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第六話  黒の聖女は初戦闘を思い返す

衝撃爆音とともに辺りは土煙になりしばらく視界が閉ざされる。


攻撃でも受けた?一体何が?


「ツェーン!上!」


アイナが叫ぶ。刹那、上からも轟音がとどろく


その後、つむじ風が舞い辺りの土煙を晴らしていく。

すると目の前に鎧をつけたやせぎすの男が立っていた


「はっはぁ~!こりゃぁいい。まさか白の聖女様にお目通りを願える日が来るとはねぇ」


神経質そうに笑いながら言う男。その姿は一見人間だが一目で違うのは耳が異常に長くとがっているところ。そして額から生えている二本の角であった。

所謂日本的な鬼の角イメージのものが頭頂ではなくこめかみ辺りから生えている


「角持ち?上級魔族がよくこんな辺境にいましたね?」


「よくこんな辺境にいる聖女様に言われるとは思わなかったですがね」


「私だけ名前を知られているのは不公平じゃないかしら?」


「それは失礼。私は魔人四階位バティンと申します。以後お見知りおきを」


「四階位ですか、そこそこの地位ですね」


「いいですね。その上から目線がどこまで堕ちるのか楽しみです」


「無駄じゃないでしょうか?」


アイナの言葉と同時に銀色の物体が男、バティンを殴るように動く。だがそれはあっさりとかわされ距離を取られる


「銀の聖女もご同席でしたか。怖いですね、もし当てられたら私など一撃で終わりです。当てられたらね」


多分に侮蔑を含んだ軽口をたたくバティン

どこから来たのか見てはいなかったが確かにこの銀色、力はありそうである。尤もその分あの魔族のスピードには追い付けそうにないけれど


「そしてお分かりと思いますが琥珀の聖女のお力をもってしても私はこの速度が出せます。あなた方に勝ち目はないですね」


「なんかよくわからんけど?なんでお前勝ったつもりになってんの?」


「おや?そういえばもう一匹いましたね?失礼、聖女様に比べ矮小なもので目に入ってませんでした。矮小というか極小と言うべきでしょうか?」


「は?何が言いたいの?」


「いえ。大丈夫ですよ。きっともう数年もしたら白の聖女並みにはなるはずです。もっとも成長期は終わっているのかもしれませんがね」


「何言ってるのかわからないな」


「端的に言いまして胸の大きさですね。正直言って貢物にもならない、下級ゴブリンぐらいしか欲情もしないレベルの胸のなさですが顔はまあ及第点では・・・」


バティンは最後まで言い切ることができなかった


突如何かに弾かれるように体を跳ねさせるバティン


アリスの手には銃が握られその銃口はバティンに正確に向いていた


「ふーん、射撃ってしたことないけど意外と簡単にできるんだ」


「ステインガー、なるほど紛いなりにも君も聖女という事ですか」


肩を押さえながらも立ち上がり言うバティン。

押えてはいるが血が出ているわけではない。ただの衝撃レベルにしかアリスの撃った銃はダメージを与えてはいなかった


「ですが胸と同じく脳みそも足りないようだね、ステインガーのレベルがこの程度では私は倒せない。つまり君たちには私に対する有効打がないという事ですね」


「確かに予想外だな、コレこんなに威力ないんだ。」


手の中の銃を見て言うアリス。しかしその表情には諦めはなく


「それに得るものもあったからいいんじゃね?次俺に攻撃してきたときがお前の終わりだよ?」


「戯言を。聖女というのは相変わらず虫けらのような存在ですね。よくもそこ迄自分たちが優位と思い込めるものです」


「御託はいいよ?向かってこれないならしっぽ巻いてごめんなさいって泣きながら帰ればいいじゃん」


「最初に死にたいようですね」


そう言いバティンは動く。バティンの能力は超高速移動

最高速度は秒速でおよそ30m、時速換算で100㎞を越える速度での行動である

本来は初速から最高速度を出せるのだが魔力濃度の高い場所では動きが阻害され本来の速度を出すことができない。現状は琥珀の聖女ツェーンによる魔力フィールド展開により30%ほどの速度しか出せないがそれでも非戦闘型の聖女に後れは取らないという自負がある


狙いは黒髪の見知らぬ聖女の首。

腰に下げた剣を抜刀しながらの高速移動。本来手応えなく落ちる首、のはずであった。


しかし現実はバティンの認識できぬまま終わることとなる


首を狙い切り込んでいったバティンはなぜか空中に投げ飛ばされる

飛ばされる先で待っていたのは銀色の甲冑


その甲冑はそのままバティンの頭をつかんだと思えばまばゆい光を発する。

後に残ったのは一度痙攣して物言わぬようになった魔族である


その体は風に流され風化していくように消えていき残ったのは身に着けていた甲冑などの衣類と武器だけ。そして黒い塊だけであった。


「この黒い塊、なんだろ?」


「それは魔人のコアです。貸してください」


拾い上げ首をかしげるアリスに手を差し出すアイナ

言われるままアイナの手に黒い塊を落とすと彼女はそれを両手で包み込むように握る

そして彼女は祈るように目を閉じる。しばらく見ていると白い魔力が彼女の手の周りに集まっているように見える


時間にして一分ほど。アイナが目を開き握っていた手を開きもう一度アリスに渡すように見せる。

そこにあったのは黒い色が抜け巨大な塩の結晶のように白くなった石であった。


「これが魔人浄化です。一連のプロセスを行わなければまた魔力を吸収し魔人は復活してきます」


「なるほど、そしてそれが俺たちの仕事ってことだね」


アリスの言葉に笑顔でうなずくアイナ


「わかっていただけて何よりです。しかし今のはどうやったんです?貴女に向かってきていた魔人は明らかに貴女の首に切りかかっていくように見えましたけれど?」


「別に?柔術ですよ?ただの」


「ジュージュツ?」


「うちの世界にはあるんですよ。刃物を持って襲ってくるやつの対処法がね」


実際はただの小手投げ。あの魔人は自分の速度に胡坐をかいていたみたいで切りかかる技術は下の下、素人レベルだったのが幸いしたね。

あと反応できないって何で思うんだろう?少し早いだけなのにねぇ


取り敢えず勢いのまま銀色の甲冑に投げつけただけである

個人的には手近にあった堅そうなものに投げつけただけだったんだけど

そのまま頭潰すとは思わんかったんだけどね。


「だから貴女は強いんですね?」


「強くないですよ?あの銃も効かなかったですしね」


実際に古流柔術は近所に道場があったんで中一の時から通ってたけどね

でも基本受け技だしね


「いや、かなり助かったよ」


「え?しゃべれたの?!」


銀色の甲冑が急にしゃべるのでびっくりするアリス


「最初からしゃべってただろう?」


そう言うと甲冑は光に包まれ姿を変える

変わった先は先ほどの秘書系修道女であった。


「え?変身してたの?まじで?」


「気づいてなかったんですか?」


驚き目をシパシパさせるアリスに聞くアイナ


「だって変身なんて特撮だけのもんでしょ?現実にできるなんて思わないよ」


「ああ、貴女は三期型ですものね」


「どゆこと?」


「私、そしてニーナの本体はあの姿なんです。今のこの姿はスキルで変わっているだけですね」


「え?こんなに可愛いのに擬態なの?っていうか俺もあんな風に銀ピカになれるの?」


「無理でしょう。あれは本体。そして今のあなたの姿が本体なんですよ?」


「まあ無理ならしょうがないか。でもスキルで変身とかかっこいいね」


「貴女もできますよ。でもその説明は一旦ここを離れてからにしましょうね」


「ああ、そうですね。お願いします。」


そうアリスが言った後


「あ、そうだ、もう一つだけ試していいですか?」


「何をです?」


アイナの聞き返しに返事をせずにもう一度ショットスティンガーを顕現させ山の方に向かって撃つアリス


一発撃って満足した表情で銃を消す


「ああ、威力は兎も角射程を知りたかったんですよ。どこまで飛ぶのかってね」


「一発でいいんですか?」


「うん、満足しました」


「じゃあ帰りましょうか。ツェーン」


そうアイナが言うと四人を包むようにフィールドが形成されそのまま光の塊となって飛んでいった。






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