第58章 — 北欧の神々対エサス・後編
「この物語は歴史と神話をもとにしたファンタジーです。」
アースガルズ──ユグドラシル。
怒りに歪んだ顔で歯を噛みしめていたエススの右腕は、
まるで逆再生のように肉体へと戻り、何事もなかったかのように繋がった。
「……いいだろう。死にたいなら、死を与えてやる」
エススはローブの中から“玉座に座る男”が刻まれた勲章を取り出した。
その瞬間、まばゆい光が全身を包み込む。
アースガルズの地面が裂け、巨大なヤドリギの木々が生えて天へと伸びていく。
空は割れ、光の柱が新たな姿のアヌンナキを照らした。
変化は僅かだったが──
太陽の王冠、金の腕輪と脚甲、そして光輪のような輝き。
右手には赤い宝石の付いた斧。柄はヤドリギの枝が絡み合っている。
「その方がいい。行くぞ」
テュールは迷わず突撃した。
しかしエススはただ指を一つ弾いただけだった。
無数のヤドリギの葉が弾丸のように飛び、
戦神テュールの全身を容赦なく貫いた。
「ぐっ……!」
テュールは崩れ落ちた。
「僕は地球の神だ」
エススは静かに言う。
「木々、植物、大地──すべては僕の指先一つで動く」
再び指を弾くと、フレイの前から木の槍が生え、
黄金の猪神を串刺しにした。
横へ指を払えば、ヤドリギの葉が旋回し、
フレイヤを毒の霧で包んで昏倒させた。
続けてエススは指を下へ向けた。
途端、天から巨大な木の柱が降り落ち、トールを押し潰そうとする。
「ぬぬぬ……これが……アヌンナキの……力かよ……!」
トールは歯を食いしばり、片腕で押し返そうとする。
「木を操る? ケルトの大物ってのはその程度か?
親父なら三秒で首を刎ねてたぜ」
エススは無言で指を横へ滑らせた。
無数のヤドリギの刃が出現し、トールの体を切り刻む。
しかしトールは笑っていた。
「そんなもんじゃ倒れねぇよ!」
その瞬間、トールの体に雷が爆発し、
空全体が嵐となって轟いた。
「アース神族は……限界を超えるんだよ!!」
トールは片腕だけで巨柱を支え、
もう片方の手でミョルニルを掴むと──
「どりゃあああッ!!」
雷の嵐と共に柱を粉砕した。
そしてエススに向けてハンマーを構えた。
「今度は……お前の番だァ!!」
ミョルニルが投げられ、回転しながら飛行。
エススは指を弾いて木の壁を次々形成したが──
すべて粉砕。
電撃の爆発がアースガルズの空を染めた。
ミョルニルが戻ると、
エススはよろめき、口から血を流しながら怒りに震えていた。
「……ならばこれだ」
エススが斧を掲げると、
ヤドリギの木々に醜悪な顔が生え、
口から太陽の光球を吐き出し始めた。
それは空で合体し、巨大な“太陽”となった。
「ボイルズゲッチド・ナ・グレイン(Boillsgeachd na grèine)(太陽光)」
それは落ちた。
トールは逃げられず、
爆発はアースガルズ全域を揺るがした。
雷神は倒れた。
「じゃ、次はボクの番かな~? ♬」
フレイが立ち上がる。
彼のイコルはまだ尽きていなかった。
光の神は太陽のように輝き──
「グリンブルスティ・フラムガンガ(Gullinbursti framganga)(グリンブルスティの突進)!!」
彗星のように突撃。
エススの肋骨が砕ける音が響き、
背骨まで折れる勢いで剣が突き刺さる。
怒ったエススは木の鞭でフレイを山へ叩きつけ、
山そのものを粉砕した。
「まったく……あのブタ兄、恥ずかしいにゃ……」
フレイヤが立ち上がる。
喉を裂いて毒霧を阻止していたため血に染まっていたが、
既に再生していた。
エススが槍の森を作るが、
フレイヤは猫の速さで全て回避。
「猫は狩りを失敗しにゃいんだよ~?」
彼女は槍で胸を貫き、
エススの斧の反撃もひらりと避けた。
「早く死ね、フレイヤ!オレの番だ!」
テュールが叫ぶ。
「その次はオレだ!」
トールも立ち上がる。
エススは理解した。
勝てない。
怒りの雄叫びと共に叫ぶ。
「ラサ・ナ・グレイン(Latha na grèine)(晴天の審判)!!」
太陽の衝撃波がアースガルズを焼き尽くす。
フレイヤたちも彼方へ吹き飛ばされた。
ウィッカーマンもろとも。
アースガルズもろとも。
「終わりだ……ふはははっ──」
しかし笑いは止まった。
瓦礫の中から聞こえたのは……
トールの文句だった。
「……また建て直しかよ。めんどくせぇ……」
「アースガルズって私の家じゃないにゃ」
フレイヤ。
「オレは片腕しかないから免除だろう」
テュール。
そして四柱が立ち上がる。
満身創痍、イコルは残りわずか。
それでも笑っていた。
「じゃあ……とどめはオレだ」
テュールが剣を構える。
「いや、オレだ」
トール。
「にゃぁ~、せっかくのチャンスにゃのに……」
フレイヤ。
「フレイヤちゃんはよく頑張ったね~ ♬」
フレイ。
テュールは空を斬った。
血のような大鎌が飛び、
エススの身体を深く切り裂く。
「戦場の血が多いほど、ティルフィングは強くなる」
エススの再生が止まった。
「この害虫どもがァァ!!
もう一度だ……ラサ・ナ・グレイン!!」
太陽の衝撃波が再び世界を焼いた。
アースガルズは廃墟と化す。
エススが生存者を探して辺りを見回すと──
そこに“奴”が立っていた。
血まみれ、左腕もなく、
瀕死のはずなのに、笑っている。
トール。
「言ったろ……お前みたいな雑魚じゃ、俺たちには勝てねぇ……」
エススは怯えて木の盾を作ろうとしたが──
トールが叫ぶ。
「ブレグダ・ウップ・トゥーンラズ(Bregda upp Thunraz)(雷霆の斬撃)!!」
稲妻が世界を裂き、ミョルニルがエススを叩き潰した。
爆光がアースガルズ全域を照らし──
光が消えた時、エススは巨大なクレーターの中心で倒れていた。
レルがアースガルズを操ろうとした未来は、
雷神の拳で砕かれた。
そしてトールはそのまま、顔から地面に倒れ、気絶した。
「ここまで読んでいただきありがとうございます!次回もぜひお楽しみに。」
「翻訳に間違いがありましたら、お知らせください。」
「とても感謝しています。」




