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第31章 — 夜明けの告白

「この物語は歴史と神話をもとにしたファンタジーです。」

部屋は広く、中央に大きなベッドと小さなテーブルがあり、どこか荒れた印象を漂わせていた。

そのベッドの上に、アテナが足を組んで座っていた。

ノースリーブのトーガに包まれた腕と脚――その姿は威厳と妖しさを併せ持っていた。

「昨夜、待ってたのよ」

唇の端を上げて、アテナが笑った。

「でも、あなたたち、お酒の誘惑には勝てなかったみたいね?」

「そんな話をしに来たんじゃないわ」

アンナは鋭く言い放ち、部屋の入り口に立ったままだった。

「情報を聞きに来ただけ。それだけよ」

「それはそれは。でも客人をもてなさないのは無礼だわね」

アテナは立ち上がり、テーブルの方へ歩いた。

衣の隙間から覗く肌は、まるで彫刻のようだった。

「私の国では“もてなし”は神聖なものなの。

パンにオリーブオイルをつけて――それからワインはどう?」

「結構よ」

アンナは冷たく答えた。

「まあ、そんなこと言わないで。だって――」

「いらないって言ってるでしょ!」

アンナの怒声が部屋に響いた。

アテナは一瞬だけ動きを止めた。

アンナは深呼吸をして目を閉じる。

「情報を聞いたら、すぐに出ていくわ。

今日のことは“なかった”ことにする。

――いい?」

アテナは肩をすくめて微笑んだ。

「いいわよ、アンナちゃん。

あのヒステリックなアナトのこと、知ってるでしょう?」

アンナは無言で頷いた。

「じゃあ、彼女があなたの“過去”――私と過ごした年月を全部把握していることも分かってるわね」

アンナの体が硬直した。

「アナトはあなたを殺したがっているの」

アテナの声は低く、静かだった。

「拷問にかけられれば、私のことを喋るかもしれない。

あるいは――また私の軍に戻るかもしれない。

そう考えているのよ」

アンナの顔から血の気が引いていく。

ロドリゴが彼女の腕に触れると、その震えが伝わった。

「タニトも同じ。臆病で、腰抜けだと判断された。

二人とも、任務が終わる前に消される運命よ。

そしてエポナは……ただの巻き添えね」

「彼女たち二人の死――それがオーディンの領域で起これば、

レルはユグドラシルへの介入を余儀なくされる。

――さて、誰がロキを解放したと思う?」

沈黙。

アテナの声が落ちた。

「エロヒムの一柱――次元を渡ることができる存在が、

エル様の直接命令でロキを解き放ったの」

その言葉に、アンナの表情が崩れた。

「やっぱり……! レルを裏切らせようとしてるのね!」

アンナが叫ぶ。

「静かに。外に聞こえるわ」

アテナは落ち着いた声で言った。

「嘘をつく理由なんてないの、アンナちゃん。

もう話すことは全部話した。理解できた?」

彼女は窓の方を向いた。

「ただ、一つ忠告しておくわ。

ロキはユトランドにいる――けど、奴だけじゃない。

二人の子供と、一体のヨトゥンが共にいる。

トーテマなしでは勝ち目はないわ」

「もしその天使がレルに戻って事情を説明すれば、

トーテマを返してもらえるかもしれない。

――もっとも、許可が下りるとは思えないけど」

アテナは再び振り向き、

いたずらっぽく、しかしどこか悲しげに笑った。

「……あるいは、私の勘違いかもしれないけどね」

アンナは何も言わなかった。

やがて、小さく頭を下げて呟いた。

「ありがとう、アテナ先輩」

そして静かに扉を閉めた。

三人は無言のまま階段を降り、宿を出た。

冷たい朝の空気が頬を刺す。

やがて自分たちの宿へ戻ると、

タニアは椅子に腰かけ、エポナは窓辺で本を読んでいた。

「無事でよかった」

タニアが言った。

「話があるの」

アンナが暗い声で答えた。

彼女はアテナから聞いたすべてを語った。

部屋の空気が凍りついた。

「彼女の言葉を確かめるには、

レルにトーテマを要求するしかありません」

アンピエルが言った。

「それが一番ね」

タニアが頷く。

アンピエルは懐からエポナのトーテマを取り出し、

軽く放り投げた。

「ちょっと! そんな貴重なもの、投げないでよ!」

エポナが慌ててキャッチする。

「まるで君がそれを身につければ、何かが変わるかのように。」

アンピエルが皮肉っぽく言うと、

部屋に小さな笑いが生まれた。

「では、私はレルへ戻ります。

ユトランドへ到達する前に必ず追いつきます」

「頼んだわ、アンピエル」

アンナとタニアが同時に言った。

「気をつけてね」

ロドリゴが付け加える。

「ふん、あんたはずっとあっちにいなさいよ」

エポナがそっぽを向いた。

次の瞬間、眩い光が部屋を満たした。

アンピエルの背から純白の翼が広がり、

その姿は光の粒となって消えた。

「……さて」

タニアが立ち上がり、決意を宿した瞳で言った。

「アナトが私たちを殺そうっていうなら――

ロキの首を持って、こう言ってやるの。

“舐めるなよ、ウホラナト”ってね」

アンナは小さく息を吐いた。

「すべてはアンピエル次第ね。

彼がトーテマを持って戻ってくれることを祈るわ」

その後、四人は宿の食堂で簡単な朝食を取り、

北のノルマンディーを目指して出発した。

「ここまで読んでいただきありがとうございます!次回もぜひお楽しみに。」

「翻訳に間違いがありましたら、お知らせください。」

「とても感謝しています。」


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