二人目の英雄そして、決着
「『極剣術』!!」
リエルが叫ぶとリエルの手に鉄剣が吸い込まれるように握られ、ミノタウロスの斬撃を受け止める。
〈ブルルモオオォォッ!〉
ミノタウロスは先程までボコボコにしていた相手に防がれたのが気に入らなかったのか大きく吼え、勢いよく突進してくる。
「なっ!?ヤバっ!」
リエルは横に思いっきり飛び退き、突進を回避する。
ミノタウロスはリエルの後ろにあった墓に衝突し止まる。
「はあぁぁぁっ!!」
リエルは止まった一瞬を見逃さずにミノタウロスの背中を思いっきり袈裟斬りする。
〈ブモオォォォォォォアアッ!〉
ミノタウロスは背中を仰け反らせて大きく吼える。
(すげぇ……!俺、戦えてる!あのCランクモンスターと対等に……!信じられない……!)
リエルは自身の急激なパワーアップに戦闘中にも関わらず口元がニヤける。
〈ブルルモオオォォォォォォアアッ!!!!〉
ミノタウロスは背中を斬られたからか、リエルのにやけ面を見たからなのか顔に青筋を立て、勢い良く立ち上がる。
「まだ、やる気なのか……!?」
リエルの頬に冷や汗が流れる。リエルは警戒してミノタウロスの様子を見る。
するとミノタウロスの角が赤く染まっていき、真っ赤になった瞬間、ミノタウロスが全力で突進してきた。
(ッ!さっきより断然速い!あの角も不気味だ。ここは避け……!!)
リエルが避けようとした時、ミノタウロスがもう一段速くなった。
「なっ!?」
(これは避けられない……!!)
ミノタウロスの突進をモロに喰らい吹き飛ばされたリエルは墓に激突し、意識を失った。
*****
「あーあーあーあー、弱いのに調子に乗るから……。とは言っても、死なれても困るし……」
(誰かの声が聞こえる……)
リエルは重い瞼を開き声のするほうを向くと、青い髪をした男が居た。青い髪の男はリエルに近づき手をかざす。
「はぁ、骨がバキバキに折れてるし出血も酷いな……。こんなんになるまでどうして戦うかなぁ……?」
男の呟きを聞いていると身体の痛みが引いていく。
「うっ……あんたは……?というか、今の……?」
「うん?俺はルーン。魔術師。今のは簡単な治癒魔術だ。さて、質問には答えたし、次はこっちの質問に答えてもらおうかな」
男――ルーンは座っているリエルに視線を合わせ見つめる。
「しつ、もん……?」
「あぁ、簡単な質問だよ。何で、お前はそんなボロボロになってまであのミノタウロスと戦った?逃げればそこまで怪我をせず生き残れたはずだよ。命あっての物種じゃないの?」
ルーンの問いは最もだ。戦闘系職業でも無いリエルがあそこまでボロボロになるまで戦う理由が分からない。
そんな問いにリエルは戸惑う事無く答える。
「俺は……冒険者になって、最強になる……!それが……ここであの牛なんかから逃げてたら最強の冒険者になんてなれない!職業がどうとか、もう関係ないんだよ。職業が墓守だろうが何だろうが、俺は最強の冒険者になる!!」
リエルは強い意志を籠った瞳でルーンを見つめ返す。
ルーンはそんなリエルを見て、やがて口角を上げる。
「ハッ、馬鹿だね。そんなんで無茶して、死ぬかもしんない」
「だとしても……!」
「だけど、面白い。お前になら、俺の力が扱えるかもね。俺の魔法、使いこなして最強になってみろ」
そう呟き手を差し出してくる。
「……!ああっ!任せとけっ!」
リエルは勢いよくルーンの手を掴み立ち上がる。
するとルーンとリエルの間に半透明なあの時の何かが現れた。
『賢者ルーン・エクリプスの提案を受け入れました。墓守スキル 霊魂取得を発動させます』
何かを読み終えた瞬間、激しい頭痛が再びリエルの頭を駆け巡る。
「ぐっ……!また、かよ……!いってぇ……!」
「良いか?魔法を使いたけりゃ、その魔法について思い浮かべるんだ?したら魔法名が浮かんでくるはずだ。分かったな?」
リエルは頭を抱えながら頷く。その後、リエルの頭痛が治まると、視界は墓地へと戻り、ミノタウロスが突進する準備をしていた。
リエルは咄嗟に硬い壁を想像する。
「シールドッ!」
咄嗟にリエルの頭に魔法名が浮かぶ。リエルが叫ぶとリエルの中から何かが抜かれるような感覚を感じたあと、ミノタウロスが途中で止まり激しい音が鳴る。
「ほ、ホントに出た……これが、魔法か……」
リエルは初めて自分で使った魔法に感動している。
〈ブモオォォォォォォオオアアッ!!〉
ミノタウロスは自身の突進が止められたことが気に食わないのか何度も斧で力強く叩いてくる。
リエルは立ち上がり、剣を構える。
「……さて、そろそろ終わらせるぜ……!」
そしてミノタウロスへと走り出す。
〈ブモアアァァァァッ!!〉
ミノタウロスは大きく雄叫びをあげ、斧を振りかぶる。
「遅いッ!ウイング!」
リエルは風魔法でミノタウロスの首元まで飛び、剣を全力で振る。
「閃剣!」
鉄剣がミノタウロスの首に食い込む。
「うああぁぁぁッ!!フレイムソード!」
剣が火を噴きミノタウロスの首を焼き焦がしていく。そして、ミノタウロスの首を刎ねた。
リエルは着地し、地面にへたり込む。
「はぁ、はぁ、はぁ、やった、のか?俺が……。…………!シャアァァァァ!!」
リエルは握り拳を作り目一杯の勝利の雄叫びをあげた。
名無しです。今日投稿させていただきます。
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