表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/80

第70章 ― オルニスケム・後編

「この物語は歴史と神話をもとにしたファンタジーです。」

「皆、以前にも話したけれど――北欧の神々は私たちとの同盟に興味を示している。ただし条件がある。

ヴィンランドでオーディンを見つけることよ」

アテナが言った。

全員がうなずいた。

「し、失礼します、師匠」

アンナが口を挟んだ。

「デンマークの戦争は、どうなったの? それから……トールとロキは?」

「良い知らせよ。戦争はすでに終結したわ」

アテナは落ち着いた声で答える。

「ロキが支援した側がハラルド王を打ち破り、彼はアロスから逃亡した。流血は止まり、ロキはオーディンが力を回復できるよう、“信仰の砦”を築いた」

アンナは混乱した。

自分たちは戦争を止めるために介入したはずだった。

だが戦争は、彼女たちが何かを成す前に終わっていた。

そもそも内戦を始めたのは、レルに支援された王――ハラルド自身だった。

自分は間違った側で戦っていたのではないか。

そんな疑念が胸をよぎる。

だが、スルトの残虐さを思い出し、不快感が再び込み上げた。

(アテナ先輩の部下たちも……あの巨人みたいなの?)

アンナは思った。

彼女は、アテナの強烈な人間不信を知っている。

人間は弱く、本質的に暴力的で、だからこそ神による専制的支配が必要――アテナはそう考えていた。

――なぜ、そこまで人間にこだわるの?

昔、アンナがそう尋ねたことがある。

「よく分からないの、アナンド」

アテナは当時、そう答えた。

「神々が彼らを“エネルギー資源”として見るようになってから、私は逆に興味を持った。弱くて好戦的で……秩序を与えたくなったのよ」

「利用するのは残酷だと思った。でも、彼らが互いに殺し合うのを見るのも耐えられなかった。だから私は話し合い、より良い統治の形を作ろうとした」

「……けれど結局、私の民は蛮王の下に落ち、メソポタミア、ペルシャ、インドで何千人も死んだ。それでも人々は、彼を偉大な王として崇め続けた」

――アレクサンドロス大王。

アンナはそれが誰を指しているのか、すぐに分かった。

「だから私は、人間を信じるのをやめた。でも、それでも……彼らにとって最善を望んでいる。私たちと大差はない。

もし私たちが優れているなら、守るべきなのよ。――私たちからも、彼ら自身からも」

(この集団は……結局、アテナ先輩が人間を家畜のように支配したい欲望の延長なのかな)

アンナは一瞬そう思った。

(でも……レルに比べれば……少なくとも、今は私たちを殺そうとはしてない)

そう考え、彼女は現実に意識を戻した。

「私、置いてきた地域が心配……ヒスパニアとアイルランド」

タニアが言い、アンナの意識を引き戻した。

「アンナはあまり気にしてなかったけど、私はイビサを本気で守ってきたの」

「レルは、すでに代行者を配置している可能性が高いわ」

アテナが答えた。

「状況は、もう把握しているでしょう」

タニアは暗い表情で座り込んだ。

自分の民を見捨てたのではないか――その不安が胸を締めつける。

彼女はキリスト教徒とイスラム教徒の戦争も、ヴァイキングの襲撃も知っている。

直接介入はしなかったが、イビサの人々を気にかけていた。

島はヴァイキングにとっても、キリスト教勢力にとっても、あまりに脆弱だ。

(……考えるのはやめよう。人間に情を持っちゃダメ)

そう言い聞かせても、罪悪感は消えなかった。

「話を戻そう」

ホルスが割って入る。

「この子たちをヴィンランドに送り、オーディンを探させるのか?」

「いいえ」

アテナは即答した。

「この子たちは、まず友を救いたい。その友は現在レルに囚われている。

だから先に鍛える必要がある」

「では、僕がヴィンランドへ?」

ホルスが尋ねた。

「いいえ。その任務は、帰還直後にベローナへ任せたわ。だから彼女はいない」

「ホルス、あなたと私は、この子たちと共にレルへ向かう」

アテナは続けた。

「待て! レルに入るだと!? 正気か!」

ホルスは立ち上がり、叫んだ。

「あら、忘れてたわ。あなた、弱いものね」

アテナは嘲笑した。

「ベローナが戻るまで待ってれば?」

「僕の方が彼女より強い!」

ホルスは自分を指さして怒鳴る。

「じゃあ、何を怖がってるの?」

アテナは淡々と言った。

ホルスは黙って座り直した。

「レル内部で誰かを救うなど、割に合わない」

彼は苛立たしげに言う。

「よほど強力なアヌンナキなら話は別だが」

「いいえ。ただのマラクよ」

アテナは答えた。

「冗談だろ?」

ホルスが睨む。

「この子たちが提示した条件よ。私は約束を守る」

アテナの声は冷たかった。

ホルスはロドリゴを睨み、再びアテナを見た。

「……その少年が、君の言うほど特別であることを祈る」

そう言って視線を逸らした。

「アテナ様、レルに挑むのは危険すぎる」

ミルディンが言った。

「直接戦うつもりはないわ」

アテナは答える。

「レルも全面戦争は望んでいない。捕えたマラクを使って、私たちを引き寄せるでしょう」

「そんな単純な罠を?」

ミルディンが問う。

「ええ」

アテナは挑戦的に座り直した。

「私の諜報によれば、アレスがアナトと会合を重ねている」

「裏切り者の汚いネズミめ!」

ホルスが叫ぶ。

「アレスは臆病者よ。今頃、アナトの足に口づけして、レルへの復帰を乞うているでしょう」

アテナは吐き捨てるように言った。

「それが、マラクとどう関係する?」

エリンレが尋ねた。

「簡単だ」

ナブーが割り込む。

「アナトはアレスを使って、この子たちをおびき寄せる。そして殺させる。

成功すれば、アレスとその戦神団はレルに復帰できる」

「その通りよ、ナブー」

アテナは頷いた。

神々はざわめき、ロドリゴたちは息を詰めて聞いた。

「これは好機だ」

ナブーが言う。

「アレスを倒し、レルに我々の力を示せる」

「場所が漏れた瞬間に、潰す」

アテナは微笑んだ。

「それだけよ」

全員がうなずいた。

そしてアテナは、ロドリゴたちを真剣な目で見た。

「アンナちゃん。あなたはミルディンと共に行動しなさい」

「彼はウェールズの伝説王アーサーに仕えたネフィリム。

あなたの戦い――地上でのベレヌス戦を見て、聖属性への耐性が低すぎると分かった。克服しなさい」

「し、師匠……でもアンナはサターンで……運命的に――」

アンナが言いかける。

「タニアは月だったのに、太陽へ適応したでしょう?」

アテナは遮った。

「不可能なんて、私たちにはないの」

アンナは不安そうに、でも小さくうなずいた。

「教えがいのある女神だ」

ミルディンは穏やかに言った。

「ミトラ、ソル。あなたたちはエポナを鍛えなさい」

アテナが命じる。

「は、はい……女神様」

ソルは緊張気味に答えた。

(イケメンなのに、すごく不安そうね……)

エポナは内心そう思い、うなずいた。

「タニア」

アテナは彼女を見る。

「あなたには、力を抑え込んでいる“何か”がある。

正直に言って、あなたは私が見た以上に強い。

本来の力なら、ケルト神たちを簡単に倒せたはずよ」

タニアは視線を逸らした。

「心配しないで」

アテナは続ける。

「ナブーは心理の専門家よ。あなたは彼と治療を受けなさい。戦闘訓練は不要」

タニアは深く息を吸った。

「任せてください、女神様」

ナブーは自信満々に言った。

「彼女は必ず過去を乗り越えます」

「……分かった。やってみる」

タニアは答えた。

「最後に――ラミロ」

アテナはロドリゴを見る。

(また名前変えた……)

ロドリゴは思いつつ、うなずいた。

「あなたはアスクレピオスに任せる」

「彼はタニーン神の専門家。

トテマなしでも、意識を失わず力を制御できるようにする」

「お任せください、アテナ様」

アスクレピオスが言った。

「よろしい」

アテナは立ち上がる。

「では会議を終える。各自、準備に取りかかりなさい」

「ここまで読んでいただきありがとうございます!次回もぜひお楽しみに。」

「翻訳に間違いがありましたら、お知らせください。」

「とても感謝しています。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「ここまで読んでいただきありがとうございます!次回もぜひお楽しみに。」 「翻訳に間違いがありましたら、お知らせください。」 「とても感謝しています。」
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ