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64 最終決戦。その一。

 少し(さかのぼ)るが、ララヒャトレフィは、オロクガネアとほぼ同じ経路を通ってフードコートまで来ていたが、そこから左を見てクレープ屋に敵の気配を見付けていた。そこへ入る際、前(もっ)て彼女は――

「鋭き(つぶて)、青く()て無く光りて刺せ」

 唱えていた。

 入ってすぐ、身体強化した男が跳ね回った。そして紙が舞った。

 ララヒャトレフィは警戒し紙からは離れた。身体強化もしたララヒャトレフィは簡単に紙から離れることができた。(ゆえ)に紙は誰も居ない所で爆発。

 相手の舌打ちが聞こえたその瞬間、青い光刃が大量に生まれた。そして次の瞬間、男は倒れた。その体はズタズタ。

「くっ」

 まだ意識はある男に、ララヒャトレフィが近付く、だが何もされない。『認識ずらし』という能力を彼女は使っていた――男は紙切れをララヒャトレフィだと思っていた。そして彼女が、(あご)への一撃で男を沈ませる。するとそこへ晴己が現れた。

「縛ります」

 晴己は消炭(けしずみ)色の長布で縛ると、辺りを見た。

「じゃあ僕はこれで」

 地図で言えば右下の区画の絨毯(じゅうたん)の店に敵が居るのを透視で知り、晴己はそこへ瞬間移動した。

 ララヒャトレフィは空間を接続し、簡易留置場へ、縛られた男を運んだ。そして戻ると、

(隣にも多分いる)

 と、地図では左隣のアイスクリーム屋へと入った。



 二階の、地図上で言う最も上の列には、左から、ジャージの店、スポーツ用品店、洗剤の店、パジャマの店、シャツの店があり、その右が上端の大階段だった。エデルエラはそのシャツの店『シャツラ』に敵の影天力(えいてんりき)を感じ、入った。

 数歩だけ歩いて奥のマネキンの向こうに居るのが見えた。そしてエデルエラは前情報から相性が悪いことに気付いた。丸い穴を開けたりそれを動かし操ったりする男。人に使えば大惨事。だから封印。それから素早く近付く。

 力が使えず相手の男は逃げ惑う。そこへ、エデルエラは瞬間装着を念じた。

 男の右手首に青い手錠。装着成功。近付いたからそれが正確にできた。すぐに瞬間移動で前に現れ、逃げようとしたその手を引っ(つか)む。そのもう片方の手首にも。ガチャリと音が鳴る。後ろ手での状態にもできた。両手首を繋げて初めて手錠が封じる。もう能力による封印も要らない。

「くそっ!」

 そう言う男を、空間接続によって簡易留置場へ。エデルエラは中に戻ると接続を切り、また敵を探した。



 ゾリイェルが気にしたのは男性服エリアのランダップというブランド店だった。その中に大きな影天力(えいてんりき)を感じた。わざと放っている気配。

「こいつはやばいか」

 だが入った。

(誰かがやらなきゃいけない。相性が良ければ俺だって倒せる)

 進み入った先で、ゾリイェルは驚いた。

「モルギレンティス……!」

 名を呼ばれたのは代理影神(かげがみ)の弟、先代の次男――

(エデルエラの情報ではその(はず)! こいつは――!)

 モルギレンティスは瞬間的にゾリイェルに近付いた。

 互いに身体強化。ほぼ互角。一旦両者が距離を置くと、ゾリイェルは空間コピーを行なった。

 目の前の棚がそのまま複製されモルギレンティスの頭上へ現れた。

 彼が()けようとする。そこへ、退路を(ふさ)ぐように床から棒を立てた、幾つもだ。ゾリイェルが念じれば垂直に棒が立つ。全ての商品や棚自体の重さがモルギレンティスに降り掛かる。だが彼も空間接続ですぐ横に()()きた。

 ゾリイェルは白く長い(ひも)を呼び出し、それに念じた。するとそれは水平に真っ直ぐに伸びた。それがモルギレンティスの横から――

「ふん!」

 という気合の直後、高速で横にスライドし始めた。

「何撃したかな」

 モルギレンティスはそう言うと、ニヤリと笑い、ただ突進した。それだけで紐の攻撃から(のが)れた。ゾリイェルは、それを単なる身体強化に()る速さだとは思えず、しかもほかの力を使わずに()け切ることはできそうにないと咄嗟(とっさ)に感じ、

「転移!」

 視野内転移を行なった。

 その可能性を考慮したモルギレンティスは灰色の翼を広げ強く鋭い羽根を嵐のように放った、背後にだ。

(う――そだろ!)

 彼の背後の方へ移動し方向転換していたゾリイェルは、反射的に結界を張ることで防げはした。が、勝ち目の無さを感じ始めていた。



 ネモネラは移動させられたその位置から敵が見えないため、左右によく注視した。

 警戒しながら少しずつ前へ出た。だが透明な何かに足がぶつかる。それ以上行けない。

(壁? 透明な……?)

 その時ネモネラの右、十メートルほどの所に、女が、棚の陰から歩いて現れ、そこから灰色の羽根を飛ばした。

 ネモネラは目の前の空間を――敵の背後に繋げた。だが敵もその繋がった瞬間を見た。その女も背後とネモネラの前を空間接続。

 結局ネモネラに降り掛かる。それを、白い壁を生じさせ、ネモネラは、それに吸収させるかのように防いだ。

 すぐにネモネラは白い盾を生み勢いよく向かわせた。それが背後からネモネラにぶつかった。

(くっ……触らぬが吉!)

 ネモネラは自分の前方を別の空間に接続し、前へ進み出て移動した。相性が悪かった。(おそ)らく空間の、接続ではない何かまでされている。その店の前に出たあと、ネモネラは、急いで斜め向かいの、内側に一つ行った店に入った。眼鏡の店だった。そこで、たった今大きな影天力(えいてんりき)を感じた。

(――!)

 そちらを素早く向く。激しい光がネモネラを襲った。



 ガサナウベルが歩いて入った通路の右横は大階段で、左は花屋だった。そのフラワーショップの向かいに雑貨屋が入っていた証がちらほら見える。そこから彼は影天力(えいてんりき)(かす)かに感じ、入った。

 すぐに反応できるようにガサナウベルは腰を若干(じゃっかん)落として歩いた。

 奥から、男が急に、わざわざ出てきた。彼が手から灰色の光弾を放った。溜めなどなく一瞬で。

 ガサナウベルは空気に掌底(しょうてい)を繰り出した。すると(てのひら)型衝撃波が生まれ、それが光弾へ向かった。ほぼ同時に空間接続で男の右斜め前へ移動。そこから(さら)に、近付きはせずにもう一発――

 というところで、気付かれ、光弾を放たれた。

 ガサナウベルは咄嗟(とっさ)に空間接続を使い今度は男の左斜め後ろへ。その接続はすぐに切る。

 奇妙なことに、男はまだ衝撃波を喰らっていないし、光弾が二つともそこにあり続けていた。なぜか全てが少し前の状態から動いていない。

(――っ?)

 ガサナウベルは、翼を出しこの上なく白い羽根の(やいば)を向かわせた。数枚。

 それが男に()たらずに止まる。

 そして男が跳び掛かった。

 ガサナウベルは空間接続で相手を迎え入れるようにして攻撃から(のが)れた。すると時が動き出したかのように、光弾が動き出し、一つは衝撃波と当たって大爆発、一つはただ棚へと向かい、そこで爆発した。

 その棚の爆発の横に、男はガサナウベルによって移動させられていた。爆発に()る破片から身を守るために、男はそこから瞬時に後退した。

 相手は身体強化しているようだった。ガサナウベルもそれを行なう。

 殴り合いになりそうなところで相手がまたも光弾を放った。ガサナウベルはそれを今度は()らい、吹き飛ばされ始めたが、相手が喰らったことにした。対象のすり替え。相手の男の方が二メートルほど吹き飛ばされた――ガサナウベルは一歩分ほどの移動に留まる。

 多少はガサナウベルも痛みを得ている。だがそれを気にせず一瞬で近付き、倒れてはいないがガサナウベルの位置を知ろうとしている男の腹へ、右拳を叩き込む。と――相手は倒れ、動かなくなった。

「ふう」

 一息は()くが、辺りへの注意も怠らない。



 ズガンダーフは通路を挟んで大階段の右にあるガクラという楽器屋に影天力(えいてんりき)を感じ、そこに入った。そしてすぐに筋力増強をし、念のため精神操作を無効化。(はじ)けるように駆け出した。

 奥に発見。男。互いに見付け合ったあとの相手の動きからすると、相手も身体強化などの力を使えるらしい。ズガンダーフの方が速いが、そんなに違わない。

 ズガンダーフの方が分が悪くはある。ズガンダーフがしたのは筋力の増強のみ、(ゆえ)に、身体強化のような防御面の強化は無い。皮膚や肉は切れ(やす)い。ズガンダーフにとって普通のことは普通なままだった。

 ただ、ズガンダーフには四つの腕がある。相手の腕は二つ。

 拳、蹴り、差し出されたならガード。格闘をしながら――

光天界(こうてんかい)じゃねえな!」

闇界(あんかい)から来た。影天界(えいてんかい)の邪悪には滅んで貰う」

「ちっ! 手数多過ぎだろ!」

 その瞬間、男は離れた。

 いつの間にか、ズガンダーフの右下の前腕から先がプラプラと揺れ、自分の意思で動かせない状態になっていた。

「どうする」男が言った。「全部折り(たた)んでやろうか?」

「ふむ」ズガンダーフは治癒を念じた。「治った。問題ない」

 男が舌打ちしそうになったその時、ズガンダーフは容(しゃ)なく――

「爆炎」

 ――の玉を放った。かつて晴己が手で切った物。

「な……! が……っ!」

 男は炎に包まれ、そして爆裂するその勢いで押され、幾つかの楽器を()ぎ倒すように後方へ。そして倒れた。そこへズガンダーフは近付きながら、晴己から貰った力を使い、声にし出した。

「どうやら現・代理影神(かげがみ)ルドリアスはまだ戦う気が無いようだな――ふむ、気絶したか」



 そのタイミングで晴己は封印を解除した。オロクガネアはもう無事だと時間的に信じたからだった。

 絨毯(じゅうたん)の店。灰色の翼を出した男の背後に晴己は瞬間移動していた。

(らい)――)

()!」

 また左拳。雷刃(らいじん)ではない。捕まえられればいい。とことん晴己は人を殺さない。

 相手は(しび)れたが、立ち上がり晴己を見る余裕はあった。

 その時、突然、晴己は左腰の後ろに痛みを感じた。何かが突き刺さった。

 手をやり確かめた。硬い何か。(やいば)状のもの。触れた手も切れた。目をやる。影が物体化して上へ伸びているように見える。

(封印)

 敵のそれを封印した。するとその黒い刃が消えた。

「ちっ」

 晴己が復元の小声で自分を癒していると、黒い鉄球らしきものが前から飛んで来た。

『どんな物をも切断する』

 不意打ちではない限り、敵の攻撃を受けないようにする方法など、今の晴己には幾らでもある。

 手で切ったあとで翼を出し、半球其々(それぞれ)()ね返してみた。それもできた。

「何っ――!」

 男は二つの半球を受け、衝撃で倒れた。

 一瞬で近付き(あご)を叩く。平手でさえ相手を気絶させる。すぐに消炭(けしずみ)色の封印の長布を念じて出し、縛る。空間接続で簡易留置場へ。運んだあと戻ると、また別の敵を透視で探した。

 そしてガサナウベルの所へまず向かうと、晴己は、動かない男を、封印の布で縛った。




※最終決戦は地図を描けるように表現しています。

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