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59 軽い物、重い物。その二。

 移動した先は森だった。

 相手は髪を白く染めた背の高い男一人。

 オフィアーナは(はね)の裏に一瞬で妖力(ようりき)を溜めた。実際には違う。自時間遅化(じじかんちか)。新たな能力だった。限界までそれを使えば一定時間休憩が必要ではあるが、もう妖力を溜めるために時間を割かなくていい、そう言えるほどの状態になっていた。

 男が白い槍を生み出した。

「あら天使?」

 その白さを見たタタロニアンフィの口から()れたが、エンリオットは、

「振りをしてる可能性がある」

 と言及。

 男はその槍を構えた。先をタタロニアンフィに向けている。

 タタロニアンフィは青一色の剣と盾を呼び出した。盾は自分の前に。剣はその上空に、敵に向いた状態で。

 エンリオットは、話した時には(すで)に灰色のナイフを手に持っていた。それに影天力(えいてんりき)を込める。

 その瞬間、オフィアーナが空中を中段()り。

「はッ!」

 ――その足から青い光弾が放たれた。

 男はエンリオットの方へ進むことでそれを()けた。

 その男の次の位置を予測し、オフィアーナは先の蹴りの勢いでぐるりと回り、再度――

「ふッ!」

 と青い次弾。同時に、男へ青い剣が嵐のように向かった。

 男はそれらの剣と光弾を()()()()()()()()()。それ(ゆえ)の音が遠くの茂みでした気がしたが、遠過ぎて剣を消されたようなものだった。男がニヤリとする。タタロニアンフィは少々(かん)(さわ)り、

「鋭き(つぶて)

 と唱え始めた。

 そして男の槍が差し向けられる。エンリオットに槍先が向いており――

 それは呼び動作無く、()()()

「――!」

 エンリオットは体の胸から下を煙化(けむりか)させた。それで()けた。

「青く()て無く光りて刺せ」

「はッ!」

 二人から、無数の青い光刃と、たった一つの青い光弾が飛んだ。

 それがエネルギーではあるものの現存の物体ではないからか、白髪の男は強く舌打ちした。だからか――

 男は、()()()()()()()()()()()()()()()

「な――!」

 オフィアーナはすぐに理解し、すぐに敵に触れようとした。自時間遅化(じじかんちか)を使う()だけは無かった。

 男は十歩分ほども退(しりぞ)いた。呼び込んだからこそオフィアーナから攻撃され()る、それを理解(わか)っていた。

 オフィアーナはタタロニアンフィの攻撃や自分の青い光弾を、その身で受けた。

「あがっ――!」

「オーフィ!」

「ふう、危なかった」

 そう言った男に、タタロニアンフィが怒りの目を向ける。

 そこへ灰色のナイフが飛んだ。

 男は近付くことで()けた。そしてその手にある槍を、なぜか地面に刺そうとした。そしてその槍が消えた。

 ナイフの着地点で爆発が起こったが、それを誰も気にしてはいない。

 ハッとした二人は上を見上げた。立ち上がって(かろ)うじてそれを見ていたオフィアーナも遅れて見上げた。

 エンリオットの頭上から槍が降った。

「くっ――!」

 身を(ひね)り、肩も煙化させ、()ける。

 と、槍が消えた。

(まさか――!)

 次は、そう思ったタタロニアンフィの頭上から降った。タタロニアンフィもまた新しく力を身に着けていた、こんな時のために。身体強化。瞬時に横移動で()けた。槍が消えた。

 それが今度はオフィアーナの頭上に現れた。降る。彼女は()えて(ほとん)ど避けず、手を差し出し、受け流すように触れ、削る能力で槍を消し去った。

「あらら、なるほど。じゃあ三本(まと)めて行くぞ」

 男はそう言って三本の白い槍を生み出し、ほくそ()みながらそれらを念力的に操作し、地面に刺そうとした。勢いのあるそれを、男が()()する。

 彼女らは、(ほとん)()けることだけを余儀なくされた。



 一方、天宮(てんきゅう)では。

 ドーナツ型の白い建物『天力(てんりき)道具関連所』の一部――その一階の右奥に儀式用具倉庫がある。その前に接続面から現れた天使ガサナウベル、照神(てるかみ)エデルエラ、天使ベージエラは辺りを見た。特にエデルエラは中庭を見た。

 ガサナウベルは、そこから円周状の廊下を確かめた。敵は見えない。侵入者は今この場所を探しているのか。

 ベージエラは、倉庫前の大通路――円周状の廊下から直角に外に向かって伸びた大きな道――の様子を確かめながら、大通路を外へ向かい、天力道具関連所の外も見た。人の気配や異変は無い。ベージエラは中へ戻った。

 その時――

 対岸二階の通路の何者かが動いた。それは跳び上がり、天井を蹴り、身をくるりと回した。その誰かがエデルエラの前に着地した。とんでもない速さの出来事だった。

 そこから()が飛び掛かった。

 エデルエラは男の気配に、天井の音以降で気付いたが、それでも彼女に攻撃は通らなかった。結界の盾を張った彼女は当然のように自分とその後ろを守れている。

 男が舌打ちし、対岸の通路まで退(しりぞ)いた。

 エデルエラはその瞬間、能力封印を念じた。男の力を全て封じるのは照神(てるかみ)にとって簡単だった。

 男は、身体強化した(はず)の体で飛び掛かったが、ただ走っただけとなり、恥ずかしさと(いら)立ちを(あら)わにした。

 そしてエデルエラが、自身から見て左から右に左手の()を素早く動かすと、男は右に吹き飛んだ。中庭の壁に衝突して動かなくなった――その時、エデルエラの(そば)に、上階から誰かが降って来た。

 その誰か――男が殴り掛かったが、結界の盾に弾かれる。

 だが、彼は、結界の()()()()して来た。エデルエラの背後にだ。そしてエデルエラに足(とう)を浴びせようと脚を伸ばし始めた――

 そんな彼は、ガサナウベルにより、ベージエラと位置を交換された。

「――! このっ!」

 そう言った彼がベージエラの前に瞬間移動しようとしたが、できなかった。一度は振り向いたエデルエラがその力を封印したからだった。

 エデルエラは、何を封印したかをその目で確かめることができる。男の周囲に視野内転移という字が天界の字で浮かぶ。ジャンズーロの時にも彼女が見たのはそんな形の情報だった。

 瞬間移動場所を限定しているが(ゆえ)に結界内にも来れたのだとエデルエラは理解した。

 そして、移動できないことにも軽く舌打ちした男に、ガサナウベルの(てのひら)からの衝撃波が向かった。男はそれを()けられなかった。壁に衝突。倒れた。

 ふう、と一息()いたその時、男が起き上がり、()け出した。今の一撃が少しも効いていない様子。エデルエラは(さら)に封印した。彼の周囲に浮かぶ文字を更に観察。

 衝撃増減という意味の天の文字が浮かんでいる。

(道理で)

 そして今度こそ――とはいえ今度はベージエラが跳び出し、左ストレートをお見舞いした。

 男は押し飛ばされた。沈む。今度こそ気絶。

 新しい力を身に付けたというのは、今の俊敏(しゅんびん)さからすると筋力的なこと、()しくは身体強化そのものだろうとガサナウベルは考えた。

(中々やるようになったな)

 ガサナウベルがベージエラを心で()めた時――倉庫前の、外とも(つな)がっている大通路の天井に穴が。その穴の形の天井が降って来た。

 落ちてきた天井には一人の男が乗っていた。

 彼がガサナウベルに向かって拳を放った、アッパーのように――それはなぜか地面に爪のような跡を残しながらで――それに気付いたガサナウベルは、それを喰らいながらも彼の腹を蹴った。彼が吹き飛ぶが、ガサナウベルからも血が。ただ、ガサナウベルは『対象すり替え』で、それを喰らったのを彼という事にした。ガサナウベルから血が出るのは瞬時に止まり、男の同じ()所から血が出始めた、傷はそこに。

 エデルエラがそちらを見、指を、男の腹を()ぐように動かした。すると、男は腕ごと胴を押されて地面に打ち付けられ出口付近まで押しやられた。そして動かなくなった。

 ガサナウベルとエデルエラとベージエラは最終的には無傷。そして、侵入者はこれで全部だろうかと、ベージエラは天界の携帯電話を操作し、続報を待った。

(本当に強くなったわね)

 と、エデルエラも、ベージエラを見詰めた。

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