第七話 黒の聖女は亜人と話す
まあその結果この教会に連れてこられたんだよな。
それから二か月間修道女として女性のしぐさの徹底矯正および魔人に対しての教育などの研修期間を終えてようやくギルドに就職できたのだった
因みに最初の戦闘でスキル開放一枠『アサルトアサシン』が開放。
そして連れてこられた初日にアイナとニーナからそれぞれ譲渡という形で
『アイズアンドイヤーズ』そして『リバティレディ』のスキルが開放された。
アイズアンドイヤーズは目と耳の知覚増大。ぶっちゃけ二キロくらいなら遠隔視が可能である。
まあ本家のアイナは20キロ四方が効果範囲なんだけどそんな情報量処理できるわけがないのでこの程度でいい。
そして何より便利だったのがニーナに開放指導してもらったスキルのリバティレディ
これはいわば変装スキル。人としての見た目をいじることも可能という某大泥棒の孫のびっくりの変装スキルであった。
これで研修中は地味目栗色髪のおさげっ娘の姿になりニーナの部下として忙殺させられていたし。
現在の金髪ゆるふわパーマ姿にもなることができている。
このスキルはプリセット機能もあるので現在はアイナたちと同じく今の姿をデフォルトとしている。
本体といわれる黒髪前下がりボブは裏の仕事。黒の聖女モードというスタイルにしたのである。
因みに姿、身長、髪色髪型、など自由にいじれるのだが肝心のお胸だけは調整項目がなかった
貧乳のステータスは伊達じゃないってか。目の幅涙を流す日が来るとは思わなかったよ
あと今目の前にいるクリスからは魔術使用可能スキル『サークルカノン』をいただいたのだが強力な分今の私には使うところがないので自重である
だって今のところ忍者みたいな仕事しかしてないしね
それと初めて見たときに一緒にいたツェーン。
彼女も実は魔術特化型らしいのだが彼女からはスキル開放の手ほどきは頂けなかった。
というか目も合わせてくれないしこちらが話しかけても逃げられるだけである。
アイナとクリスには人見知りだからとフォローをいただき。ニーナからは女の敵だからでしょ?ときつい一言をいただいた。いいじゃん、こんな体でも男相手にしたくないんだもん
「さてそれじゃあ仕事の話をしましょうか?」
アイナが聖女モードになっていう。
「ギルドに出したい依頼はある少女を故郷の村へと送ってほしい、というものです」
「ある少女?・・・」
「そう、エルフの少女をですね」
「やっぱりそうなりますよねぇ」
「貴女もそう思って騎士団へと預けたのでしょう?」
「まああの脳筋のことですから聖女様にあずけるとは思ってましたけどね」
微笑みながら言うアイナに少し諦めのニュアンスを込めて返す
まあ望んだ方向に話が進んでいるのでよしとしておきますか。
「但し事が事ですので指名依頼とさせていただきたいのです。S級冒険者リーリングアイシェにお願いできますか?」
「事?いえ、彼女たち指名は問題ないのですが少女一人送るだけに大仰すぎません?」
S級冒険者はいわば王国のトップ集団。現在は三チームしか存在していない。
一つは今聖女の指名したリーリングアイシェ。これは女性三人からなる唯一のチーム。
そしてルーウェンハーツ。といわれるファイターメインの集団。
シュワルツカッツェといわれる魔術闘術のバランス集団の二チームがいるが
この二つは男女混成チームであるためどうしても少女護衛には適さない。
でも問題は高位冒険者への依頼料である。
たかだか性奴隷にされかけのエルフの女の子一人の開放だよね?何でそんなに大ごとなんだ?
「目的地は東のエルダ大森林です。」
「またよりにもよってそんなところ?」
アイナの言葉に大声で返してしまう。ニーナが睨んでいるが気にすることもない
エルダ大森林は本来森の民エルフ族の支配する土地。
彼らの神木であるエルダバウムと呼ばれる大樹を中心に森の中でエルフの集落の点在している大森林。
しかし数年前、狭間の境界の位置が変動し、森林の約三分の一が魔族領へと飲み込まれた。その区画にいたエルフたちはその大部分がエルダバウムやその他周辺集落に逃れたといわれているが中には奴隷商など非合法にさらっていくという事例も多いのであった。
しかしもともと排他的性質の強いエルフ。その上今は狭間の境界が近く魔物の動きも活発化しているなど危険度の高い場所となっている。
王都ギルトにおいてもエルダ大森林はAランク推奨依頼扱いとなっているのである。
「ねえ、聖女様?依頼を受けるにあたって少し彼女と話がしたいのですがいいですか?」
「貴女が?直接?」
「はい、少し本人に確認したいことが出てきました。」
「わかりました。クリス。お願いできるかしら?」
はいと言って部屋を出ていくクリス。しばらくするとエルフの少女を連れて戻ってきた。
最初に見たときは少しやつれていたが、教会に移されて数日。どうやら疲労は抜けたようで表情からも少し元気になっているのが読み取れる
「エヴァ、こちらがギルド職員のアリスさん。貴女を故郷へ送り届ける依頼受理のために来てもらったのよ」
「初めまして、ペンタゴニア第二支部職員のアリスです。」
確かにこの姿では初めてなのでしっかりとあいさつをする。
というかこの職員モードってだらけることできないんだよなぁ
鬼教官の魂にまで刻み込むような指導の賜物だね
「ご足労いただき申し訳ありません。聖女様から依頼をうかがいまして、その際疑問点が二つほど出てきましたのでご確認をさせていただきたく思いました。」
「いえ、こちらこそお願いする立場ですので。ですがすべて聖女様たちにはお話ししたと思うのですが?」
「少しの疑問点です。覚えている限りでいいのでお答えください」
営業スマイルで聞く。因みになんで営業スマイルしかギルドではしてないのに求婚とかいう輩が後を絶たないのかは永遠の謎である
少し自信なさそうにだがしっかり頷くエヴァ。
「では一つ目、貴女がかどわかされてからこの王都に着くまでに一度も魔物に襲われませんでした?」
「はい、覚えている限りは一度も。ですが最初はいきなり気絶させられてあと気づけば手足を縛られていたのでその間はわかりません」
「そうですか。怖い目にあいましたね。」
そう言うといいえと首を振るエヴァ
「確かに恐ろしい経験でしたが。女性としての尊厳は守られました。お手洗いも合図を送れば立ち止まってくれましたし」
「そうですか。それではもう一つ。実行犯の人数って貴女が連れてこられる間に増減はありました?」
「いいえ、ずっと四人でした。あっ!でももしかしたら?」
「もしかしたら?」
「私ずっと森の中では目隠しされていたんです。私たちエルフは森の中を見て位置が判別できるのでそれをふさぐためだったと思うんですが。でも森から抜けて馬車に乗せられて移動し始めたときに一人が入れ替わっていたような気がします」
「そうですか、でも気のせいという可能性もありますよね?」
「はい、確証はありません」
「いいですよ。そんな思い付きで十分です。ありがとうございました。この件は正式に受理させていただきます。しばらくは聖女様のもとでゆっくりとしていてくださいね」
そう言って労をねぎらい退室させる
「どういうこと?」
足跡が完全に遠ざかったのを確認してアイナが聞いてくる
「どうもこうもそのままよ?普通の人攫いが人間っていう荷物を抱えて一度の魔物遭遇もエルフに見つかることもなく森林を抜けられるとでも?」
「っていうことはつまり・・・・?」
「内通者、もしくは魔人の存在?という事か」
アイナが首をかしげたあとにニーナが答える
その答えに頷く
「多分ね。魔物をよけさせたか、完全に魔物、エルフに見つからないルートを選べるのか。どちらにしてもそんな実力者相手にAランクなんて相手させられないわよね」
「どちらにしてもあの子たち案件になったってことよね。」
「まあどっちにしてもアイナのいう事ならきちんと聞くわよ」
そう言ってアイナに一枚の表を差し出す
「じゃあ料金はここくらいになりますね」
「ちょっと!高くない?一応非戦闘護衛任務よ?」
「S級依頼料、危険手当、そして事務費20%でこのくらいが妥当かと」
「まけてくれないの?」
「聖女ともあろう方が値切らないでください」
「アリス?聖女様に向かって」
「ニーナは黙って。それはそれ、これはこれ。この仕事で呼ばれたんだから金額は変えられないわ。聖女様が値切れるってことになったら依頼料が暴落します。皆にとっていい結果にはならないんだからね」
断固として言うと少しいじけた様な表情だがしっかり書類にサインするアイナ
てか金額交渉ってガーハイマーガーデン全員出来る奴いないんだよね。
あれ?この組織もしかして経理ないとダメなんじゃないだろうか?
後で帳簿あるか聞いとかなきゃ




