表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/10

Episode Null『それでも少年は → Ctrl + C』

——これは遥か昔のあるいは遥か未来の物語。


(ターンエー)-0001(アインソフオウルワン)Azathoth(アザトース)』、起動」


 今にも泣き出してしまいそうな少女は告げる。

 白銀の髪と青い瞳。全てが恐ろしい程に完成された天使のごとき姿。

 彼女は人類最高の能力を与えられた、『人工の救世主』。


「私が全て終わらせる」


 彼女の声に応えた演算機が、主人(マスター)たる少女との神経接続と同期を開始。

 同時に流れ込んでくるのは無数の声。既にアザトースと一体になった人々の断片。その絶望にも似た祈りが少女の背を押し、後戻りを許さない。


——どうか人類を救ってくれ、と。


 その声に応えるため、少女は世界を壊す。それだけが、少女がこの世界に生み出された意味だったから。


「初期化……完了。対消滅炉アナイアレーションリアクター、エーテルドライブ定常出力」


 無機(演算機)有機(白い少女)が量子の糸でつながれて、『白知の魔王(アザトース)』の名を冠する『機械仕掛けの神(デウスエクスマキナ)』はソラへと解き放たれる。

 白い三対の翼が真っ暗な闇を捉え、彼女の後には何も残らない。絶望も希望も、文明も星も、広がるのは何もない虚無だけ。けれど、彼女だけは虚無に還ることは赦されず、ただ絶望だけが胸を埋め尽くして。


「どうして……あなたも望んだことでしょう?」


 全てを無へと還す少女の前に立ちはだかったのは一人の少年だった。人類の罪の清算、『正義』に抗う愚か者たちを従えて。


「不器用すぎるんだ……君は」


 二人は平和な世界を求める同志で、かけがえのない友人のはずだった。だが、いつからか二人の目指すモノは違って。

 少年にとって平和な世界は過程でしか無かった、世界よりも大切なモノが出来てしまったから。


(認められるか。世界の終わりも、君がこんな結末を迎えることも)


 彼女を犠牲にすることでしか得られないというなら、平和な世界など彼は要らない。世界なんぞよりも彼は一人の少女の笑顔が見たい。


 ありきたりな言い方をするなら、少年は少女に恋をしていた。

 彼女のためなら、彼女の敵になっても良いとさえ思える程に。


「オレが君を止めてみせる」


 二人は激突する。彼女は世界を救うために。彼はたった一人の少女を救うために。


——全ての始まりにあったのは、少年の片想いだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ