走園会
マユリ「走るぞ~!」
アリス「やるぞ!」
今日は待ちに待った走園会の日だよ。この世界の人の身体能力だと四キロは短すぎるけど、全員がいっぺんに走るわけじゃなくて学年ごとらしい。それに任意参加で八キロコースや十二キロコースもあるみたいだよ。さらに上級生は四十キロランもあるそうだ。キツそう。それでも一時間かからないんだから魔法世界ってどうなってるんだろうね?
まあそうでもないとドラゴンとかと戦えませんね。
「マユリ~、おはようございます」
「レニーちゃんおはよー! 楽しみだねー!」
「えあ、ダルぅ……おはよ」
「アリスもおはよー! また徹夜?」
「ちょっと今書いてるやつがあとちょっとだから……」
「小説ねぇ。内容どんなの?」
「あんたにはちょっと早い」
「ああうん分かった」
男の子同士とか女の子同士とかの恋愛小説が今王都で出回っているらしい。だいたいアリス、ハツネお姉ちゃん、ナビさん辺りのせい。ナビさんのはコメディ路線らしい。読んだことはないよ?
「おはよ、三人とも調子は……悪そうだねぇ」
「おはよーございますユノさま」
「おはようございますユノ様」
「おはよう……ございます、殿下」
「ユノでいいよアリスも。さみしい」
ユノさまは冒険者志望だから距離を置かれるみたいな尊称は嫌らしいよ。まあ友達と距離あるの嫌だよね。対外的には不味いけど仲間内ではこれでって感じ。でも継承権は放棄はしても王家を出るわけじゃないらしいからやっぱり貴族の前では尊称が必要だろうね。卒業までは四年もあるんだからそれまでになんとかするのかも知れないね。
「おーし、今日はやんぞバット」
「負けねーよミリアム様」
「俺も熱くなるぞ!」
「走るなら負けない」
脳筋四人組だよ。ミリアムちゃんとバットくんはなんかライバル関係らしい。マレインくんはインテリなとこあるのに戦いとなると燃え上がるよ。シレンくんはニンジャ。ニンジャはパルクール強そう。
私たちは一年生グループなので最初になる。私は装備をMMOのクノイチ・白に着替えた。ファンタジークノイチだけど花飾りとかついてて可愛い。クノイチシノバナイ。
「か、可愛らしいけれどずいぶんピッチリしてますわね……」
「げえ、伝説のシノバナイ!」
「アリスもあのゲームやってたの?」
MMORPG、紅蓮っていうゲームだ。職業を選んだりキャラクターを作ったりは普通なんだけど唐突に「世界は滅亡する!」とか叫ぶメガネの異星人が出てきたり「人狩り行こうぜ!」が口癖の血のついた包丁を持った狸型ロボットが出てきたりゴブリンになって異世界転生したりするぶっ飛んだ内容だった。
「一時期めちゃ流行ったじゃん[後退の小人]とコラボして」
「あったあった。この装備は無料コインガチャでもらったんだよ」
「へえー。その装備ネタ的にも騒がれたもんねー」
「よ、よく分かりませんが貴重なのですね……」
「忍ぶ? シノバナイ!」
「アリス面白いそれアハハハハ、シノバナイ☆」
「ぶははははは!」
「ぷっ、クスクス……」
そんなことやってたから私たち三人はうしろの端からのスタートになったんだよ。レベル落としてるから不味いかも? まあ直感とか神技より下のスキルは入れてるけど。神眼はオフにできない仕様。
誰かがマイクみたいなもので解説してるよ。開会式は並ぶ前に終わってる。レースのルール説明らしい。これは予習済みだよ。
『いちについてー!』
お、来たよ。みんな構えたね! ちなみに配信は始めているよ!
(カレー:どういうレース?)
(コメント:異世界版パルクールらしい)
(サトリ:魔法妨害あり)
(カレー:やべーじゃん)
パァン、と音が上がり、みんなかなりの速さで走り始めた。レベル20前後の人でも地球人とは比べ物にならないのにさらに身体強化もあるよ。ちなみに一般の成人男性で運動は苦手じゃない人が十くらいかな。なのでこの競技を無理やり地球基準で言うとすると、オリンピック選手がバフを使ってパルクールをする。そんな感じ。速い速い。
ちなみにスピードだけじゃなく体力も高い。普通に短距離とマラソン両方走れるのがこの世界の人だ。赤い筋肉も白い筋肉も魔力で調えられている。まあ魔物と戦って進化してきた生物なんだよ。戦車や家屋と殴り合う感じ?
「マユリ、ずいぶんうしろでのんびり走ってるな」
「彼女は戦略とかは無縁そうですから」
ユノさまとクリスくんがなにか言ってるよ。バカにされた気がする。ちなみに耳もスキルを解いてるので普通にしか聞こえない。直感がささやいたのだ。まあいいや、追いつくからね! 追いつかなかったら長距離も出よう……。
コーナーを壁を走って前の人たちを抜き去る。もう一キロ走っちゃったよ。抜けるかなぁ?
アリスもついてくるしレニーちゃんもぴったり来る。うしろも怖いぞぉ。二人ともおっぱい揺れてますよーとか言ったら止まるかな。私も揺れてた!
第二区画は道を遮る植え込みの上を跳んでいく。ここで脱落者が出始める。足の引っ張りあいで足元の土を盛り上げたりして足止めをかけてくる。逆風を起こしたり足元を泥水に変える。直接攻撃じゃなければなんでもありだね!
「しのばな~い☆」
「さすがに速いわねマユリ!」
「負けていられませんわ!」
第二コーナーも回って前方が見えてきた。私体力は神体だから無尽蔵なんだよね。これもオフにできないやつ。レベル20でも負けないよね~♪ みんなのレベルの方が高いから体力配分を間違えなければ私に勝てるはず。アリスとレニーちゃんには並ばれた!
「まてまて~♪」
「うおっ! もう来た!」
「くそ~!」
ユノさまとクリスくんを捕捉!
二人を第三コーナーを使ってパスするよ!
前にはマレインくんとニンジャシレンくん。はやっ! 第三区画と第四区画でしとめるよ!
「うおおお!」
「な、っはやっ!?」
「シノビはっけーん! きゃはははは☆ シノバナーイ☆」
「まてマユリ~!」
「タフですわね!」
コーナーで置いてきたと思ったアリスとレニーちゃんも来た! 第四コーナーを曲がったら最後は半分、五百メートルだ! お、マレインくんが堀に落ちた! ラッキー☆
「まてニンジャ~♪」
「ぬおおおおおっ!!」
「まてふたりー!」
「アリス、タフだなあ!!」
「くうー!」
「レニーちゃんは限界かな?」
あとちょっと、だけど足りないかも~!
ゴール!
結果はギリギリの二着でした。ニンジャには勝てなかったよ。シレンくんが優勝~。
(仰ぐ:負けたか~)
(カレー:マユ姉乙)
そのあとは上級生の試合だけ見たよ。二年生はマレインくんのお姉さんのアスカさんが完勝。かっこいいお姉さんなんだよ。イルギス殿下がチームに誘ってた。三年生はクリスくんのお兄さんで次男のレオンさんと宰相の孫のクラヴィスくんが争ってレオンさんが勝った。文官の家の人なのに脳筋だよ。四年生は辺境伯の嫡男、ミリアムのお兄さんのサフィアスさんがイルギス王子さまを抜いて勝ったよ。さすが次期辺境伯。
そのあとは長距離の戦いがいくつかあったけど、みんなとお弁当食べたのがいちばん楽しかったよ♪
アリス「たまにはスポーツもいいよねえ」
レニー「マユリに勝てないのは分かりますけどアリスにも全然勝てませんわね」




