

金髪の女神はそう言って、あくびを噛み殺した。

だがアンナは扉のそばに立ったまま、黙っていた。心配そうな顔。

やがて深く息を吸い――決意したように口を開く。

「ルイ、エポナ……二人に話があるの」

アイルランドの女神が言った。

「何の話?」

ロドリゴは中央のテーブルから果物を取って尋ねた。

「ねえねえ、ラブラブさんたちの邪魔しちゃった?」

エポナがからかう。

「ふざけないで、エポナ。真面目な話だよ」

アンナは露骨にイラついていた。

「えー? 何? 戦いが怖いの?」

エポナが首をかしげる。

「……怖いっていうか……違う」

アンナは言葉を選んだ。

「タニアのことだろ?」

ロドリゴが言う。

「うん、ルイ。タニア、変なんだよ」

黒髪の女神は小さく頷いた。

「まだ俺のこと怒ってるのかな……」

ロドリゴはしょんぼりした。

「まだそれ引きずってるの? ロドリゴ」

エポナがぴしゃりと言った。

「訓練でみんな余裕なくて、一緒にいる時間もほとんどなかった。けどタニアは……もっとひどい。ずっと遠い。ずっと沈んでる。まるで自分の世界に閉じこもってるみたい」

アンナが続けた。

「何が起きてると思う?」

エポナが少し真顔になる。

「分かんない。長い付き合いだけど、こんなタニア見たことない。……でも、仮説はある」

アンナは言った。

「仮説?」

エポナが身を乗り出す。

「マスターがレルの中にスパイを入れてたよね。じゃあ逆に、レルがここにスパイを入れててもおかしくない」

アンナが言う。

「スパイ……誰か心当たりあるの?」

エポナが声を落として囁いた。

アンナはさらに声を落とし、二人に顔を近づけた。

「……ナブ。あいつ、スパイだと思う。タニアを“洗脳”してる」

「なんでナブ?」

エポナがさらに近づく。

「タニアの鬱を“治療”し始めてから、こうなった。しかも戦い直前に、都合よくいなくなった。罠を仕掛けてる可能性がある」

アンナは低い声で言った。

「ナブって、人の夢に入れるって聞いた。悪夢で操ってるんじゃない? この前、あたしが夜遅く戻ったら、タニアが起きてて……夢遊病みたいだった」

エポナが言う。

「あり得る。タニアの過去と、ずっと抱えてる病み……そこを脅して、嫌なことをさせようとしてるのかも」

アンナが言った。

「タニアの村とか?」

ロドリゴが小さく言う。

「レルが人間の街を壊すかな?」

エポナが眉をひそめる。

「本来はやらない。味方の反乱を招くから。でも……人間の軍隊にやらせるなら可能。しかもそれは、タニアでも止められない」

アンナは淡々と言った。

その時、扉が開いた。

タニアが入ってきて、リビングでひそひそ話している三人を見た。

疲れ切った、悲しそうな目。

タニアは何も言わず、そのまま寝室へ歩いていく。

「もし何か起きてるなら、パラスを出てから分かる。……二人とも、気をつけて」

アンナが言った。

「分かった」

「了解」

ロドリゴとエポナが答えた。


その日の午後、ロドリゴたちは宮殿の大食堂で“出陣前の見送りの晩餐”に招かれた。

タニアは「疲れたから」と言って来なかった。

卓には、羊と豚の料理。

ワイン、ミード、そして大量のパン。

席には、ホルスとエジプト装束の男が二人、ミトラス、ソル、アスクレピオス、ミルディン、エリンレ、カイン、ゾリャ、そしてロドリゴの知らない神やマラクが何人もいた。

そして――ナブはどこにもいない。

それがアンナとエポナの疑念をさらに強くした。

「はぁ……パンとワインで我慢するしかないか。ベジタリアンへの配慮ゼロじゃん!」

エポナがぶーぶー言う。

「前にも言ったでしょ、エポナ。庭に草いっぱいあるよ。そこらの茂み引っこ抜いて皿にのせなよ」

アンナが嫌味っぽく言う。

二人はいつもの調子で言い合いを始めた。

そこへ、ワインの杯を持ったアテナが入ってきた。

全員が見える高い場所に立つ。

「こうして皆が集まり、同じ食卓を囲めることを嬉しく思うわ」

女神は杯を高く掲げた。

全員がアテナを見上げる。

「明日、私たちはアレスの軍勢と戦う。リクビエルとサミヤザの死を弔い、遺された家族に正義を届けるために。

レルの悪鬼どもが、私たちを侮辱し、踏みにじることは許さない。

兄弟と友のために戦う時――私たちの価値と力を見せつける。

この星で、私たちは大きな家族。誰かが私たちの一人に手を出せば、相手には血で返す」

アテナは断言した。

歓声が上がり、杯が掲げられる。

「私は昔、ホルスと共にオルニスケムを作った。レルの暴政に抗うために。

そして今、あなたたちが私を選び、信を置いてくれたことに、心から感謝する」

アテナは熱を帯びて続ける。

「レルは人間世界に戦争と苦しみを作り、玉座の偽りのエルを肥やす。――私たちはそれを許さない。

明日、私たちは大きな一歩を踏み出す。アレスの首を、奴らの前に差し出すのよ」

さらに大歓声。

「そして、ここにいない仲間たちの任務にも乾杯を。

バルト海、ガーナ帝国、カネム、マクリア、イレ=イフェ、そして滅びたアクスム。

インド半島の諸王国、ブルガリア、マジャロルサーグ、ポーランド、ルーシの地。

まだレルの腐敗に飲み込まれていない地域、あるいはそれと戦っている地域――

前線で踏ん張る、愛しい兄弟たちへ。この杯も彼らのために」

全員が杯を上げ、叫ぶ。

「乾杯!」

「それから、新しい仲間にも乾杯を。アンナ、タニア、エポナ、そして――ロシナンテ。

明日、彼らはアレスと戦い、友をレルの手から奪い返す」

アテナは杯を上げたまま言った。

ロドリゴは顔を真っ赤にした。

また名前を間違えられた。

横でエポナが吹き出し、笑いすぎてワインを噴いた。

「そして最後に、ようやく私たちに加わると決めたアスガルドの神々へ。

今、彼らに同行しているベローナにも乾杯を」

また大歓声が食堂を揺らす。

「明日はオルニスケムの勝利の日。

そして、この多元宇宙に平和をもたらすための一歩。

――さあ、乾杯!!」

アテナは声の限りに叫んだ。

全員が杯を掲げ、声を揃える。

「乾杯!」


「ここまで読んでいただきありがとうございます!次回もぜひお楽しみに。」

「翻訳に間違いがありましたら、お知らせください。」

「とても感謝しています。」

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