第23章 — バルセロナ
「この物語は歴史と神話をもとにしたファンタジーです。」
タニアの家での会合から二日が過ぎた。
そしてついに、ノルマンディーへ向けて出発する日がやって来た。
アンピエルとエポナは早朝、タニアの洞窟の前にある小さな鐘を鳴らした。
すでにタニア、アンナ、そしてロドリゴは準備を整えていた。
「さて、必要な物はすべてここに詰めたわ。バルセロナで補給をして、そこから六日間かけてノルマンディーの首都カーンへ向かう予定よ」
タニアが地図を広げながら説明した。
「カーンでは船に乗り換えてユトランドへ向かうの。海上の旅は七日以上かかるわ」
「……もし空を飛べたら、一瞬で着くのにねぇ」
アンナはつまらなそうにため息をついた。
「バルセロナでは商隊に合流する予定ですか?」
アンピエルが尋ねた。
「いいえ、それでは遅れが出るだけよ」
タニアは首を横に振った。
「山賊に襲われたら自分たちで撃退するわ。
食料が尽きたら、狩りをすればいい」
「でも、バルセロナ伯領とフランク王国の国境を越えるんでしょ? あいつら敵同士じゃないの?」
エポナが腕を組み、眉をひそめた。
「アンドラの町を経由するのよ。あそこはフランク王国とバルセロナ伯領、そしてコルドバのカリフ国を結ぶ門のような場所。
巡礼者のふりをすれば通れるわ」
「ふ〜ん。でも、そのベルベル人みたいな格好で説得できるの?」
エポナが鼻で笑った。
「ええ、バルセロナに着いたら着替えるわ。この顔のタトゥーも消しておく」
タニアは頬に触れながら答えた。
「それより気になるのは、バルセロナそのものよ。去年、街は襲われて半分以上の住民が処刑か奴隷にされたって聞いた。
そんな場所で船を捕まえられるの?」
アンナの声には不安が滲んでいた。
「意外なことにね、昨日調べたら、港が最近ようやく再開されたらしいの。
まだ制限はあるけど、出入りはできるわ」
「だから私たちは“商人”ということにしておくの。
そうすれば兵士たちに怪しまれない。
この荷物もそのための“商品”よ」
タニアはいたずらっぽく笑った。
「了解、じゃあ出発!」
アンナが元気よく手を上げた。
タニアの家を出た一行は、イビサの港へ向かった。
出航まで残りわずか数分。
潮風が心地よく、空は青く澄みわたっていた。
――一時間後。
バルセロナの港に到着したとき、ロドリゴは思わず息をのんだ。
タニアの姿がまるで別人のように変わっていたのだ。
顔のタトゥーは完全に消え、純白のドレスを身にまとい、
額には細いティアラ、腰には金の帯が輝いていた。
そして……その衣装が、彼女の胸の曲線を際立たせていた。
「ルイ、女の人をじーっと見るのは失礼よ」
アンナがロドリゴの耳を引っ張った。
「い、痛いって! でも、アンナが“そんな人間のルールはバカげてる”って言ってたじゃん!」
「それは別! そういうのは――宇宙共通のマナーよ!」
アンナが真っ赤になって叫ぶと、タニアが小さく吹き出した。
「ここまで読んでいただきありがとうございます!次回もぜひお楽しみに。」
「翻訳に間違いがありましたら、お知らせください。」
「とても感謝しています。」




