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第10章 — イビサ

「この物語は歴史と神話をもとにしたファンタジーです。」

二日後、彼らはイビサに到着した。


挿絵(By みてみん)


そこは白く塗られた家々がほぼ左右対称に並ぶ小さな村で、赤い屋根と豊かな木々に囲まれていた。

港の近くには、魚介類や果物を売る小さな市場が並び、彼らの乗ってきた船がそこに停泊していた。

ロドリゴ、アンナ、そしてタニアは、他の数人の商人たちと共に船を降りた。

地元の商人たちはタニアを見ると、すぐに彼女に声をかけた。

彼らはロドリゴには理解できない不思議な言葉を話していた。

赤髪の女神は微笑みながら応じた。

その笑顔は、これまで彼女が見せてきた作り笑いではなく、心からのものだった。

タニアは、町の中ではなく外れに住んでいると説明した。

港から集落の端を抜け、山々に囲まれた洞窟群へ向かう必要があった。

神々は歳を取らないため、人間の町に長く留まるわけにはいかず、離れて暮らす方を選んでいるのだという。

三十分ほど歩くと、彼女の住む洞窟にたどり着いた。

中は驚くほど整えられており、机や椅子、簡易的な台所、さらには天然の泉を使った浴場まであった。

上部には大きな開口部があり、そこからイビサの町全体を見渡すことができた。

洞窟の中には、無数の蝋燭が岩肌を照らしていた。

入り口にはマホガニーの大きな扉と、小さな鈴が取り付けられていた。

その周りでは、数人の子どもたちが遊んでいた。

子どもたちはまたしてもロドリゴに理解できない言葉で話しかけていた。

しかしタニアはしゃがみ込み、そのうちの一人の頭を撫でながら、同じ言葉で優しく答えた。

その声はアラビア語に少し似ていた。

彼女の言葉を聞いた子どもたちは嬉しそうに笑いながら村へ戻っていった。

タニアは立ち上がり、扉を開けた。

「ようこそ、私の家へ」

彼女は腕を広げて言った。

「楽にしていいわ」

「えっと……入浴してもいいですか?」

ロドリゴが少し恥ずかしそうに尋ねた。

「もちろんよ。案内してあげる」

タニアは微笑みながら浴場の場所を教えた。

ロドリゴが中に入ると、そこには広大な泉が広がっていた。

彼はすぐに服を脱ぎ、水の中へ飛び込んだ。

冷たい水が肌に心地よく、イビサの夏の暑さを忘れさせてくれた。

コインブラの事件以来、まともに体を洗っていなかった彼は、汗と血の臭いがようやく流れ落ちていくのを感じた。

だがその時、驚くべきことにアンナが全裸で浴場に入ってきて、水に飛び込んだ。

ロドリゴの顔は一瞬で真っ赤になり、慌てて体を隠した。

彼は生まれて初めて裸の女性を見たのだ。

「な、なにしてるんだ!?」

ロドリゴは慌てて叫んだ。

「え?お風呂に入ってるだけだけど?」

アンナは首をかしげて答えた。

「き、君は女の子だろ!? 僕がいるのに一緒に入るなんて!」

ロドリゴは動揺しながら、湯船から出ようとした。

「人間じゃないんだから、そんなくだらないルールに従わなくていいの!」

アンナはむっとして言い返した。

その瞬間、タニアが入ってきて、アンナの耳をつかみ、力づくで引っ張り出した。

「やめなさい、このカラス娘!」

赤髪の女神は怒鳴った。

「だってアンナも入りたいの! こんなに広いんだからいいでしょ!」

アンナは怒りながら抵抗した。

「ロドリゴ、気にせずゆっくり入ってなさい。この露出狂は放っておきなさい」

タニアは視線を逸らしながらそう言い、アンナを連れ出していった。

ロドリゴは呆れながらも、少し安心して体を洗い続けた。

数時間後、ロドリゴとアンナの入浴が終わると、三人は町へ出て、ジャガイモや魚、香辛料などの食料を買い集めた。

タニアが料理を作り、彼らは洞窟の中でワインを飲みながらそれを分け合った。

食事を終えると、タニアはロドリゴを見つめて言った。

「さて……そろそろ話すべきね。私たちが何者なのか、そしてあなたが何なのか。いいかしら?」

若者はうなずいた。

タニアは深く息を吸い、少し間を置いてからアンナを見た。

「もちろん、説明するのはこの子の役目よ」

「やっぱり!」

アンナがぷくっと頬をふくらませた。

「またアンナが悪者みたいになるんでしょ、ルイの前で!」

タニアはわざとらしく顔をしかめ、アンナはむくれた顔でため息をついた。

「いいわ、ルイ。よく聞いてね」

アンナは立ち上がり、ロドリゴの前に立った。

「この世界では、人間は太古の昔から神々を崇拝してきたの。

洞窟の壁に絵を描いたり、巨大な神殿を建てたりしてね。

その神々――それが、わたしたちなの」

ロドリゴは信じられないというように眉をひそめた。

「ずっと昔、神々は絶えず争いを続けていたの。

そしてある時、人間の“信仰”が私たちに力を与えることに気づいたのよ。

だから多くの神々がこの世界に降りてきて、人間に信仰を強要したの」

アンナは続けた。

「信仰の試練が大きければ大きいほど、神々の力も強くなった。

だから中には、人間同士の聖戦を煽ったり、生贄を求めたり、虐殺まで引き起こす神もいたの」

黒髪の少女は深呼吸した。

「……このあたり、ルイにはちょっと受け入れにくい話かもしれないけどね」

ロドリゴには、彼女の言葉すべてが信じがたかった。

幼い頃、彼はイベリア半島で崇拝されていた古い神々は“悪魔”だと教わってきた。

だが今、その“悪魔”が目の前で自分に語っている。

「ルイ、キリスト教は本物じゃないの。イスラムもユダヤ教もね。

仏教のような宗教も、結局は同じ試みだった。

神々は異教の人間の宗教をすべて消し去ろうとしているの」

アンナは少し頬を赤らめながら言った。

ロドリゴは不安げに彼女を見つめた。

もし彼女の言うことが本当なら、彼女たちは悪魔に違いない――そう思うと胸が締めつけられた。

「ここまで読んでいただきありがとうございます!次回もぜひお楽しみに。」

「翻訳に間違いがありましたら、お知らせください。」

「とても感謝しています。」


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