ギルマスとの邂逅
「あ、そうだ。他の魔物……ゴブリンとか倒さなきゃ……」
リエルは疲れた身体に鞭を打ち、鉄剣を手に取り立ち上がる。
墓地の前で屯しているであろう魔物の群れへ向かって走り出そうとしたそんな時。
「大丈夫か!?冒険者だ!ダンジョンクリエイトが始まったという報告を受けて来た!」
「あ、冒険者……?来てくれたのか……」
冒険者を名乗る者の声が聞こえてきて、リエルは自然とへたりこんでいた。どうやら安堵したらしい。
「あ、居たぞ!あそこに生存者が居る!おーい!大丈夫かー!」
冒険者の男は大きく声をあげ、こちらに走りよってくる。
「君!君が冒険者ギルドに報告をしてくれたのか!?っと、これは……ミノタウロス、なのか?これは、君が倒したのか?」
リエルは色々と質問されるが一つ一つ丁寧に答えていく。
「えっと……冒険者ギルドに報告したのは俺、です。これはミノタウロスで合ってます。あと、これを倒したのも、俺、です」
そこまで返答をすると急にリエルに眠気が襲ってきた。
そのままリエルは睡魔に抵抗出来ずに深い夢の中へと落ちていった。
*****
墓地の空中で黒髪赤眼の男と青髪青眼の男の二人の男がリエルを見ている。
『ハッ、まさか本当にあの牛の首を斬り落としちまうなんてな』
『俺の魔法があったおかげってのもあると思うけどね』
『はぁ?ベースは俺の剣だぜ?』
『でも最後、俺の魔法がなかったらあいつ、倒せてなかったと思うよ?』
男二人の言い争う声が聞こえる。
英雄の二人、アルスとルーンである。言い争いの内容はしょうもないことであった。
『……あいつ、強くなるぞ』
突然、アルスは黒髪を掻きながらそう言い放つ。
『……ま、アルスの剣と俺の魔法を継いでんだからね。強く、というか、最強になってくれなきゃ困るよ』
ルーンは自身の髪と同じ綺麗な青い色をした目を楽しそうに細める。
その後、二人の姿は空気に溶け込み消えていった。
*****
「……んん……あぁ……ここは?いっ!てぇ〜!」
寝ぼけ眼を擦りながら起きると全身な痛みに悶えながら倒れ込む。
戦闘中はアドレナリンがドバドバ出ていた為、酷い傷でも動けていたが、戦いが終わり寝て休んだリエルはアドレナリンの効果が切れ通常に痛みを感じるようになった。
「ハハッ、落ち着けよ。ここはギルドの仮眠所だ。見たところ、激しい戦闘をしてたんだろう?なら休んだ方が良い」
横から声が聞こえ、びっくりして声のするほうを向くと黄色い髪色をした筋骨隆々の大男が椅子に座り骨付き肉にかぶりついていた。
(骨付き肉美味そう……!)
リエルは男の風体よりも骨付き肉の方に視線がロックオンしてしまった。
戦闘が終わってから腹の空き様が凄まじいのである。
「あー、この肉、要るか?戦いが終わって腹減ってるだろ?」
男はリエルと肉を交互に見ると遠慮がちに聞いてくる。
(流石に申し訳なさすぎるだろ!あと普通に俺食べ回しとか飲み回し無理なんだよな……。普通に後で自分で買おう。というか絶対買おう……!)
「いえいえ、大丈夫ですよ」
リエルは手と首を振り遠慮する。
「そうか。この肉美味いから気になったら買いに行けよ」
男は再度肉にかぶりつきながらリエルに言う。
「ありがとうございます……」
「そんじゃ、ちょっとは痛みも収まったか?ギルマスが話聞きたいって言ってたし、そろそろギルマス呼んでくっからギルマスが来るまでもう少し休んどけ」
男は椅子から立ち上がり部屋を出ていく。
「……あ、名前聞き忘れたな……。後でまた会ったら聞くか」
リエルは布団に倒れ込み拳を握り、突き出す。
(夢じゃないんだな……。英雄たちも、俺の力も、ミノタウロスを倒したのも……)
「…………絶対、もっと強くなる……!」
そう力強く言い放つと、タイミング良く扉が開かれる。
「おうっ!お前がミノタウロスをソロ討伐したっつう奴か?」
先程の男に負けず劣らずの筋肉をした白髪の男が入ってきて豪快に椅子に座る。
「あ、えと、そう、です」
急な来訪者に戸惑いつつ姿勢を変えようと動こうとすると、
「あー、大丈夫大丈夫、楽にしてろって」
男は手をひらひらさせながらリエルに楽にするように促す。
「俺はこのギルドのギルドマスターをやってるガントだ。よろしくな」
ギルマスのガントがリエルに向かって手を突き出す。
「あ、お、俺、リエルって言います」
リエルはギルマスという存在に緊張しつつ自身も手を出し握手をする。ガントの手はゴツゴツとしていて硬く、歴戦の戦士という感じがした。
「そうか。じゃあリエル。早速リエルに話を聞きたいんだが、良いか?」
ガントにそう聞かれ、二つ返事で承諾するリエル。
「おう。じゃあ、まずはダンジョンクリエイトを塞き止めてくれて助かった。礼を言う。イロアス大墳墓がダンジョン化なんてしたら教会や市民になんて言われるか分かったもんじゃないしな」
ガントは苦笑しながら言った。教会とは神英教会という世界的に有名な教会で神と英雄を讃えている教会である。リエルが神託の儀を受けたのも神英教会である。
「あぁ、確かにそうですね。『神聖なるあの墓地を魔物なぞに占領されるなんてどういう了見だ!』とか言ってきそうですもんね……」
リエルは頬をポリポリと掻きながら、こちらも苦笑しながら神英教会の信仰してる人たちの真似をする。
「あぁ、だから、まずは礼を言わせて欲しかったって訳だ。んで、こっからが本題なんだが……リエルお前、冒険者ギルドに登録してないだろ。この機会に登録しないか?」
ガントは不敵な笑みを浮かべ、提案をしてくる。
「冒険者、登録……!!」
リエルとしては何ともありがたい提案だったため、
「します!やります!依頼いっぱい、受けます!」
と鼻息荒く、二つ返事で了承した。
「ハハッ!良かった良かった!なら明日、ギルドカードの発行するから、ギルドの受付まで来い。今日はゆっくり休め。飯は後で用意させるから待っとけ。お前の名前を言えば話は通ると思うからな。あぁ、受付の場所は扉を出て左に行き、突き当たりを右に進めばあとは分かるはずだ」
ガントは一気に説明して来た時と同様に勢い良く扉を開け、消えていく。
リエルはその後ろ姿を唖然として見ていたのだった。
お久しぶりです!
名無しです!今日投稿したのも楽しんでもらえたらと思います!
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