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第65章 ― 決意と疑念

「この物語は歴史と神話をもとにしたファンタジーです。」

アテナが部屋を出ていき、残された者たちは互いに視線を交わした。

タニアはまだ痛みが残る腹部を押さえながら、無理に立ち上がろうとする。

彼女は自分の腹を見下ろし、そこに刻まれた恐ろしいX字型の傷を確認した。

小さくため息をつき、何事もなかったかのように白い衣で体を覆う。

「……まあいいわ。次は絶対こんなことにはならない」

タニアはそう呟いた。

「ううん。アテナ先輩がいるなら、アンナは安心だよ」

アンナは即座に答えた。

ロドリゴは、ベッドに横たわる二人を見つめながら、ごくりと喉を鳴らした。

「ぼ、僕……殺されたりしないよね?」

彼は不安そうに尋ねた。

「状況が違えば、確実に殺してたわ」

タニアははっきり言った。

「でも今は違う。ただし覚えておきなさい。私はあなたを信用してない。

信頼を取り戻せるかどうかは、あなた次第よ」

ロドリゴは再び唾を飲み込んだ。

「ごめんね、ルイ……

アンナ、まだ整理できてないの……」

アンナは落ち着かない声で言った。

「信じたい気持ちはあるよ。でも……あなたの血が、いつか敵になるかもしれないのが怖いの……」

ロドリゴの胸が沈んだ。

「はぁ!? 冗談でしょ、アンナ!」

エポナが怒鳴った。

「この男、あんたのこと尊敬してるじゃない!

何者だろうが、どんな生まれだろうが関係ないでしょ!?

あんたが“生きる意味をもらった”って言ってたの、忘れたの!?」

「口出しするな!!」

タニアが怒鳴り返す。

「はぁ? 血だけ見て見下すわけ?

あんたたち、何様のつもりよ!!」

エポナも一歩も引かない。

「黙りなさい、エポナ」

タニアは吐き捨てるように言った。

「あなたは戦女神じゃない。ただの馬飼いよ。

タニーンがどれだけ危険か、何が分かるの?」

エポナの顔は怒りで真っ赤になり、

ロドリゴはゆっくりと後ずさった。

――もうここにいたくない。

「だったら自分で黙らせに来なさいよ、この赤ちゃん喰いクソ女!」

エポナが唾を吐くように言った。

「二人とも黙って!!」

アンナがベッドから起き上がり、叫んだ。

「いい加減にして!! 二人とも黙れぇぇ!!」

「ロドリゴは敵じゃないよ、タニア!」

アンナは怒りを込めて睨みつけた。

「アテナ先輩が、絶対にこの人の力を制御できるようにしてくれる!」

「それとエポナ……

もう一度タニアをそう呼んだら、アンナ、本気で首を引きちぎるから」

アンナは低く、殺気を帯びた声で言った。

空気が一瞬で重くなり、醜い緊張が部屋を満たした。

エポナはロドリゴの手を掴み、強引に扉へ引っ張った。

「仲間を信じられないなら、もう仲間じゃない。

あたしからすれば、二人とも地獄に落ちればいいわ」

彼女は吐き捨てた。

「行くわよ、ロドリゴ!」

そう叫び、少年を引きずるように部屋を出た。

アンナは顔を両手で覆い、悔しさに泣き出した。

タニアは白い天井を、無表情で見つめ続けていた。

「……僕って、死んだ方がいい怪物なのかな」

廊下を引きずられながら、ロドリゴはエポナに尋ねた。

「違うって言ってるでしょ!!

あんたはロドリゴ。あたしの友達よ!」

エポナは怒りを滲ませたまま答えた。

「でも……あの二人……」

ロドリゴは言葉を濁した。

「洗脳された差別主義者の言葉なんて聞く必要ないわ」

エポナは吐き捨てた。

「生まれてからずっと、あんたの種族が悪だって言われ続けてきたのよ。

今でもそれを信じてる。

レルの操り人形みたいなもんで、今の状況が見えてないの」

ロドリゴは何も言えなかった。

「本来なら喜ぶべきなのよ。

アンピエルは生きてる、アテナも味方。

どう考えても希望しかないのに……

あのバカどもは、あんたの血しか見てない」

エポナは苛立ちを隠さなかった。

そして彼女は立ち止まり、

強い意志を宿した緑の瞳でロドリゴを見つめた。

「ロドリゴ。あんたはいい人よ。

負けるって分かってても、あたしを助けた。

あたしは信じる。ずっと信じるわ」

ロドリゴは照れて、視線を逸らした。

「……アンナを差別主義者って言ったのは、ごめん」

エポナも少し気まずそうに言った。

「僕……昔から、違うってだけで馬鹿にされてきた」

ロドリゴは静かに話した。

「アンナやタニアと出会って、やっと居場所ができたと思った。

結局……僕が僕であることが、悪いんだと思う」

エポナは立ち止まった。

「二度と言うな、ロドリゴ。絶対に」

彼女は本気で怒っていた。

「あたしの兄弟は、あたしを殺そうとしたのよ。

気持ちは分かる。でも立ち止まるな。

あたしは、あんたが何者でも支える。分かった?」

ロドリゴは黙って頷いた。

廊下の突き当たりで、二人の天使が彼らを迎えた。

赤い胸当て、白いチュニック、折りたたまれた白い翼。

病院の外へ通じる扉の前に立っている。

そこからは赤黒く、不気味な光が漏れていた。

「あなた方は、アテナ様のお客様ですね?」

一人が尋ねた。エポナは頷く。

「もう二人いるけど、部屋に残ってるわ」

「なるほど。では居室まで案内します。ついてきてください」

左側の天使が言った。

金髪に、ほとんど黄金色の瞳をしていた。

天使は飛び立ち、エポナも続いた。

だがロドリゴは飛べない。

「仕方ないわね」

エポナは彼の腕を掴み、そのまま抱えて飛び上がった。

二人は病院を後にした。

ロドリゴは振り返る――

病院は、地面に埋め込まれた長方形の建物で、

巨大な洞窟の下に存在していた。

だが、それを眺めている暇はなかった。

エポナの飛行速度はあまりにも速く、

数秒後には洞窟そのものが視界から消えていた。

「ここまで読んでいただきありがとうございます!次回もぜひお楽しみに。」

「翻訳に間違いがありましたら、お知らせください。」

「とても感謝しています。」

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