第48章 ― タニト対スルト・後編
「この物語は歴史と神話をもとにしたファンタジーです。」
巨人は再び立ち上がった。
その顔には、かつて目があった場所に血の詰まった穴が二つ開き、額にはᛒのルーンが燃えるように刻まれていた。
口元からは泡と涎が垂れ、スルトはすでに思考能力を失っていた。
拳に炎をまとわせ、タニアへ殴りかかる。
タニアはそれを受け止めたが、力で押されて後方へ吹き飛ばされた。
スルトは獣のような咆哮を上げ、再び突進してくる。
(こいつ……神力が思った以上に跳ね上がってる……!)
タニアは必死に回避と防御を繰り返しながら考える。
スルトが再び振り下ろす。
タニアはかわして蹴りを入れようとするが——効かない。
巨人は彼女の足を掴み、そのまま地面へ叩きつけた。
とどめを刺そうと腕を振り上げた瞬間、タニアは転がりながら回避する。
彼女は爪を伸ばし、腹部めがけて飛び込んだ。
「ツェンプ・ダラク(Tsemp Dalaq)(炎爪)!!」
嵐のような連撃がスルトの腹部を切り裂く。
何百という斬撃が肉と鎧を切り裂いた——だが、スルトは痛みを感じていない。
両手でタニアを掴み、虫のように握り潰そうとする。
「……っ!!」
全身の力を込めて腕をこじ開け、タニアは後方へバク転して距離を取る。
その瞬間、重大なことに気づいた。
(傷が……再生してない……?
そうかこいつ、上げたのは“神力”だけ。マンナーもイコルも低いまま……!)
タニアは両腕を天へ掲げ、掌を合わせる。
拳の間に巨大な火球が生まれた。
「ガラド・エシュ・マート(Galad esh maat)(火の玉百番)!!」
振り下ろすと同時に、極大の火球が放たれた。
大地が割れるほどの爆発。
煙が晴れたとき、スルトの胸と腹は半分以上消し飛んでいた。
——それでも巨人は立っていた。
スルトは全身を炎で覆い、身体ごとぶつかってくる。
タニアは膝をつき、そこへ隕石のように巨体が降りかかる。
両手で受け止めたが、衝撃が地面を深くえぐっていく。
タニアは叫びながら体をひねり、スルトを横へ吹き飛ばした。
大爆発が起き、大地が揺れる。
「腕の腱……! くそ、あいつに切られた……!」
タニアは神力を解放し、周囲の大地を蒸発させた。
石は溶け、熱で空気が歪む。
イコルが彼女の切れた腱を修復し、手の火傷も一瞬で再生する。
そのとき、スルトが剣を拾い、狂ったように笑い始めた。
(早く仕留めないと……ロドリゴとエポナのところへ戻れない……!)
スルトは剣を空へ掲げた。
刃が赤く沸騰するように脈動し、真紅の光を放つ。
タニアはその攻撃を覚えていた——先ほどの火炎光線。
だが今は桁違いに強い。
タニアは天へ向けて両手を広げ、叫んだ。
「ヤレジ・エドム(Yareh Edom)(赤月)!!」
頭上に血のような紅い三日月が出現する。
「今日は“太陽神”が堕ちる日よ……“月”に焼かれてね」
スルトが火炎光線を放つ。
同時にタニアは赤月を掴み、円盤のように投げつけた。
赤月は光線を真っ二つに裂き、
そのままスルトの胸へ突き刺さった。
巨人は本能的に引き剥がそうとするが——
赤月はさらに輝きを増し、手を焼き払う。
「終わりよ、クソ巨人」
次の瞬間、世界が白に染まった。
山脈を数百吹き飛ばす規模の神爆発が発生し、
タニアは片腕で顔を覆いながら衝撃を耐えた。
煙が晴れたとき——
巨大なクレーターと、まっすぐ立ったままのスルトの“脚だけ”が残っていた。
残りは完全に消滅していた。
異界が砕け、世界が元に戻る。
「……昨日死んだ人たちも、これでようやく眠れるわね。
さ、ロドリゴを探しに行くか」
タニアは息を吐き、歩き出した。
「ここまで読んでいただきありがとうございます!次回もぜひお楽しみに。」
「翻訳に間違いがありましたら、お知らせください。」
「とても感謝しています。」




