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夏のホラー2022『ラジオ』

おばけトンネル

作者: 佐藤そら

「ラジオネーム“赤い永遠の少年”さんから頂きました。僕の近所には、幽霊が出ると噂されるトンネルがあります。4丁目4番地4号にあるその場所は、あの世に繋がっているとされ、通称『おばけトンネル』と呼ばれています。昔、親子がトンネル内で事故に遭ったと言われており、子供や若者が、度々肝試しに訪れるそうです……」

 

 


「お疲れ様でした」

 

 僕はラジオの仕事を終え、帰路を急いだ。

『おばけトンネル』、そう呼ばれているトンネルが、うちの近所にもあったような。

 僕は、とくに霊感もないし、そういったものをあまり気にしたことがなかった。

 人は、見えないもの、聞こえないものを信じようがないのだと思う。

 

 僕は、わざわざ何処かに出向いて肝試しをしようとは思わない。

 それは、彼らの聖域な気がして、侵してはいけない気がするからだ。

 土足で勝手に部屋に入り込まれたら、誰だって怒るだろう。

 

 僕はコンビニに立ち寄り、夜道を歩いていると、ランドセルを背負った少年が目の前を横切った。

 こんな時間に? 夜も深くなるころだ。

 子供が遊んでいていいわけがない。

 駆けて行くランドセルを背負った少年を、僕はなんとなく追った。

 角を曲がったところで僕は少年を見失った。

 

「あれ? 確かにこっちの方向に行った気が……!」

 

 僕は息を呑んだ。

 目の前には、トンネルがあった。

 そうだ、ここは4丁目4番地4号にある『おばけトンネル』だ。

 あのラジオで読み上げたメールのその場所に、今、僕はいる。

 トンネルの中は、切れかけた電灯がチカチカしており、薄暗く、トンネルの向こうは闇に包まれている。

 あの世に繋がっていると言われれば、そんな気もしてくる。

 

 ふと、我に返ると、先ほどの少年が目に入った。

 赤いTシャツに半ズボン、ランドセルを背負っている。

 まさか、こんな時間にここで肝試しを?

 

「キミ、こんな時間にこんな場所で何してるんだい? 危ないじゃないか」

 

「なんだよ、おじさん。家に帰るところだよ」

 

「家に? でもここって……」

 

「僕の家は、このトンネルの向こうなんだ」

 

「えっ、キミはここを通って、おうちに……?」

 

「ここを通らなきゃ帰れないんだ」

 

 僕はトンネルを見つめた。

 あのメールを読んだからだろうか、この先には行ってはならない気がした。

 

「おじさん、ついて来てくれる?」

 

 少年から、聞きたくなかった返答が戻って来た。

 彼もきっと、ここを通るのがきっと嫌なのだろう。

 

「えっと……そのぉ、他の道はないのかな?」

 

「おじさん、ビビってんの?」

 

 少年は笑った。

 

 

 僕は意を決し、少年と共にトンネルの中へと向かった。

 少年と僕の足音が反響し、進む度、妙なざわざわした声が聴こえてくる気がした。

 恐怖が、僕の体をこわばらせる。

 トンネルの真ん中あたりまで進んだところで、ふっと周囲の音が消え、僕の耳元で女性の声が聴こえた。

 

「おいで……」

 

 

「ば、ばけものだぁあ!!」

 

 僕は一目散に来た道を引き返し、トンネルから飛び出した。

 心臓がバクバクと音を立てている。

 

 僕は、トンネルの方を、ゆっくり振り返った。

 そこには、静かで薄暗いトンネルが、何もなかったかのように存在していた。

 


 あれ、少年は?

 少年がいない!!

 まさか、つ、連れて行かれた!?

 

 どうしよう!!

 あの赤いTシャツの少年が!!!

 

 

 ん? 赤いTシャツの少年……。

 あのメールを、ラジオに送って来たのは……。

 

 “赤い永遠の少年”

 

 まさか!

 

 ここは、親子がトンネル内で事故に遭った場所……。

 


 幽霊やおばけと呼ばれるものは、白い服を着ていて、髪が長く、足がない……。

 そんなテンプレートのような像が僕の脳内にはある。

 

 手も足もある、会話もした、あの少年が……!?

 じゃあ、あの声の女性は、母親?

 いや、そんなバカな……!!

 

 ラジオに送られて来たあのメールは、僕を呼んでいたのだろうか。


 僕はそれ以来、その『おばけトンネル』には近づかないようにしている。

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