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第49章 ― モリガン対フェンリル

「この物語は歴史と神話をもとにしたファンタジーです。」

「へぇ……なかなか面白い剣を持ってるじゃないか、モリガン」

ロキの声が、相変わらず姿を見せずに響く。

アナは鼻で笑い、剣を空へと掲げた。

「この剣はディルンウィン。かつてブリトン王リデールフが所持していたウェールズの聖剣よ。

トテマを使えば、私は複雑な聖遺物——伝説級の武具でさえ再現できるの」

そして低く、苛立ちを隠しもせず言い放った。

「……それとね。もう一度その名前で呼んだら、舌を引きちぎるわよ、クズ」

漆黒の翼が広がり、アナは宙へ舞い上がる。

彼女が振るった斬撃は空を切り裂く衝撃波となり、フェンリルの鼻面を深く裂いた。

巨狼は山々を震わせるほどの咆哮をあげる。

フェンリルは口からエネルギー光線を放つが、アナは容易くかわした。

「そんなもん?退屈ね」

彼女は瞬時に距離を詰め、巨大な牙の一本を切り飛ばす。

巨狼は大振りの前脚で押し潰そうとするが、アナの翼は盾へと変形した。

「スキア・ドルカ(Sciath dorcha)(闇の盾)」

衝撃は完全に弾かれた。

「この翼はダークマター製。形態なんて、私の思い通りよ」

翼は一度砕け散り、数千の羽根となって空中に舞い上がった。

次の瞬間、それらはすべて短剣のように変化し、雨のようにフェンリルへ突き刺さる。

巨狼は悲鳴をあげ、雪原を抉った。

羽根は再び翼となってアナの背に戻る。

「これがオーディンを殺す運命の獣?……ラグナロクなんて、レルが北欧の神々を脅すための与太話だったのね」

彼女は心底失望したように言った。

「おとぎ話だとしても、神も人も怯えるなら価値はあるがね」

ロキが応じる。

「だが……その傲慢、うちの息子をナメすぎだよ」

フェンリルがガバッと噛みつく。

だがアナには触れていない——はずだった。

次の瞬間、アナの体が見えない牙に引き裂かれ、雪へ叩き落とされた。

「なっ……何よ今の……?見えなかった……っ」

立ち上がると同時に、傷はゆっくりと再生し始める。

再びフェンリルが“空を”噛む。

だがそれだけで、アナの肉体はまたもズタズタに裂け、血が噴き出した。

「うちのフェンリルはね、“視界に入ったもの”を裂けるんだよ」

ロキの声が木霊する。

「……はぁ……もう仕方ないわね。あれを使うしかないじゃない」

アナは叫ぶ。

「タヴィシュ・バンリオン(Taibhse banríon)(幽鬼の女王)!!」

アナの身体は爆ぜ、数百のカラスへと分裂した。

不可視の噛みつきは空振りし、カラスたちは霧のように散っていく。

捕まった鳥は羽根となって霧散し、群れはフェンリルへ襲いかかった。

無数の刃の嵐となり、巨狼の全身を切り裂いていく。

やがて群れは一点に収束し、フェンリルの目の前でアナの形へと戻った。

彼女は無慈悲な一撃で、もう一本の牙と上顎の一部を切断した。

「言ったでしょ。大獣ごときで“戦の女神”に勝てるわけないの」

フェンリルは狂ったように動き始め、首がいくつもあるような錯覚を起こすほど高速で動く。

光線を乱射するが、アナは瞬間移動のようにすり抜ける。

翼から刃が再出現し、フェンリルの両目へ突き刺さった。

山が割れるほどの悲鳴が響く。

「さ、次は——その首よ」

アナは両手で剣を構え、止めを刺そうとした。

だがフェンリルは一瞬で間合いを詰め、今度は実体の顎でアナを噛み砕いた。

「っ……!!」

アナはもがき、必死に抜け出そうとするが、巨狼の力は凶悪そのもの。

(カラスに戻って逃げるしか——!)

そう思った瞬間、フェンリルは大口を開き、

破壊光線をアナへ叩き込んだ。

アナは地面へ頭から叩き落とされる。

立ち上がった時、彼女は気づいた。

脚が一本、食いちぎられていた。

……そして再生していない。

「……強い……認めるわ。文句なしに強い……」

彼女はディルンウィンを杖代わりにしながら呟いた。


「ここまで読んでいただきありがとうございます!次回もぜひお楽しみに。」

「翻訳に間違いがありましたら、お知らせください。」

「とても感謝しています。」


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