第71章 ― 次元を渡る者
「この物語は歴史と神話をもとにしたファンタジーです。」
その日一日中、ロドリゴたちは新たな師のもとで訓練に励んでいた。
訓練は過酷だったが、彼らは歯を食いしばって耐えた。アニピエルを一刻も早く救い出すためだ。アンナとタニアは、カッテレスと正面から戦えるほどまで力を高める必要があった。
洞窟の内部。
灼熱と異常な重力に耐えながら、アスクレピオスはロドリゴに瞑想を命じた。
それはヒンドゥーの神々が用いる修行法で、深い呼吸と同じ言葉を繰り返すマントラによって、クンダリーニと呼ばれる蛇のエネルギーを覚醒させる、密教的な瞑想だった。
アスクレピオスによれば、タニーンは背骨の中に力を蓄えている。
それはまるで、眠る蛇のようなエネルギーで、肉体的あるいは精神的な動揺によって顕現するという。
しかしヒンドゥーの神々は、その莫大な力を制御する術を発見していた。
儀式と鍛錬を積み重ねることで、理性を失うことなく、タニーンは本来の力へと到達できるのだ。
そのエネルギーの蛇――クンダリーニは、脊椎の最下部に宿る。
それは背中を上昇し、七つのチャクラを順に活性化していく。
ムーラダーラ、スヴァディシュターナ、マニプーラ、アナーハタ、ヴィシュッディ、アージュニャ、サハスラーラ。
力は脊椎の根に眠り、脳へと至ることで完全に目覚める。
(……こんな場所じゃ、集中できないよ……)
ロドリゴは心の中でそう思った。
ここはイビサの心地よい海辺とはまるで違う。だが耐えなければならない。
アニピエルへの強い繋がりを感じているわけではない。
それでも彼は戦うと決めていた。
アンナのために。エポナのために。
――そして、もう口を利いてくれなくなったタニアのためにも。
たとえ彼女に嫌われていようとも、彼は彼女のために戦うと決めた。
ロドリゴには、もう家族も友人もいなかった。
ここにいる者たちが、彼の新しい“家族”だった。
夜になり、全員が部屋へ戻った。
アンナとエポナは疲労困憊だった。
アイルランドの女神はすぐに浴室へ向かい、
エポナはソファに倒れ込むように眠りについた。
アンナはというと、浴槽の中でそのまま眠ってしまった。
それほどまでに、訓練は苛烈だったのだ。
ロドリゴとタニアは、食堂の卓でマラクたちが用意した食事をとっていた。
言葉のない、居心地の悪い沈黙が二人の間に流れる。
「……おやすみ、ロドリゴ」
そう言って、タニアは立ち上がり、浴室へ向かった。
「おやすみ」
ロドリゴは驚きながら答えた。
もう二度と話してもらえないと思っていたからだ。
その後、浴室の中からアンナとタニアの言い争う声が聞こえてきた。
タニアが入りたがっているのに、アンナが起き上がらないらしい。
ロドリゴも風呂に入りたかったが、さすがに二人がいる状態では無理だった。
結局、彼はベッドに横になり、そのまま眠りについた。
タニアは風呂を終えて部屋に戻り、ベッドに倒れ込んだ。
彼女だけは訓練をしていなかった。
ナブーと人生について話していただけだったが、まだ心を開くことはできなかった。
過去を語るには、心の抵抗があまりにも強すぎた。
それでも、考え込むうちに、彼女は深い眠りに落ちていった。
その夜、タニアはイビサの村の夢を見た。
笑顔で人々に挨拶する自分。
だが次の瞬間――雷のように、すべてが炎に包まれた。
足元には、村人たちの死体と、切断された頭部が転がっていた。
(夢よ……これは夢……)
そう思っても、目は覚めない。
死体たちが立ち上がり、彼女に近づいてくる。
「私たちを見捨てた」
彼らはそう言い、腕を伸ばし、彼女を締め付ける。
「……いや……行けない……許して……」
タニアは泣き叫ぶ。
次々と死体が重なり、息ができなくなる。
そのとき、這いずる赤子の死体たちが現れた。
泣き声が、彼女の理性を削っていく。
「やめて……やめて……目を覚まさせて!!」
声が枯れるまで叫び続けた。
「……許して……私が死ねばいい……」
そのとき――嘲るような女の声が響いた。
「その愚民のために命を捨てたいの? タニト」
声の主は見えない。
「救えるのよ。あなたが捨てた人間たちを。
私に頼みさえすればね」
「誰よ! 出てきなさい!」
タニアが叫ぶと、死体も燃える村も消え去った。
代わりに現れたのは、枯れ草の谷と、星に満ちた夜空。
そして――
空を飛ぶ一人の女の影が見えた。
円錐形の冠とマントを身にまとい、
顔は見えない。ただ、不気味な笑みだけが浮かんでいるように見えた。
タニアは、その笑みを――
本能的に、禍々しいと感じた。
「ここまで読んでいただきありがとうございます!次回もぜひお楽しみに。」
「翻訳に間違いがありましたら、お知らせください。」
「とても感謝しています。」




