第74章 ― アレスの十二ケレス
「この物語は歴史と神話をもとにしたファンタジーです。」
アレスは、鳥の紋章が刻まれた巨大な赤い印章のあるギリシャ式トガを、侍女であるニンフたちに着せられ、戦闘ホールへと向かった。
内部には、巨大な長方形のテーブルがあり、その最奥には異様な玉座が置かれていた。
アレスは挑戦的にそこへ腰を下ろす。
玉座は赤く染まり、背もたれの頂にはハゲワシが彫刻されていた。
テーブルには十二の席があり、七人の男と五人の女が座っていた。
その中には、先ほどアレスを迎えた男の姿もあった。
アレスが玉座に着くと、全員が彼を見た。
「貴様らをここへ集めた理由は一つだ」
戦神は低く言った。
「レルの提案を受け入れる。
あの二人の反逆女神――今やレルの厄介事となっている連中を殺す」
「アレス様」
彼の左隣、椅子に Ι(一) の刻印を持つ女神が口を開いた。
「取るに足らぬ女神二人を殺すために、“十二ケレス”を動員するなど――
まして私を呼ぶなど、この集団への侮辱ですわ」
彼女は赤い円錐形の王冠をかぶり、深紅のヴェールで頭部を覆っていた。
そこから黒い巻き毛がいくつか額へ垂れ落ちている。
細められた蒼い瞳は、嘲笑を含んだ美しさを帯びていた。
「アレス様に口答えするとは何様だ、メンルヴァ」
ΙΠ(四) の席に座る黒肌の男が低く唸った。
彼は銀のアフリカ式王冠を戴き、口元は銀の円錐で覆われている。
全身には銀の装飾とピアス、小さな円状の突起が浮き出ていた。
白一色の髪と眉、そして眼。
その存在は、むき出しの力そのものだった。
「メンルヴァの言うことも一理あるぜ、オグン」
ΔΙ(十一) の席の男が笑った。
「ま、俺は文句ねぇけどな。
あのクソ女神どもを斬首して、死体を犯すのが楽しみで仕方ねぇ」
彼は十六歳ほどの少年の姿をしていた。
青いエジプト王冠から編み込まれた一房の髪が垂れ、
褐色の肌、青を強調する化粧を施した目。
メナトの首飾りをつけ、鞭と杖のついた儀礼杖を持っている。
身体は不揃いな包帯で巻かれ、ミイラか重傷兵のようだった。
「黙りなさい、コンス。下劣な変態」
ΙΙΙ(三) の席の女神が吐き捨てた。
彼女はオリーブ色の肌に、編み込んだ茶髪。
額には黄金の額飾り、青い長衣に黄色の装飾、長い袖。
「なんでこんなガキを評議会に置いてるのか理解できないわ。
セラルディが苛立つのも当然よ」
ΠΙ(六) の席の女神が続けた。
赤い棘の王冠、挑発的な鎧姿。
背には美しい白い翼が広がり、紫の化粧に縁取られた紫眼。
淡い茶髪が波打って背へ落ちている。
「なら黙らせてみろよ、イシュタル。安っぽい娼婦が」
コンスは机を叩き、俺と吐き捨てた。
「その汚らしい首、恐怖で失禁する前に引きちぎってあげるわ」
イシュタルは冷たく返す。
「アレス様の御前で争うのはおやめください」
ΙΔ(九) の席の男が制止した。
浅黒い肌、長い黒髪と濃い顎鬚。
簡素な白いチュニック。
「相変わらずの腰巾着だな、ザルモクシス。
汚ぇトラキア人で、しかも情けねぇネフィリム。
アレス様に命拾いさせてもらったからって、媚び売りやがって」
コンスが嘲った。
アレスは右足で机を踏み鳴らした。
雷鳴のような音が響く。
「洗濯女の井戸端会議は終わりだ」
彼は唸る。
「奴らはもう単独ではない。
アテナの反乱勢力――オルニスケムに加わった」
「待ってください、アレス様。
我々がアテナと戦えと?」
オグンが問う。
「怖ぇのかよ?」
コンスが嗤う。
「あなたじゃアテナに二秒も持たないわ」
イシュタルは足を机に投げ出した。
「黙れ、コンス!!」
アレスが怒号を上げる。
コンスは腕を組み、そっぽを向いた。
「よく考えた。
アテナの首を取れば、我らの未来は開ける」
アレスは立ち上がり、説く。
「再びレルに受け入れられたいと思わぬか?
美食、召使い、巨大な宮殿、贅沢――
このクソ惑星では味わえぬすべてだ」
神々はざわめき、頷いた。
この星は地獄だった。
人間界の方が千倍マシだ。
「私はアテナと剣を交えたい。何世紀も待ったわ」
メンルヴァが唇を舐める。
「だが数では不利だ」
ΠΙΙ(七) の席の男が言った。
赤毛で褐色肌、編み込み髪。
金冠、裸の胸、青白の腰布。
「ここで戦う、マフレム。
この星は俺の星だ。力は跳ね上がる」
アレスは机を回る。
「賛成」
イシュタルが手を挙げる。
他も同意した。
「どうやっておびき寄せる?」
セラルディが問う。
「最高の餌をアナトからもらった。
あいつらの仲間――命を賭けた男をここに連れてきた」
アレスは嗤う。
「星の頂点に晒す。
あいつらは必ず来る。惨めだからな」
「完璧です!」
ザルモクシスが興奮する。
「十倍強ぇな、俺ら」
コンスが下卑た声で言う。
「その通りだ」
アレスは頷いた。
「妹のクソ女に伝えろ。
何人来ようが――叩き潰す」
「おおお!!」
全員が叫んだ。
「以上だ。解散」
ケレスたちは立ち上がった。
だが――
ΙΙ(二) の席の者だけが残った。
「何だ、グルジル?」
アレスが問う。
「一つ、我が主」
神は答える。
「タニトは幼少から知っている。
同じ神系ではないが――弱点を知っている」
彼は血まみれの牡牛の皮を被り、骨と臓物が突き出ていた。
悪臭を放ち、刺青だらけの体。
赤い眼が闇に光り、錆びた斧を握る。
「ほう……ベルベルの神だったな?」
アレスが問う。
「はい。我らはポエニの神々をよく知っております」
二柱は語り続けた。
その上空で、マルスの闇が深まっていった。
「ここまで読んでいただきありがとうございます!次回もぜひお楽しみに。」
「翻訳に間違いがありましたら、お知らせください。」
「とても感謝しています。」




