第13章 — 許して
「この物語は歴史と神話をもとにしたファンタジーです。」
洞窟の下層の部屋で、ロドリゴとアンナは向かい合って立っていた。タニアは少し離れた岩の上に座り、二人の訓練を見守っていた。
「まず最初にやるのは、この次元を歪ませることだよ、ルイ」
アンナは服のポケットを探り、小さな白い光の粒を取り出した。
「次元を…歪ませる?」ロドリゴは尋ねた。
「うん。この場所を壊さないように戦闘用の空間を作るの。神しか動けない次元を開くんだ。人間は完全に止まって、時間も流れなくなる。でもここでは普通に動けるの」
アンナは説明した。
「…よくわからない」ロドリゴは首をかしげた。
「心配いらないわ、すぐ思い出すから」
タニアがそう言った。
アンナが光の粒を地面に落とすと、衝撃波のように青灰色の波が洞窟全体を包んだ。ロドリゴはすぐに、アル=マンスールを殺そうとしたときの感覚を思い出した。
「これが新しい次元、ルイ。こういう“ポケット次元”を使えば安全に戦えるの。しかも、壁は絶対に壊れないから、思いきりやっていいよ」
アンナは腕を広げて言った。
「すごい…」ロドリゴは驚いた。
「訓練が終われば、すぐ閉じられるの。こういう空間は神を閉じ込める牢獄にも使えるのよ」
アンナが言うと、彼女の左腕から黒い羽根が生え始めた。
黒い羽根が渦を巻き、やがて一振りの剣の形になった。アンナはそれを左手でしっかり握った。
「これがアンナの力、“闇の物質”だよ」
アンナは剣を振り、目の前の空気を切った。
「想像できるものなら何でも作れるんだけど、アンナは武器を作るのが好きなの」
彼女が横に一閃すると、背後に無数の武器が現れた――剣、槍、弓、短刀――やがてそれらは黒い羽根となって消えた。
「神々はそれぞれ、生まれたときに“元素”と結ばれるの。アンナは闇。タニアは炎」
「まあ、わたしはもともと“水”の元素だったけどね」
タニアが肩をすくめた。
「でもそれに満足できなかったから、炎を鍛えたの。つまり、生まれた元素に縛られる必要はないのよ」
二人の女神はロドリゴの目を見つめた。
「まずは、ルイ、あなたの元素を顕現させるの!」
アンナが剣の先でロドリゴを指した。
「君の血に流れている神の力が、次の段階への鍵になるのよ。さあ、自分の神気を出してみて!」
タニアが促した。
「ムーア人を攻撃したときの怒りを思い出して!」
ロドリゴはうなずき、拳を握り、膝を少し曲げた。集中すると、髪がふわりと浮き、足元に光の筋が生まれた。砂や小石が宙に舞い、目の色がより鮮やかな緑に変わる。ロドリゴの体から白い光の輪が放たれた。
「準備完了だ」ロドリゴは叫び、光の中で立ち上がった
アンナは舞い上がる砂を手で払って咳をした。
「エネルギーの制御をもう少し練習しようね」
「さて、次は“エネルギー”を出せるか見せて」
「エネルギー?」ロドリゴは戸惑った。
「そう、こうやって」アンナが右手に青い炎を灯し、すぐに消した。
「出てくるエネルギーの性質で、あなたの元素がわかるの」
ロドリゴは右手を見つめて力を込めた。だが何も起きない。さらに集中すると、地面が震え、石が浮き、ひび割れが走った。光が暴走し始める。
「ダメだよ、ルイ、落ち着いて!」
アンナが声を上げた。
「心を静めて、エネルギーを感じるの」
ロドリゴは力を抑えようとしたが、何も起こらず、焦りで再び震動が起きた。
「まったく、手に負えないわね」
タニアが苛立たしげに言った。
「そんなこと言わないで、タニア。きっとできるよ」
アンナは剣を消し、ロドリゴの肩に両手を置いた。
「ルイ、たくさんの苦しみを乗り越えてきたね。心の中に痛みと怒りが渦巻いているのをアンナは感じるよ。でもまずは、心を整えなきゃ」
「できない!できないんだ!」
ロドリゴは叫んだ。力が爆発し、稲妻のような光が走った。
「アルマンスールを殺したいんだ!あいつを…!」
アンナはロドリゴの涙に満ちた瞳を見つめた。
「ごめんね、ルイ」
「アンナとタニアが復讐を止めたこと、許してほしい」
「お母さんを守れなかった自分を責めないで。それは君のせいじゃないの」
彼女の声は穏やかで、洞窟に静けさが戻った。
「敵を完全に許すのは難しい。でも少しずつ受け入れよう。憎しみを抱いたままでは、君自身が壊れてしまう。アンナは君を信じてるよ」
ロドリゴは力を失い、その場に崩れ落ちた。アンナは膝をつき、肩を支え続けた。
「そういうのは得意ね」
タニアが退屈そうに言った。
「わたしなら、もうボコボコにしてるわよ」
ロドリゴはゆっくりと呼吸を整えた。
「もう大丈夫?」アンナが優しく尋ねた。
ロドリゴはうなずいた。
アンナは立ち上がり、ロドリゴに手を差し出して立ち上がるのを助けた。彼はその手を取り、ゆっくりと起き上がった。
「ここまで読んでいただきありがとうございます!次回もぜひお楽しみに。」
「翻訳に間違いがありましたら、お知らせください。」
「とても感謝しています。」




