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第B話 ロボの性感帯

 美由宇の顔がアリスの耳元に接近する。大好きな美由宇が近づいたことで、ウサギの耳を掴んだアリスの手は汗ばんでいるように見える。


 そんな気持ちを知ってか知らずか、美由宇はクンクンとアリスの身体の周りを猫のように嗅ぎながら歩き続ける。


「にゃー。栗鼠から高そうな香水の匂いがするにゃあ……お嬢様なのかにゃあ」

「そ、そんなことないですよう、飛田万里様、近すぎてアリスは……はあんっ!」


 アリスは複雑に思いながらも首筋をクンクンと美由宇に嗅がれるがまま嬉しそうに悶えている。アリスもロボのはずなのだけれど、人間と同じように性感帯があるらしい。


 アリスの博士の趣味だろうか。

 みかんの童貞クソニート博士と言い、博士と言う職業には変態が多いのかと首を傾げたくもなる。


 と言うか私とみかんの存在が、すっかり忘れられている気がする。


 話の趣旨は、女子高生お悩み相談ツインズにアリスが入るかどうかなのだから、私達が話の中心になっているべきだと思うのだけれど。


 もっと言えば、美由宇が、私たちに断りもなくアリスを仲間に入れようとか提案するのは有り得ない。


 なんか色々と考えてたらイライラしてきた。ここはちょっと美由宇に一言物申さないと私の気が収まらなくなってきた。


 私は我慢できずに、2人の間に割り込もうと声を上げようとした。


「ちょ……」

「おーい。何で美由宇は、そんなに栗鼠ちゃんを仲間にしたいのだー? てへぺろ」


 私が突っ込む前に、みかんは冗談ぽく美由宇に問いかけた。


 いきなり美由宇に向かって文句を言わず、まずは彼女の言動の根拠を聞いてから話を進める、言わば模範的な行動だった。みかんって変なところ大人なんだな。


「にゃ? にゃんで……んーにゃんかあ、栗鼠は……師匠と同じ匂いがするのにゃ。だから、きっと師匠と栗鼠が仲間になれば、力を合わせたら物事が上手く運ぶと思ったにゃ!」

「仲間、ねぇ……てへぺろ」


 みかんは意味ありげに呟いた。

 そう。アリスは仲間どころか私たちの強敵なのだ。きっとここに美由宇が居なければアリスは、すぐさま私達に攻撃を仕掛けてくることだろう。そこを見抜けない美由宇も、まだまだ考えが浅いと言うところか。


 そんなこともお構いなしに、美由宇はアリスの勧誘を続ける。


「そうにゃ、仲間にゃ! 栗鼠は美由宇の仲間になるのにゃ!!」

「飛田万里様とアリスが仲間……?! きゃー!! きゃあきゃあ!! 入ります入ります! 女子高生お悩み相談ツインズに入って飛田万里様にご奉仕しますううう!!!」


 アリスは美由宇の仲間発言に両手をあげて、ぴょんぴょんと跳ね喜び狂気乱舞した。


 アリス……お前、それでいいのか。


「仲間にゃー! だから栗鼠も師匠のことを尊敬して下僕としてついて行くのにゃ!」

「きゃ……あ? げ、下僕……この私が、胡桃沢みかんの下僕です、、、って?」


「そうにゃ? 当然にゃ。みゅうは師匠の下僕なのにゃ。にゃぜなら! 女子高生お悩み相談ツインズのトップは師匠だからにゃ!」

「げ、げぼ……く……」


 おおーアリスに対して言い切った。


 普通に考えて、攻撃力最高ランクUS+のアリスが、みかんに対して下僕宣言を受け入れるとは到底思えない。


 アリスは愕然として、ガクッと膝をついた。


 アリスの脳内は、今まさにプライドを取るか、美由宇を取るかの両天秤に揺らいでいる。私としては、是非プライドを取って欲しい。アリスと仲間だなんて日々恐怖でしかないぞ。


 私は、みかんの耳元でこそっと囁いた。


「ちょっとーこのままでいいの? 私はアリスと仲間なんて嫌だからね。ぜーったい陰で攻撃してくるよ……?」

「だよねー。僕も禿同(はげどう)だよ。てへぺろ」


「バカなこと言ってないで何とかしなさいよ!」

「りょ!」


 みかんは私に向かって敬礼をし、美由宇に向かって声をかけた。


「美由宇よ。我は栗鼠を認めてはいないぞよ。」

「し、師匠!! 何故にゃ?!」


 よしよし。その調子その調子。

 美由宇は、みかんが異を唱えるとは思っていなかった様子で、慌てふためいている。


「栗鼠からは邪悪な空気が溢れだしているのだあ。てへぺろ」

「にゃ、にゃんだってええぇぇぇ?!」


 みかんの適当な言葉に対して、驚き尻もちをつく美由宇。


「おい! てめえテキトーなこと言ってんじゃねえぞゴルァァァ!! ……あっ!!」


 ずっと黙っていたアリスだったけれど、堪らずに乱暴な言葉を みかんに投げかけた。動揺して冷汗を流すアリスに対して、みかんは追い打ちの言葉を投げかける。


「見たまえ美由宇よ。早速、栗鼠から邪悪な言葉が飛び出したぞよ。あーめんてへぺろ」

「ほ、ほんとにゃ! 栗鼠……まさか……」


 みかんの言葉に流された美由宇は、恐々とゆっくりアリスの方に視線を移す。アリスは両手を前に出してブンブンと手を振って否定する。


 アリスの手の動きに合わせて、ウサギもブンブンと振り回された。


「ご、誤解ですう、ちがいますよう! さっきの極悪人の言葉を真似してみただけですう! えへへ」

「なるほどにゃあ……確かにさっきの極悪人なら言いそうなことにゃ……」


 流されやすい美由宇なのであった……

 さっきの悪人って、きっとマリーのことだな。美由宇の中でのマリーは、極悪非道キャラに作り上げられている。しかも、極悪人とか名前で呼んでもらえないとかマリーが可哀想でしょうがない。


 だけれど、ここは人のことを心配している場合じゃないよね。だってこのままじゃ、なし崩し的にアリスと表面上の仲間になって、毎日ビクビクと過ごさなければならない。


 私が心配そうにアリスの方を見ていると、場の空気を感じ取ったのかアリスが私の方に近寄ってきた。


「あ、そーだ! 胡桃沢あかねさん。ちょっといいですかあ?」


 ニコニコと微笑み、ズルズルとウサギを引きずりながら私の方に近づいてくるアリス。そして、両手を後ろに回し、前かがみになり私の耳元に口を近づけ囁いた。


「…………」

「!!!!」


 アリスは、私にニッコリと微笑みかけ、用件だけ伝え終わると、美由宇の元に戻っていった。


「栗鼠! なんにゃ?! どうしたにゃ?!」

「なんでもないですよお。胡桃沢あかねさんに、よろしくね♪ って挨拶しただけですう」


「にゃるほどにゃ! 良い心掛けにゃ! でも順番が違うのにゃ! 真っ先に師匠に挨拶するのが礼儀ってものにゃ!」

「あ、そうでしたあ! 胡桃沢みかんさん、アリスと仲良くしてくださいね!」


 みかんにニッコリと微笑み首を傾げて笑顔で挨拶をするアリス。


「ああーーー……ヤバい展開だねコレ。てへぺろ」


 みかんは困ったように頭を掻きながら呟いた。

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