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第七話(完)

カンカンカンカン、と鐘のようなものが鳴る音がした瞬間、敵軍はどっと王都から去っていった。

数名、捕虜として捕らえられたが、敵の逃げ足は早く、私たちに止める術はなかった。

後に残ったのはほぼ壊れた王都と多くの死体だった。


「終わったことですし、シェーナを迎えに行きますか」


「ああ、そうだな」


「貴方には言っていません」


私は肩をざっくりと切られていたが、なんとか傷口を塞ぎ、ずっと戦い続けていた。

殿下に至っては脛をぱっくりやられ,治癒魔法をかけることなくずっと戦っていた。


「ようやく、シェーナを死なせることなくこの戦争を終わらせることができた。なんで終わったのかは謎だが」


「あの鐘は一体何だったのでしょうか。どんな重要なことが……」


「ニュクス様、失礼します」


殿下と話している最中に、慌てた様子の部下がやってきて、悲痛な表情で報告した。


「敵軍の拠点跡で頭領と指示官、竜、そして、シェーナ様の……」


「シェーナの、何だ?」


「死た……」


その瞬間、弾かれたように私と殿下は転移をした。


「ああ……」


残酷な世界に私は絶望した。






この国の平和と引き換えに彼女はいつも死んでしまう。

頼みの竜も今回ついに息絶えてしまった。


「お前でも、彼女を守れなかったじゃないか」


殿下の、突き刺さる視線が痛い。


「八回も失敗している殿下に言われたくありません」


今日は彼女の葬式の日。

王都復旧作業が完了し、王都は前のような活気を取り戻しつつある。

フィーユ国は頭領を取られたこと、第二皇子の独断での侵略であり、フィーユ国の総意で攻めたことではないこと、等を説明する親書をフェーヤ国へ送って多額の賠償金をフェーヤに支払った。

フィーユ国の第二皇子は勝手なことをしたという罰で監獄行きになったそうだ。

過剰な罰ではないかと思ったりするが、彼女を死なせた元凶ということもあり、正当な罰かと思う自分もいる。


「今回は、完璧だと思ったのですが」


「大切にしすぎて性格をきちんと把握していなかったお前のミスだ」


そして、お互いにどっちが悪いという言い合いから悪口へと移っていった。


「そもそも、その口調が気色悪いんだよ」


「私は、その直情的な感じが気に入りません」


夜遅くになり、その場には二人しか残っていなかった。

その時、後ろから足音が聞こえた。


「まだ続ける予定ですか、その言い合い」


その声に、ハッとした。


「シェーナ」


私は、ゆっくりと首を回し、シェーナの姿を見て思わず抱きしめてしまう。


「シェーナ、シェーナ」


一回目の時から愛し、しかし、権力に勝てず、いつも殿下に取られていた彼女。

ああ、彼女が目の前にいる。

死んではいなかったんだ。

抱きしめる力を強くして何度も名を呼ぶ。

殿下が、やめろ、と言っているがそれを無視し、シェーナをただ抱きしめた。


しかし。


「あの、シェーナ、とは、誰の事でしょうか」

これにて完結となります。

ここまで良んでくださり、ありがとうございました。

謎なまま残った部分は、迷いましたが、明言しないことにしました。

想像にお任せします。

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