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第40章 — 神エルの娘

「この物語は歴史と神話をもとにしたファンタジーです。」

タニアは地面に崩れ落ち、両手で頭を押さえながら叫んだ。

「ここが、あたしたちが死ぬはずの場所なんですね……? 

あのアナクソが選んだ墓場……!」

彼女は顔を伏せたまま、追い詰められた雌獅子のような咆哮を上げた。

その瞬間、彼女の力が爆発し、大地が揺れた。

空が血のように赤く染まり、炎が全身を包んだ。

「やめて、タニア! そんなことしても意味はありません!」

ア ンナは叫んだ。

タニアは再び黙り込み、ゆっくりと顔を上げた。

「その通りですよ、タニト。

あなたたち二人は、わたしが介入しなければここで死んでいたでしょうね。

レルは、わたしがこの件を知るとは思っていませんでしたから」

アテナは静かに言った。

「教えてください、アテナ先輩。全部です」

アンナは一切迷わず言った。

「……あいつら、わたしの兄弟なんでしょう?」

エポナが言った。

皆が息を呑んだ。

アテナだけは、最初から知っていたように平然としていた。

「その通りですよ」

アテナは頷いた。

「レルはケルトの神々を動員しました。

目的は――北欧の神々の打倒。

彼らはレルの“完全なる一神教”の拡大に最後まで抵抗していましたからね」

アテナは三人の横に腰を下ろした。

「いったい何が起きているんですか?」

アンナが尋ねる。

「詳細な時期は分かりません。

けれど――“あるエロヒム”がオーディンを殺したようです」

その場の空気が凍りついた。

「それでアナトはケルトの神々を呼び出し、

“ユグドラシルをやる代わりに北欧をキリスト教化しろ”と持ちかけた。

いま北欧の神々は封印され、ビフレストも使えない状態です」

沈黙。

「その“エロヒム”はロキも解放しました。

ロキに与えた使命は――あなたたち二人を殺すこと。

成功すれば、ロキを北欧の新たなアヌンナキにすると」

さらにアテナは続けた。

「でもね……ロキは知らない。

明日、ケルトの神々がここに来てロキを殺すってことを。

“あなたたちを弔うため”という名目でね。

ついでに“エポナという妹の死の復讐”としても」

エポナの身体が強張った。

「同時に、ケルトの神々はアスガルド内部も制圧するつもりです。

その“エロヒム”は次元を自由に移動できますから、

すでにアスガルドの王宮の近くに潜んでいても不思議ではありません。

トールも、ティールも……誰も手出しできません」

「エプちゃん……知ってたの?」

ロドリゴが尋ねると。

「知らねぇよ。

兄貴たちから任務のことだけ聞かされて、

『アンナを見つけて一緒に任務をやれ』って言われただけだ。

なんで“強い神たち”じゃなくてわたしなのか聞いたら、

『強敵に備えている』って言われて……

今なら意味が分かる」

タニアが眉を寄せた。

「そういえば……フランク領に入ったのに、

ケルトのグリゴリ“トゥータティス”は現れませんでしたね」

「当然ですよ」

アテナが答えた。

「わたしは“トゥータティスがその地域を監視していない”と知っていましたから。

彼は仲間たちと一緒にロキ殺しの準備中です」

タニアは悔しげに唇を噛む。

「でも……トテマがなければ、勝てません」

彼女は力なく言った。

「さっきの巨人みたいなゴミにすら殺されかけたんですよ……屈辱です」

「アンピエルを信じましょう」

アンナは言う。

「十五日ですよ、アンナ。

今頃あいつ、クソアナトの城の前で十字架に貼り付けられてるかもしれないんですよ!」

タニアは叫んだ。

アテナは微笑んだ。

「運が良いですね。

今日、レルの“トテマ倉庫”で大騒ぎがあったと聞きました。

原因は分かりませんが……あなたたちのマラクが関係している可能性はあります。

まあ……“ただの天使”がレルの防衛網を突破して

トテマを盗み、地上に帰還するなんて……普通は不可能ですが」

「アンピエルです! 絶対そうです!」

アンナは目を輝かせて叫んだ。

エポナもうなずく。

タニアも、そして僕も――頷いた。

アテナはゆっくりと立ち上がった。

「では、わたしは戻ります。

約束は果たしましたし、これ以上は――組織の問題になりますからね。

あのバカホルスに怒られますよ、また」

「待って、アテナ先輩!」

アンナが駆け寄った。

「アンナちゃん……?」

「わたしを……アテナ先輩のところに入れてください!

お願いです!」

「アンナ!」

タニアが叫んだ。

「レルなんて、もう嫌です!

わたしを殺そうとして、人間の世界を宗教でめちゃくちゃにして……

アテナ先輩は違う。

アンナは彼女に同意しないますが、アテナ先輩なりに、人間を助けようとしてる!」

「だったら僕も行きます」

ロドリゴは言った。

エポナとタニアは呆然とした。

アテナはにこりと笑い、しかし表情を引き締めた。

「エポナ、タニト――いえ、タニア。

あなたたちにも、最後に伝えておくべきことがあります」

二人の女神が身構える。

「“エル様は死んでいます”

そして――“今その玉座に座っているのは別の存在です”」

空気が揺れた。

「どういう意味ですか?」

タニアが低く問う。

「最近の話ではありません。

ずっと昔――おそらくエル様が人前に現れなくなった頃です。

あの玉座にいるのは、

人間が“ヤハウェ”とか“アッラー”と呼んでいる存在です」

ロドリゴは喉を鳴らした。

神が……悪役?

「一神教……それ自体が“他を認めない”思想です。

昔の人間は違いました。

わたしを信仰しながら、イシスもミトラスもケルトの神々も崇めていた。

文化が混ざり合い、争いも減った」

エポナは静かに頷いた。

「でも今は……“唯一の神”の名のもとに行われる殺戮が

すべて一つの存在に吸い上げられている。

レルは“そんな神は存在しない”と言った……

ですが――もし存在したら?」

沈黙。

アテナはタニアを見た。

「タニア。

あなたは“エル様の末娘”でしょう?」

ロドリゴとアンナとエポナは固まった。

「知っていたんですか……」

タニアは言った。

「でも、父には会ったことがありません。

わたしにとって意味はありません。

わたしはただの兵士。命じられた場所で戦うだけ。

人間なんてどうでもいい。

レルがどうなろうと、父がどうなろうと……

わたしには関係ありません!」

「タニア……やめて」

アンナが呟いた。

「あなたに何が分かるのよ!?」

タニアは叫ぶ。

アンナは涙を浮かべながら叫んだ。

「アンナは知ってるよ!

奴隷を助けた時のあなたの笑顔。

あなたが大切にしてたネックレスを、人間を救うために手放したこと。

あなたが自分の文明を見捨てた理由――

“子供の犠牲”が耐えられなかったから。

夜、泣き叫びながら眠れないあなたを……

アンナはずっと見てた!」

タニアは崩れ落ち、地面を殴った。

「やめて……やめてよ……!」

アンナは優しく抱きしめた。

「タニアは……人間が大好きなんだよ。

だからもう、自分を騙さないで」

エポナは肩をすくめた。

「まあ……断ったらどうせ処刑されるだろうし。

兄貴たちにも捨て駒にされたし……考えとくわ」

タニアは涙を拭きながら、震える声で言った。

「少し……考えさせて」

アテナは微笑んだ。

「分かりました。

あなたたちのトテマが届くまで――わたしが守りましょう」

「ここまで読んでいただきありがとうございます!次回もぜひお楽しみに。」

「翻訳に間違いがありましたら、お知らせください。」

「とても感謝しています。」


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