第52章 ― 蛇の力
「この物語は歴史と神話をもとにしたファンタジーです。」
「ル……ルイィィ!!」
アンナが涙を散らして飛び込もうとした。
だが蛇は毒の霧を吐き散らし、
アンナは一度退かざるを得なかった。
ロドリゴの身体には、
吸い込んだ毒だけではなく、
牙から直接血管へ流れ込んだ猛毒が巡り始めていた。
人間なら即死。
神でも耐えられない量。
「ルイ!! ルイ!!! やだぁぁ!!」
アンナは泣き叫び、
毒雲へ飛び込もうとする。
その腕を、アテナが掴んだ。
「アンナちゃん。衝動で死ぬような真似は、私が許さないわ」
「離して!! アテナ先輩なんて知らない!! 離せって言ってるの!!
行かせてよ!! ルイが死んじゃうの!!
離さないなら……アテナ先輩でも斬るよ!!」
狂気じみた目で睨むアンナを、
アテナは静かに、しかし強く押さえた。
——そして。
毒霧が少しずつ薄れていくと、
そこに広がる光景に全員が凍りついた。
ロドリゴが
ヨルムンガンドの頭を抱え込み——
怪物のような咆哮と共に、
その巨蛇を持ち上げ、
地面へ叩きつけたのだ。
ズガァアアアン!!
貫通していた牙は砕け、
ロドリゴは絶叫しながら
自分の体からその破片を引きちぎった。
「な……何だあの小僧は!!」
ロキが悲鳴を上げた。
タニアは震え、言葉を失う。
訓練中に一度だけ見た、
“あの時”のロドリゴの狂気。
だが今は——
比べ物にならなかった。
ロドリゴの緑の瞳は細く裂け、
蛇のように縦長のスリットへ変わり、
肌は青白く、
背中は獣のようにうねり、
完全に意識を失っていた。
彼は——
毒で死んでいるのではなく、
毒を“栄養として吸収している”。
アテナが低く笑った。
「責められないわ。
あなたたちが彼の本質に気づかなかったのも当然よ。
だって——あなたたちは、
“本物のタンニン”と戦ったことがないんだもの」
「彼は“蛇の一族”。
それも……
聖なるの力を扱える、異常個体」
「こんなの、数百年ぶりに見るわ」
アテナはうっとりしたように微笑んだ。
「ロドリゴは……私がもらう」
「だ、だめだ……!」
タニアが震え声で叫ぶ。
「そんな怪物、生かしちゃいけない! 今のうちに殺すしか——!」
アンナは声を失っていた。
守って、教えて、信じて——
ずっと一緒にいた少年が。
“殺すべき怪物”かもしれない。
胸が裂けるような痛みに、
彼女は吐きそうになった。
エポナは泣きながら首を振った。
「あの子は……ロドリゴは……私を守ったの!
何回も命を賭けてくれたのに!
殺すなんて、絶対に許さない!!」
だがその間にも、
ロドリゴの体はさらに変異し、
蛇の毒を吸い込み続け、
怪物のような呼吸をし始めた。
ヨルムンガンドも、
ゆっくり再び頭を持ち上げようとしていた。
タニアは燃える爪を構えた。
「……もうだめだ。殺すしかない」
その瞬間。
アテナの槍がタニアの喉元に触れた。
「——私は、
ロドリゴを殺させない」
アテナの声は氷のように冷たく、
そして絶対だった。
「もし誰かが彼を殺そうとするなら……
その場であなたたちを殺すわ」
タニアは、完全に凍りついた。
「ここまで読んでいただきありがとうございます!次回もぜひお楽しみに。」
「翻訳に間違いがありましたら、お知らせください。」
「とても感謝しています。」




