第39章 — アテナ、参戦
「この物語は歴史と神話をもとにしたファンタジーです。」
アテナは山の上から軽々と跳び降り、
まるで侮辱するような優雅さで、倒れているアンナちゃんと僕の方へ歩いてきた。
スルトは怒りで顔をゆがめる。
「て、てめぇは誰だァッ!?」
しかしアテナは、
一切返事をしない。
彼女は静かに槍を拾い上げ、それを消し――
血まみれで倒れるアンナちゃんの頭を片手でそっと支え、
髪をなでながら、口元へアンブロシアを流し込んだ。
「よく頑張ったわ、アンナちゃん。ほら、回復しなさい」
その声は信じられないほど優しかった。
「オレの戦いに横入りしてんじゃねぇぞォォ!!
今すぐぶった斬ってやる!!」
スルトが業火の剣を振り下ろす――
だがアテナは、アンナから視線を外さないまま。
ただ、人差し指を一本。
カン。
炎の大剣は、指一本で受け止められ――
ひび割れた。
「い、いっぽ…一本指!? しかもトーテマ無しで……な、何者だお前……!?」
スルトが後ずさる。
ちょうどその時、アンナがうっすら目を開けた。
「ア……アテナ先輩……助けてくれたの……?」
アテナは今度は僕にアンブロシアを与えながら言った。
「ええ。坊やが私を呼んだから、来てあげたのよ」
スルトは憎悪に震えながら、
自分が殺そうとしていた相手を治療されるのを見ていた。
「てめぇッ!! これでも喰らいやがれ!!」
スルトが全身を炎で包みはじめたその時、
アテナは、スルトへ向けてはじめて声を張った。
「よく聞きなさい、怪物。
私はあなたと戦う許可を“もらっていません”。
でも――もし私に“自己防衛”をさせる気なら、
あなたは後悔する暇もなく死ぬことになるわ。
――消えなさい。今すぐに。」
その刹那、僕は目を覚まし、アンナの腕の中にいた。
スルトは怒号とともに叫ぶ。
「ヘルへ堕ちろォ!! エルズ・ゲイスル(火光線)!!」
しかし光線が放たれる“前”に。
アテナの姿が消え――
次の瞬間、スルトの腹に拳がめり込み、
氷鎧が粉砕された。
「これが一度目の忠告よ、大男」
腹に腕を突き刺したまま、冷たく言った。
スルトは血反吐を吐き、膝をつく。
「じゃ、アンナちゃんたちの所に行ってあげるわね」
彼女はスルトを完全に無視し、その横を歩いて通り過ぎた。
「この……アマが……殺す……!」
スルトが振り下ろす――
が、アテナは軽く横へ跳び、
巨人は地面へ顔面から倒れ込んだ。
アテナはタニアのそばに膝をつき、アンブロシアを手渡す。
「タニトとは仲が悪いけど……治してあげるわ」
タニアの右腕が一瞬で再生し、
彼女は驚いて跳ね起きた。
「ア、アテナ!? な、なんでここに……!」
「味方なんです、タニア!!!」
アンナが叫ぶ。
二人の間に、一瞬でピリッとした緊張が走る。
タニアは血を吐き出し、
「……借り一つね」とだけ言って、スルトへ向き直った。
巨人はよろめきながら立ち上がり、息を荒げる。
「はぁ……はぁ……あ、あの噂の……アテナ……
ロキ様は……てめぇと争う気はねぇ……」
だがアテナは完全に無視。
スルトは逆上した。
「でもその拳の痛みだけは許さねぇ!!
ロギ(範囲炎)!!」
スルトの身体が灼熱の隕石のように発火し、突っ込んでくる。
タニアは一瞬で硬直。
攻撃の軌道を読めない。
しかしアテナが彼女を押しのけ、
片手でスルトの突進を受け止めた。
「後はアンブロシアを仲間に。ここは私が片付ける」
片手で巨人を完封したまま、
もう片方でタニアに瓶を渡す。
アンナとロドリゴが駆け寄る。
「急いで! エポナを助けるわよ!!」
タニアが叫び、彼らはうなずいた。
アンナは走りながら叫んだ。
「アテナ先輩! 気をつけて!!」
アテナは足を踏みしめ、地面を割るほどの力で構え――
「これが、二度目の忠告よ」
スルトを掴むと両腕を振りかぶり、
連なる山脈へ向かって投げ飛ばした。
山々が粉砕され、
巨人の血が異界の壁に飛び散った。
アンブロシアで回復したエポナは、悔しげに目を伏せた。
「ごめん……全部エポナのせいだ……」
「今はそれ言ってる場合じゃないよ」
アンナちゃんは戦場を見つめたまま答えた。
瀕死の巨人は、懐から光るルーン石を取り出した。
「ぜってぇ……後悔させる……!」
石を砕くと、眩い光がスルトを包み――
消えた。
「逃げたわね。臆病者だわ」
アテナは冷たく言った。
「ここまで読んでいただきありがとうございます!次回もぜひお楽しみに。」
「翻訳に間違いがありましたら、お知らせください。」
「とても感謝しています。」




