私は腐女子
オトコ……?
彼氏……?
挙句の果てに、セフレ……?
そんなものいらない。そこまでして男に媚びる必要なんてあるのかな。アナタ達にプライドは無い訳?
女のことを性的玩具としか考えていない、顔と胸しかみていないクソ男。
奴らは、私たち女を人間では無く物としか見ていない。見た目が可愛くて胸が大きければそれで良いのだ。中身なんてどうでもいい。
要は、ヤレればそれで良いのだ。
もちろん、ブスの僻みでは無い。
どころか、私が外を歩けば、必ずモデル事務所のスカウトから声を掛けられる。それくらいには美人なのだ。自分で言うのも、どうかと思うけれどね。
それに私は、リアルの男、もっと言えば、恋愛に全く興味が無い。
そう。
全く、だ。
ここまで言えば、勘の良いアナタ達ならわかるんじゃない?
私は腐女子。
俗に言うBL好きの腐女子と呼ばれる人種である。
そう、私は二次元のイケメンたちに夢中なのだ。彼らなら私のことを裏切ることは決してないし、私を元気づけてくれるし、都合の良い時だけ一緒にいてくれる。
――最高では無いか。
なんて、偉そうなことを言っているけれど、私が腐女子であることは皆には秘密。
一応、高校では学年首席の成績でクラス委員長。クラスメイトからの人望も厚い方だと思う。
それに女子からもラブレターを貰うことも少なくない。成績優秀、品行方正、文武両道、美人薄命……って、最後のは違うか。
それと、私の部屋だって腐女子の欠片もないくらい、ごく普通の女子高生にありがちな可愛い部屋が演出されている。ピンクが基調で、クマさんのぬいぐるみ、もふもふの抱き枕、友達と映っている写真……完璧だ。
ただ、ひとつだけ問題がある。それは、部屋の奥にある鍵付きクローゼット。そこだけが、私の本性が隠されている、云わばミステリアスゾーンだ。
そして、その鍵付きクローゼットの中には……私の楽園、BLワールドが広がっているのだ。そこには家族、いや、家族にこそ見せることのできない腐女子のワンダーランドが広がっている。
誰にも決して見せることのできない私だけの楽園。もちろん誰にも見られないように、クローゼットの鍵は肌身離さず持ち歩いている。
と。
さて、もう夜中の2時になってしまった。
明日も学校だ。
流石にそろそろ寝ないとヤバい。優等生の私が、授業中に寝るなんてこと絶対に有り得ない。絶対に、だ。
――コンコン
――コンコン
窓を叩く音がする。
……え?
ここはマンションの5階だよっ?!
ありえない!
怖い!!
き、気のせい……だよね?
――コンコン
――コンコン
再び窓を叩く音がする。
気のせいじゃなーーーい!!!
やめてやめて!
誰か助けて!!
これは、どう考えても聞き間違いじゃない。明らかに窓をノックする音だ。
どうしようどうしよう。
お母さんを呼ぼうにも恐怖で身体が固まって動かない。
――せーの。
――ガシャーーーーン! っと。
ぎゃああーーーー!!
窓割ったーーーーー!!
動かない身体を無理矢理動かして、窓から一番離れたところに逃げる。人間、やれば出来るものだ。
怖い怖い怖い。
お母さん助けて!
こんな大きな音がしたのに何で助けに来てくれないの?
やばい!
絶対ヤバいやつだこれ!!
「こんばんわー。夜分すみませーん。てへぺろ」
恐々と顔を上げると、私の前に美少女が立っていた。