第66章 ― 惑星パラス
「この物語は歴史と神話をもとにしたファンタジーです。」
空は濃い紫色に染まり、ダイヤモンドの破片のような光が無数に瞬いていた。
熱気は凄まじく、すべてが異様に重く感じられ、呼吸さえ困難だった――まるで水中にいるかのようだ。
ロドリゴは、いつ体が破裂してもおかしくないような感覚に襲われ、その不快さに耐えきれそうになかった。
景色も決して希望を抱かせるものではなかった。
エポナに支えられながら空を進む中で見えたのは、植物がほとんど存在しない、乾ききった冷たい大地だった。
砂丘のない岩だらけの荒野――砂漠のようでいて、どこか違う。
地表には素朴な家屋が点在している。
彼らの頭上には巨大な赤い太陽が輝いていた。
これほど巨大な恒星を、ロドリゴは今まで見たことがなかった。
そのすぐ近くには、赤みがかった黄色の月が二つ浮かんでいる。
注意深く空を見上げると、ほとんど見えないが、空全体を覆うように揺らめくエネルギー障壁が存在していた。
「別の惑星に来るのは初めてよね、ロドリゴ?」
苦痛と違和感に顔を歪める少年を見て、エポナが尋ねた。
ロドリゴは黙って頷いた。
「この惑星の重力は地球の三倍もあるの。
世界そのものがずっと大きいからね。
普通の人間なら、この大気圧には耐えられず、即死するわ」
「それに気温も人間基準で八十度を超えている。
できるだけ早く慣れるしかないわね」
彼女は淡々と付け加えた。
遠くを見ると、真珠のような構造物が埋め込まれた山々が見えた。
あたり一面が平坦だっただけに、山の存在は異様に感じられた。
「あれが《銀の宮殿》よ。
あなたの部屋も、あの中にあるわ」
マラクは最も高い山の頂を指さした。
「ところで……この惑星パラスは、宇宙のどこにあるの?」
エポナが尋ねた。
「この惑星の位置は極秘です。
天図上で正確な座標を知っているのは、女神アテナ、ホルス、そして第三の指導者だけ」
案内していたマラクは答えた。
「我々は全員、女神アテナのラブリュスによる転移能力でここへ来ました」
「ラブリュス?」
エポナは首をかしげた。
「はい。
それはこの惑星を守るために使われる、女神アテナの伝説の武器です。
その力が発動すると、数兆にも及ぶ道を持つ迷宮が具現化し、
《オルニスケム》の指導者以外には正しい侵入経路が分からなくなります」
「オルニ……何?」
ロドリゴが尋ねた。
「それが、アテナの反乱組織の名前よ」
エポナが答えた。
「つまり、敵がこの惑星に侵入しようとしても、まず障壁に阻まれます。
仮に奇跡的に突破できたとしても、永遠にさまよう迷宮を越えねばなりません」
「すごいわね……」
エポナは感嘆した。
「今やこの惑星は、レルの命令を拒んだ神々やマラクたちの住処です。
正直、美しい世界とは言えませんが……なんとかやっています」
マラクはそう言った。
やがて、ロドリゴとエポナは宮殿へと辿り着いた。
それは白を基調とし、青の装飾が施された巨大な城だった。
ロドリゴは、その建築様式がトゥルトゥシャで見たアラブ風の要塞に似ていることに気づいた。
エメラルドグリーンの円形ドーム、そして祈りの言葉が響くミナレットを思わせる塔がいくつも立っている。
「……ここ、モスクなの?」
ロドリゴが尋ねた。
エポナは小さく笑った。
「違うわ、ロドリゴ。
これはギリシャ建築よ。
東ローマ帝国の都、コンスタンティノープルで似た構造を見ることができるわ」
「もちろん、アヤソフィアなんて、この建物に比べたら小さなものだけどね」
宮殿の入口には、多くのマラクが警備に立っていた。
空を覆うエネルギー障壁は、ここでは城壁の上に集中しているようだった。
門は巨大で、金の縁取りが施された杉材の大扉だった。
その両脇には、磨き上げられた純白の柱が立ち、ロドリゴはそこに自分の姿が映るのを見た。
「こちらが女神アテナのお客様です。
ただし、あと二名はまだ到着していません。
彼らはゼフォンが連れてくる予定です」
案内役のマラクが告げた。
門番の天使たちは一斉に礼をし、剣を地面に立て、ゆっくりと扉を開いた。
エポナとロドリゴは中へ入り、マラクに別れを告げた。
外の荒廃した世界とは対照的に、宮殿の庭園は息を呑むほど美しかった。
そこには、象牙のように白い女神アテナの像と、白い隼の像が立っていた。
噴水が流れ、周囲には豊かな植物と色とりどりの花や薔薇が咲き誇っている。
ロドリゴは気づいた――外で感じていた圧迫感が消えている。
まるで宮殿そのものが独自の重力を持っているかのようだった。
「綺麗でしょう、ロドリゴ?」
エポナは感嘆の声を上げた。
庭園はまるで森のように広大だった。
赤い屋根の白い家々は蔦と薔薇に覆われ、
マラクたちは歩き、読書し、ある者は鍛錬をしている。
鮮やかな蝶が舞い、馬や鹿、さらには熊までが穏やかに歩き回っていた。
透き通る川が庭を貫き、装飾された木橋が架かっている。
疑いようもなく、スペイン南部の庭園より遥かに美しかった。
やがて彼らは《美の門》と呼ばれる正門へ辿り着いた。
白と金で彩られ、頂には彫刻されたフクロウ、その下には隼と奇妙な鳥の姿があった。
マラクが門を開くと、二人は別の次元へと転移した。
そこは広大な白の大広間だった。
マラクたちが飛び交い、神々と思しき存在が回廊を歩いている。
象牙色のギリシャ柱に支えられた多層構造の空間。
中央には金の先端を持つ巨大な白いオベリスクがそびえていた。
一人のマラクが近づき、部屋へ案内すると告げた。
天使は上へと飛び、エポナは再びロドリゴを抱えて後に続いた。
五階にある杉材と金装飾の扉の前で、マラクは扉を開き、礼をして去っていった。
中は豪奢な部屋だった。
心地よいソファ、大きな机には果物と金の水差し、香炉が空気を満たしている。
紫のカーテンの奥には寝室があり、杉のベッドフレームと、王の寝床のように柔らかい寝具が備えられていた。
さらに、ほぼ青く見えるほど澄んだ水をたたえた巨大な浴場まである。
「人間の世界じゃ、こんなの見られないでしょう?」
エポナはソファに飛び乗り、果物を手にしながら言った。
ロドリゴは寝室へ入り、
北欧の怪物と戦った時の衣服が、修復され、清潔な状態で置かれているのを見つけた。
それに着替えると、ベッドに倒れ込み――そのまま深い眠りに落ちた。
一日のうちにあまりにも多くの感情を経験し、
疲労がついに彼を打ち負かしたのだった。
「ここまで読んでいただきありがとうございます!次回もぜひお楽しみに。」
「翻訳に間違いがありましたら、お知らせください。」
「とても感謝しています。」




