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公爵令嬢の新しい日常

マユリ「レニーちゃんの話」


ハツネ「かなり振り回されてるよねえ」



 初めまして。わたくしはレニーウェル=バレットと申しますわ。公爵家の長女でございます。


 現王陛下グレン様の弟、グロリアが私のお父様に当たります。領地は王国の直轄領を分けたものですが、元々管理していた代官がそのまま治めているので名目上の管轄ではあります。税金はいただけているのですが申し訳なく思いますわ。


 税金はお父様が管理するのですが、その、怒らないでほしいのですが、お金は職人の皆様や仕事をしてくださる人々を潤すために多少の無駄遣いをしていますの。


 マユリに言ったら「経済は回すものだから貯金より無駄遣いの方が世の中のためになるよぉ」と言われました。もちろん余裕がある場合の話だそうですが。全知全能の神のマユリは、だからこそ的確なアドバイスはしないそうですけど、私が悩んでいたから答えてくれました。……女神様が友人で良いのか真剣に悩みますわ。


 そもそも私はそんなに綺麗な人間とは思えません。公爵家の人間としてお金や権力で横暴を振るっていた部分は間違いなくあります。私の意見で商家を潰したことさえあります。


 それが良いこととは思いません。いいことではないでしょう。しかしそれもマユリに言えば「反省してるのにその上で叱るのは私の役目じゃないなぁ」と、言われました。確かにいちいち女神が叱責して回るのはおかしいですね。人間には人間の責任があるのです。


 幼い頃、私は同い年だということでユノ殿下と顔を会わせる機会がありました。実際親戚、従兄弟なので不思議なことはないのですが、貴族の体質はこの頃には備わっていましたのでかなり堅い挨拶から始まった記憶があります。冒険者志望のユノ殿下です、嫌そうな顔をしておられました。


 今にしてみれば分かりますがマユリに言わせると「自分の事情を話さずに押しつける方が悪い」とユノ様を叱責していましたね。マユリは本当に友達として私を見てくれる。尊くてなかなか普通には振る舞えません。女神様ですわ。


 一般的に見ると真理に沿うのみの思想は鋭利な刃物のように受け入れがたいのだとは思います。真実は人を傷つけるとも言います。でもだからといって無視していても現実はそこにあるものです。逃げられませんわ。


 マユリは全てを知っている神です。きっと必要なら私の心も覗くでしょう。私たちには私たちがなすことを速やかに実行する義務があります。女神(お客)が来る前に掃除をしておけという話ではあるんですけどね。


 実質私の取り巻きは裏で犯罪を犯している貴族の家の者が多いです。被害者ではあるんですよ。子供ですから。なので、遠ざけるだけですんでいます。アリスによるとそのままなら巻き込まれて断罪される予定だったそうで。


 アリスについては、マユリからも神気を使える聖人と聞いていますので、未来予知ができるのだと思っております。恐ろしい未来を回避できて良かったですわ。


 本当なら私が聞いた罪を犯した貴族たちに国を歪められたはずなんです。帝国との内通者もおりました。私が幼い頃から調査した範囲ですら相当な汚職や権利の乱用による庶民への虐待が見られました。おぞましく感じますわ。それゆえその子女に叱責をすることも多く、私は高位貴族の身分にありながら遠ざけられておりました。ユノ様にも苦言をいただく始末です。


 ユノ様と出会ったのは十年前になりますか。甘い話はありません。ほとんど挨拶しかしませんでしたから。でも一度自宅の庭の東屋で話をした時には真摯な話し方なのに冒険者になりたいと王族らしからぬ夢を語られて、なんでしょう、胸が暖かくなったのを覚えています。私も貴族らしからぬ夢を覚えてしまったのです。二人で冒険、それもいいかもしれませんね。そう答えた記憶がありますわ。


 それは閑話休題として、犯罪を犯す貴族たち。私は貴族とは言え子女、どうしても強権を振るうまでは行きません。苦々しく思っていたのです。アリスにいうとなぜか滂沱ぼうだの涙を流されましたが。悪役令嬢はだいたい正義の味方? 意味がわかりませんわ。実際私の権力を振り回したら暴力ですわよ?


 周りの貴族たちの不正やいやらしい思想にはとうに気づいておりましたが、私がだから処断する、そんな能力はありません。お父様も貴族にしては緩い方なのですが、さすがに証拠を掴まずに処罰するのは難しいようで、私は鬱々として日々を過ごしておりました。


 そんなある日、お父様がおかしなことを言いだしました。「お前が言ってた貴族全員処罰が決まった。あと明日は入学式だな。女神様が来るからしっかりサポートしておけよ」と。


 いや、いや、お父様? それだけで理解できたら神様ですよ?


 もともと父が感性だけでしゃべるのは知っておりましたが「罠だらけのダンジョンがゴーレムになって踊ってる」という評価で、背筋が寒くなるには十分でしたわ。


 しかし罪人は裁かれたのです。喜ばしいことだと思いました。


 翌日の入学式、不敬とかそんな話じゃないくらいダイレクトにマユリに挨拶をされました。私は一応高位貴族なものでそういった挨拶を受けたのは初めてでした。思えばここから私の価値観は崩れていったんですよ、マユリ。


 それからは常夏の楽園やカラフルダンジョン、女神の作るごちそうや楽園の果物を使ったスイーツの数々。マユポンで遊ぶ毎日。勉強もみんなでやれば捗りました。



 マユリ。幸せすぎるのですがなにを返せばよろしいですか?






アリス「悪役令嬢って頭がいいから逆に色々すれ違っちゃうんだろうなぁ」


マユリ「今はレニーちゃんはたまにユノくんとカラダン潜ってるよ」



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