第44章 ― ロキとの遭遇
「この物語は歴史と神話をもとにしたファンタジーです。」
アーロスへ向けて二時間ほど進んだ頃、
ロドリゴたちはついにスヴェン軍に包囲された街へ到着した。
空からは矢の雨、
凍える寒さの中で炎が戦場を舐め回し、
槍と矢に貫かれた死体が無数に転がっていた。
丘の上から見下ろすその光景は――大量虐殺そのものだった。
アーロスの街は、ヨーロッパの石造りとは違う、
削った丸太と木材で作られた城壁に守られていた。
その上から弓兵たちが容赦なく矢を放ち、スヴェン軍を寄せつけない。
本来、包囲戦とは退屈なものだ。
外側に陣を張り、補給を断ち、飢えや病気で守備側が崩れるのを待つ。
――だがスヴェンは違った。
ロキの助言に従い、迅速な勝利だけを求めていた。
彼の敵兵たちは、殺されるだけではない。
捕虜は次々と絞首刑にされ、陣営の周囲に吊るされた。
戦場に立つ木々には死体がぶら下がり、
ハエとカラスが群がっていた。
スヴェン王子は、完全なヴァイキング将軍の装いだった。
銀の兜は目元まで覆い、鎖帷子、そして紫のマント――
紫は東ローマ帝国コンスタンティノープルからの高価な輸入品だ。
彼の周りにも同じ武装をしたヴァイキングが立ち並ぶ。
兜には権威を示す翼の意匠が彫られていた。
その背後には、黒馬に跨がる灰色の法衣の男――ロキがいた。
「到着したわね」
アテナが言った。
「ただし私は戦闘には介入しないわ。
お願いは一つ――ロキを殺さないこと。
まず私に話をさせて」
「なぜ戦わないんですか、師匠?」
アナが尋ねる。
「あなたたちの戦闘力を見たいのよ。分かるでしょ?」
アテナは涼しく微笑む。
「私はあの巨人を見つけてぶっ殺すだけだ」
タニアが吐き捨てる。
「私も……今回は絶対にしくじらないわ!」
エポナが拳を握った。
アナはロドリゴを見つめた。
「ルイ……師匠と一緒にいて。私たちが片付けるから」
「僕も戦うよ」
ロドリゴは強く答えた。
「ルイ、あなたにはトテマがないの! 戦わせられない!」
アナは怒ったように言い、ロドリゴは胸が痛んだ。
――アナが自分を守るために命まで捨てようとした記憶が蘇った。
「戦わせてあげなさい」
アテナが静かに割って入った。
「無理です、師匠!」
アナが叫ぶ。
「アナ。戦わないと自分の限界は分からない。
それに……怒ってるのは君だけじゃない」
ロドリゴはまっすぐアナを見た。
「死なねぇよ、そいつは。甘やかすのやめろ」
タニアが言う。
「ロドリゴを信じてあげなよ〜」
エポナも優しく言った。
アナは歯を食いしばり、背を向けた。
「……好きにすればいい」
アテナは馬から降り、指を鳴らして
机と椅子とワインを召喚し、優雅に座った。
「じゃ、頑張ってね。ここから全部見てるわよ〜」
「行くぞ」
タニアが言う。
ロドリゴとエポナも頷いた。
四人は丘を降り、ロキを探した――
しかし気配がない。
ロキは“神の気配”を完璧に隠せる。人間にも化けられる。
切断された手足、転がる死体、血の臭い――
ロドリゴの村を焼いた光景が脳裏に蘇り、吐き気がこみ上げた。
「人間って……本当にこれしかできないのか……?」
その時、兵士たちが彼らを見つけた。
武器を構え、デンマーク語で叫ぶ。
「お前たち、ここで何をしている!?」
ロドリゴたちは返事ができない。
言語がわからなかった。
「ローマ帝国のスパイだ! 殺せ!」
兵士たちが突撃してきた――
その時、
鋭い声が戦場の喧騒を切り裂いた。
黒馬に乗った灰衣の男が現れた。
その声は――ロキだった。
「そいつらは私が用がある。下がれ」
兵士たちは一瞬で従った。
「ここまで読んでいただきありがとうございます!次回もぜひお楽しみに。」
「翻訳に間違いがありましたら、お知らせください。」
「とても感謝しています。」




