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 快調!


 寝てすっきりしたのか、胃の妙な重さはすっかりなくなってしまった。お菓子の量に関しても、お茶会への課題だな。

 ここの生活は三食きっちり出るし、ディルミックも基本デスクワークばかりで、さほどカロリーを消費する生活を送っているようには見えない。たまーに外へ出ているところも見るが、圧倒的に執務室へこもっていることの方が多い。

 というか、そもそも甘いものが口にあうとは限らない。お菓子がなく、甘いものが身近にない生活を送ってきたのなら、普通のお菓子ではくどく感じるかもしれない。

 それにあわせてお茶を苦め、渋めにする手もあるけれど、ディルミックにとってそれが最善かは分からない。ご飯を食べているところをみるかぎり、さほど好き嫌いがあるようには見えないけど。


 こうしてあれこれ考えるのは、結構楽しい。わたしも立派なマルルセーヌ人である。


 しかしこうしては居られない! 今日はコンロ設置のために職人が来てくれる日だし、なにより金庫が来る!

 この世界にも一応銀行があるにはあるのだが、王都を始めとした主要な都市でしか利用されていないらしい。カノルーヴァ領にはないのだとか。わたしの田舎村にも当然なかった。

 下手に王都に預けるより、ここの屋敷に金庫を構えた方がよっぽど安全である。離れとはいえ、貴族の屋敷だし。強盗とかに対してセキュリティはある方だろう。

 わくわくしながら起き上がる。


「…………」


 ふと、気になって、ディルミックが寝ていたはずのシーツを触る。冷たい。

 まあ、ディルミックがわたしより早起きなのはいつものことだ。わたしだって、日の出と共に起きる人々がいるような村にすんでいたのだ、起きる方は早いと思う。

 それよりもさらに早いとは……顔を見られたくないのかな。


「……不公平では?」


 わたしは寝るのも早い方で、ことが終わって体を拭けば、数分で寝入っている自信がある。ということは、寝るときも起きるときも、ディルミックはわたしの寝顔を見ているということで。

 気の抜けているところをわたしだけさらしているのは……なんだか不公平の様な気もする。

 わたしだって一度くらいは見てみたい。あの顔の造詣の良さだ。寝顔だって美しいに違いない。多分、それを言ったらディルミックには否定されるし、また全力で怒られるだろうから言わないけど。


 ――コンコン。


 ドアをノックする音が聞こえる。ディルミックの私室に繋がる方ではない。この部屋の本来の入り口である、廊下から入れる扉が叩かれた。


「奥様、起きてらっしゃいますか?」


 ミルリの声だ。――ミルリの声!?


「起きてる! うわ、寝坊した!? 部屋行きます、部屋行きます!」


 わたしはベッドから飛び降りてわたしの私室へと向かった。普通に寝坊じゃないか、誰だ、わたしだって起きるのは早い方とか言ったやつ。わたしだけど。

 こんなんじゃ、ディルミックの寝顔を拝むのは、先になりそうだ。

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