第37章 — タニアとアンナ対スルト
「この物語は歴史と神話をもとにしたファンタジーです。」
巨人は名乗りを上げた。
「オレはスルト。ロキ軍の将軍にしてムスペルヘイムの支配者、炎の巨人王だ。この燃える剣がテメェらの最期になるぜ!」
「トーテマを使ってません、タニアさん。今なら勝てます。アンナ、急いで異界を! ここで戦います!」
タニアが鋭く叫ぶ。
巨人は凄まじい速さで剣を振り下ろし、巨大な炎の衝撃波を放った。
二人の女神は軽々とそれを回避し、その間にアンナの異界火花が弾け――
戦闘用のポケット次元が展開された。
タニアは異界の天井へ跳び、そこを蹴って一気に急降下。
巨人の顎へ膝蹴りを叩き込み、数メートル吹き飛ばす。
「エポナに何してくれたのよ、このクソ野郎ッ! アンタなんて八つ裂きにしてやる!!」
スルトは笑った。
「噂どおり強ぇな……だが、それでもオレには勝てねぇよ」
そう言うと、奴はズボンの中から――
トーテマの首飾りを取り出した。
戦士が剣を構えた小さな像。
「ダメ!!」
タニアが飛び退いた瞬間、巨人はそれを起動させた。
炎が全身を呑み込み、姿が一変する。
肌は青黒く変色し、肉体は三メートルを超える怪物へと膨張。
剣は溶鉱炉の鉄のように赤熱し、空気を歪ませる。
「……ちくしょう……ちくしょうッ!!」
タニアは火の爪を両腕にまとわせ、吠えた。
「ツェンプ・ダラク(炎爪)!!」
しかし、攻撃はまったく効かなかった。
巨人は彼女の腕を片手で掴み――
そのまま地面へ叩きつけた。
轟音とともに巨大なクレーターが生まれ、
タニアは血を吐いた。
さらに持ち上げ、再度叩きつけようとした瞬間、
アンナが背後から首を狙う。
だがスルトは振り返らず、
――タニアを武器のように振り回し、アンナへ叩きつけた。
二人は異界の壁まで吹き飛び、血を吐いて崩れ落ちる。
スルトの剣が赤く輝き、
巨大な火炎砲が放たれた。
爆発が異界全体を揺らし、瓦礫が飛び、煙が渦巻く。
ロドリゴはもう見ていられなかった。
煙が晴れると――
アンナが立っていた。
全身焼けただれながら、タニアを庇って。
タニアの体は紫に腫れ、皮膚は裂けていた。
それでも、彼女は微笑んでみせた。
「……アンタ……こんなんで……アタシら…殺せると思うなよ……クソ野郎……」
アンナは荒い息を吐きながら言った。
「ダメです……アンナ……ここはワタシが……死ぬなら……ここで死ぬ……」
タニアが立ち上がる。
「アンナも一緒に死ぬの。二人で行く」
アンナは剣を再び構えた。
スルトは嗤った。
「いい姉妹愛じゃねぇか。だが望みどおり、地獄ヘルに二人まとめて送ってやるよ」
剣が天を向き、真紅に輝く。
「エルズ・ゲイスル(火光線)!!」
アンナは叫び返した。
「クラグ・ドゥバン(ドゥバン盾)!!」
――その瞬間。
スルトの背後に。
ロドリゴがいた。
「やめろぉぉぉッ!!」
渾身の力で蹴りを叩き込み、
巨人の体が後方に吹き飛ぶ。
「僕は……僕は君たちのために戦う!!」
「バカなこと言わないで! あれくらいじゃ効くわけないでしょ!!」
タニアが怒鳴る。
ロドリゴは絶叫しながらマンナを限界まで解放した。
地面が割れ、巨大な振動が走り、
石塊が浮き上がり、
稲妻が彼の全身を走る。
「ハイオス・デ・ルス(光の弾)!!」
青白い光球が無数に生成され、
ロドリゴの手から連射された。
爆発の連続で大地が砕け、
巨大な裂け目が幾筋も走った。
ロドリゴは止まらず撃ち続け――
マンナが尽き、膝をついた。
煙が晴れた。
大地には巨大なクレーター。
しかしスルトの姿は――なかった。
次の瞬間。
ロドリゴの骨がすべて砕ける痛みが走った。
スルトが目の前に現れ、
凄まじい蹴りを放ったのだ。
ロドリゴの体は数メートル吹き飛び、
地面に叩きつけられた。
手も足も動かない。
イコルが枯渇し、意識が揺らぐ。
それでも――
スルトの体にはアザが残っていた。
「クソガキ……今のは効いたぞ……!」
巨人が剣を掲げた。
その刃がロドリゴを断とうとした瞬間――
「ルイを守るのはアンナ!!」
アンナが飛び込み、
盾が火炎を受け止めた。
そして巨人の背後では――
タニアが立っていた。
天を仰ぎ、両手を合わせ、
燃え上がる紅髪が炎そのものと化す。
空気が震え、熱が膨れ上がる。
女神たちは――
まだ終わっていなかった。
「ここまで読んでいただきありがとうございます!次回もぜひお楽しみに。」
「翻訳に間違いがありましたら、お知らせください。」
「とても感謝しています。」




