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第34章 — ユトランドへの旅

「この物語は歴史と神話をもとにしたファンタジーです。」

トゥールーズを出発してから六日。

黄昏が空を染めるころ、一行はついにノルマンディーの都市カーンへと到着した。

ここから船に乗り、目的地――ユトランドへ向かうのだ。


挿絵(By みてみん)


海路での旅は、さらに七日を要する予定だった。

北方の地はかつてカロリング朝の領土であったが、

いまやヴァイキングたちの支配下にある。

名目上は西フランク王国の保護領として、その風習を取り入れてはいたものの、

実際の暮らしぶりは依然としてデーン人そのものだった。

デンマークへの直通商路が存在し、人々の言葉もフランス語ではなくデンマーク語。

そのため、多言語を操るタニアでさえ、ここではほとんど役に立たなかった。

「ノルウェー語なら少しわかるわよ。デンマーク語に似てるし!」

とエポナが伸びをしながら言った。

「さっ、さむっ!」

ロドリゴは外套に身をすくめながら震えた。

アンピエルが去って以来、馬車を操る役はロドリゴの担当だった。

それから六日、天使からの連絡は一度もない。

「心配しないで、ロドリゴ! ここのワインは最高よ!

飲めばすぐにあったまるから!」

エポナは元気よく言って馬車から飛び降りた。

ロドリゴは見慣れぬ街を見渡した。

カーンの家々は二階建ての木造で、屋根は深いV字型に傾いている。

街の高台には石と木で造られた独特の城がそびえ、

舗装されていない道には車輪の跡がいく筋も刻まれていた。

人々の服装も質実で、厚手の外套と粗い麻布のチュニックを身に着けている。

これが初めて見る「デーンの文化」だった。

「まず宿を見つけましょう」

タニアが軽やかに馬車から降りる。

その瞬間――空が唸りを上げ、雨が降り出した。

「この地方はいつもこんな感じよ」

アンナが言いながら、濡れるのも気にせず歩き出す。

黒髪に滴る雨粒が、街灯の光を反射して輝いた。

港のそばに馬車を停め、近くの宿屋を探す。

エポナが「ノルウェー語」で話しかけたものの、誰にも通じなかった。

幸い宿主夫婦が少しだけオック語を話せたため、タニアが交渉し、

一晩泊まる部屋を借りることができた。

「前にこの辺で飲んだって言ってたじゃない、エポナ。

“最高のワイン”とか自慢してたくせに。

今の変な言葉、何だったの?」

アンナが呆れたように言う。

「だって昔の話よ! その頃はまだ“ノルマンディー”なんて名前じゃなかったの!」

エポナは頬を膨らませた。

ようやく部屋に入ると、今回はひと部屋を全員で共有することにした。

「アンピエルから、まだ連絡は?」

アンナが暗い表情で尋ねた。

「ないわ……。無事でいてくれるといいけど」

タニアは静かに答えた。

「明日の朝にはユトランド行きの船に乗る。今夜は休みましょう」

その後、一行は使い終えた馬車を売りに出た。

意外なことに、現地ではオック語やフランス語を話せる者も多く、

取引は思ったよりもスムーズに進んだ。

夕食を済ませ、宿の下の酒場でワインを数杯。

そのまま皆、疲れ果てて二階の部屋に戻った。

その夜、彼らは一つの部屋で寝た。

ベッドを分け合いながら。

ロドリゴの隣には――エポナ。

心臓が跳ねた。

旅のあいだ、金髪の女神はますます美しく見えて仕方がなかった。

アンナには「厩舎の女神にヨダレ垂らしてんじゃないわよ」と散々からかわれたが、

止めようとしても、どうしても目が離せなかった。

そして今――彼女が、ほんの数センチの距離で眠っている。

エポナの唇は微かに開き、規則正しい寝息を立てていた。

柔らかな金髪が枕の上に広がり、月明かりがその頬を照らす。

(……だめだ。紳士ならこんなこと、絶対にしねぇ)

ロドリゴは息を吐き、布団を被って背を向けた。

そして、ようやく目を閉じた。

「ここまで読んでいただきありがとうございます!次回もぜひお楽しみに。」

「翻訳に間違いがありましたら、お知らせください。」

「とても感謝しています。」


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