7、(ざまぁ)話が噛み合わない
「お久しぶりです、父さん、母さん、グリットさん」
「いやぁ、たった二、三年見ないだけで立派に成長したみたいで、噂は聞いているよ」
「いえいえ、そんな大したことありませんよ」
「元気そうでよかった」
「栄養はちゃんと摂っているの?」
「まぁそこそこに」
久しぶりの再会、適当に雑談する私達、よかった、どうやら父や母、グリットさんは昔と同じようだ、ずっと戦場で命のやり取りをしていた私にとって二、三年ぶりの家族や親戚の楽しい雑談は暖かく、身に沁みた、久しぶりに心休まる気がした。
「それじゃあ早速で悪いが、結婚式の日取りでも決めようか?」
「はい?」
「おいおいグリット、少し気が早すぎるんじゃないか?、イヴは帰ってきてまだ二、三日なんだぞ?、イヴだって返答に困ってるじゃないか」
「これは失敬、ですが、戦争を終戦へと導いた、国の英雄たる彼女の結婚式は国民全員が気になっておるからな、私の好奇心を笑ってくれるな」
「もう、アナタったら言い過ぎよ」
「あ、ああすまんすまん」
「「「ハハハハハハ」」」
結婚式がどうの言ってくるグリットさんに目が点になる私、父と母も私が結婚することは確定事項という調子で話している、心底楽しそうに笑う三人、私だけ蚊帳の外の……いや、さっきから一言も喋らず顔を青くしているイザベラとアルフレッドがいるので私だけというのは違うか。
「いや、あの、結婚式って、私の結婚相手は誰なんですか?」
「うん?、何言ってる、君の婚約者で私の息子、アルフレッド以外いないだろ?」
「どうしたんだイヴ?」
「やっぱり戦場から帰ったばかりで疲れが溜まっているのかしら?」
もしかしたら急遽新しい婚約者でも決まったのかと、暗に探りを入れるも、やはりアルフレッドと結婚するという前提で話をしているらいし、アルフレッドとイザベラをチラ見するとただただ顔を青ざめている、ああ、こいつらまだ話してなかったのか、話の噛み合わなさに少し納得する私。
「えっと、私、アルフレッドとは結婚しませんよ?」
「「「は?」」」
グリットさんに少し悪い気もしながら、ちゃんと事実を伝える私、父と母、グリットさんは異口同音で間抜けな声を出す。
「す、すまん、もう一度言ってくれないか?」
「いや、ですからアルフレッドとは結婚できませんよ?」
「な、何故です??!!!何かウチの息子が粗相したのですか???!!!」
「粗相も何も、私が帰ったその日、家で妹と不倫してて、その後、彼に婚約破棄されました、ディープキスをしながら………」
「な、ナナナナ、い、今の話は本当のなのかアルフレッド…………」
「い、いや、ち、違うんだ父さん……か、彼女は勘違ーーーーーー」
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「……猫被っても意味ないってことか………」
「ーーああもう、ウザッッッ………」
「………それが貴方達の本音か………」
もう誤魔化せないと判断した二人は汚い本音をブチまける…………。
「イヴ……君との婚約は破棄させてもらう……だってイザベラの方が可愛いし、ペンドラゴン家の次期当主になるからね……」
「残念だったね……お姉ちゃん~」
「…………………わかった……じゃあね………」
ここぞとばかりに婚約破棄してくるアルフレッド………そしてあろう事か私の目の前でディープキスを見せつけてくる………妹も煽ってくる………脈や発汗を観察している限り……嘘をついている様子はない………私は一瞬、二人の頭を握りつぶしたい衝動に駆られたが………残っていた一欠片の理性でなんとか抑え込む………旅支度は帰ってきたばかりなので終わっている………家の中を適当に見て回ったが……私の物はほとんど捨てられていた………残っている物を適当にバックに突っこむ………リビングから不愉快な男女の営みが聞こえてくる…………その音を無視して私は家の外へ出る………。
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「私がどこをどう勘違いしたのか、説明してくれるとありがたいな、アルフレッド」
「な、な、な」
「これは一体どういう事だ、アルフレッド、キサマ、貴族同士の婚約をなんと心得る」
私は後々すっとぼけられても困るので密かに一部始終を魔道具で撮影していた、撮影していた映像を全員に見せると、アルフレッドは金魚みたいに口をパクパクさせる、憤慨するグリットさん。
「そ、それじゃあ私はこれで失礼ーーーー」
「どこに行くつもりなの、イザベラ?」
「きっちり説明してもらうぞ」
妹がそそくさと逃げようとするも、母がそれを許さない、肩を掴み引き止める、ミシミシと音が聞こえてくる、顔は笑っているが全く笑っていない両親は妹へと詰め寄る。